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須坂市「松葉屋そば店」のこだわり。チャレンジしていく中で見つけた“育った味”とは?

地域おこし協力隊のーすがお届けする連載「須坂キラビト」は、須坂市に関わるキラリと光る情熱を持つ人をテーマに、活動のきっかけ、これまでの苦労や未来の活動についてもお話を伺います。

第15回目は松葉屋そば店の松村 憲道さんを取材しました!

松村 憲道さん須坂市出身小中高までを須坂市で過ごし、飲食店へ勤めるため東京へ。須坂へ戻ってからは松葉屋そば店の5代目店主として経営している。

【140年の歴史ある“食堂”】


――――地域おこし協力隊事務所がすぐ近くで隊員もみんなで利用させてもらっています!今日は改めてインタビュー宜しくお願い致します。

『協力隊の事務所ってすぐ近くだったんだね。事務所になる前の方(やまじゅうの前身)には良く出前で使ってもらったりしてました。今は協力隊事務所として使われているんですね。』

――――はい、実はこっそりと近くに居たので、何度も通っていました。いつもランチの時はウェイティングが出るほど人気のこのお店。創業について教えてもらえますか?

『松葉屋は明治20年創業で、今年で136年になります。歴史が古くて確かではないのですが・・・。昔はまんぷく屋さん付近でお店をやっていたようです。その後、当時のメインストリートである常盤町の方に移ってきたみたいです。今では考えにくいですが、この通りも人が賑やかだったみたいです。』

かつては中心街だった常盤町に移転するも。。。

――――そうだったんですね。確かに長屋も多く並んでいて繁華街だった雰囲気はありますが今は人通りはほとんどないですよね・・・。昔から蕎麦屋として立たれていたのですか?

『創業の頃の歴史がわからないけど、今でいう“食堂”という位置づけで営業をしていたと聞いています。その次にラーメンメニューをはじめて、今のようにうどん・そばをやりはじめたのは父の頃からなので、そばの歴史はそんなに古くないんです』

蕎麦も美味しいけどラーメンが絶品!地元民が愛する味の秘訣。

――――今はそばがメインでやられているので意外でした。ラーメンは知り合いに教えてもらって、よく注文しています。

『蕎麦屋でラーメン、よく注文しましたね(笑)その昔はかき氷もやっていたりと、地域に根付いた食堂としてやっていたんです。当時は毎日来る常連客も相当居たようで、私も継いだばかりのころは毎日来る人が同じだったように思います』

――――本当に美味しくてここのラーメンの大ファンなんです。今はどんなお客様が多いでしょうか?

昔に比べると若い人がすごく増えました。携帯電話(スマホ)の普及からだと思います。季節的には今までは桜、紅葉などの時期は県外ナンバーが多いのが定番だったんですけど、観光がオフシーズンの2月でも県外ナンバーが多くてちょっと不思議に思います。ちょうど今日(2023年5月24日)も米子大瀑布の開通で、お昼が大変でした。そういった情報にはうといのでしっかりと知っておかないといけないですね(笑)』

松葉屋そば店に入ったら、歴史あるラーメンを堪能せよ!!

――――スマホの影響でお店を知るにしても、やっぱり厳しいスマホユーザーの評価を通ってきてますからね。。。高校卒業後は何を?

『高校卒業後、東京に行って夢だったミュージシャンになることを追い求めていたんです。当時ユニコーンとかボウイなどのバンドが好きで憧れていました。でも、東京のライブハウスで見たアマチュア(デビューの順番待ち)のレベルが高すぎて「こんな人でもデビュー出来ないのか!?」と、厳しい現実を知り、バイトも忙しくなってた頃にいつの間にか夢を諦めて飲食のバイトに没頭していました。思い返せばその頃から調理をすることも好きでした』

その日は突然やってきた。家業を継ぐという決心をする日

――――ミュージシャンに憧れていたんですね。意外でした。私もボウイが大好きで・・・(バンドブームの話で盛り上がる。ここはカットw)そんなくすぶっている中、19歳のときに転機があったということですが?

『東京に出て1年。これからって時に、この店の大黒柱だった父が倒れてしまったんです。母もいましたが父が居ない状況での経営は難しかったので、家業を継ぐことにしました。当時は息子が継ぐってのは世の中でも当たり前でしたから、継ぐことに抵抗は無かったですね。調理も好きだったので、好きなことが出来ることが良かったのかもしれません。ただ出来たばかりの友達とも別れてしまったので、寂しくて月に2回は東京に行ってましたね。当時は今と違って、須坂はもっと何もなかったんですよ(笑)』

――――東京に行ってわずか地に足つけてというタイミングだったのは辛かったと思います。しかし、お父さんが倒れてしまって、どのように家業を継いでいったのでしょうか?

『正直、急な話だったのでそば打ちは誰にも教えてもらってなくて・・・ほとんど独学で学びました。だから最初は品質も安定しないし、そばの太さもバラバラでした。一時、お客さんも全然来ない期間があったり、苦しい時期もありました。でも、ずっと調理が好きだったので自分なりに研究することも、味を追い求めることも続けられたのだと思います

お店に入ってすぐ目に入る歴史あるポスター

――――誰にも教わらない中で、どんなことにこだわりをもってやっていたのでしょうか?

『私のこだわりは「自分が納得する味にすること」なんです。蕎麦もずっと昔からのレシピだけじゃなく、いろいろなことを試しましたが、結局“育った味”に辿り着くというか、戻るというか・・・。だから誰かに教わったから“美味しい”とかではなく、自分の納得のいく味だから“おいしい”というのを大切にしています。自分自身にチャレンジし続けた結果が今の味なんだと思います』

――――なるほど。自分が納得いく味というのがとても大切ですよね。私もここの蕎麦もさることながら、冷たい蕎麦、うどんに使われる「つゆ」が大好きです。このこだわりもあれば教えて欲しいです。

『この“つゆ”の作り方は特殊で、一般的な作り方に変えようとしたこともあったんです。でも、ここも結局自分の納得のいく味ではなかったので、元の作り方と味を今はキープしています。やっぱり自分の納得のいく味が良い。それがこだわりですかね(笑)

SNSや情報媒体を上手く使うよりももともとの「味」が大切。その基本を忘れてはいけない。

――――元の味を変えないというのは1つの戦略ですし、それが大きな勇気でもあったりしますよね。ほとんどSNSも使っていないのに、お店のファンも多い印象です。このあたりは?

『何でですかね?恐らく、Google Mapとかで、この店のファンが良い意味で勝手に写真を撮って広めてくれるからだと思います。SNSとかで広く宣伝しないのはこのお店も限られた人員でやっているので、あまり大きく宣伝しても自分の手の届かない料理になってしまう懸念があって、そうまでしてやりたくないんです。やっぱり調理が好きなので、自分の調理をしっかり届けたいって考えていることも私の“こだわり”なのかもしれません

私は箸で切れるかつ丼と呼んでいる

須坂名物みそすき丼も食べれます


――――1人1人のお客様にしっかりと自分の調理を作りたいという気持ちが伝わってきます。ここは須坂名物「みそすき丼」も食べれるお店ですよね。移住者や観光客には是非食べて欲しいいです。

『みそすき丼は私が所属する「みそ料理の会」で考えたレシピなんです。これだけの町に味噌蔵が5つあり、その味噌を使って須坂の名物を作りたいという思いから考え出したんです。かつてはいろいろなところで食べれたのですが、今はここを含めて4軒のみになってしました。

――――みそすき丼は須坂の味噌文化のためにも是非続けて欲しいです・・・。日替わり定食もお得で人気です、提供へのこだわりがあれば教えて下さい。

『ずっと690円で営業してきて、近年の燃料費の高騰で780円まで値上げさせてもらいました、本当は値上げはしたくなかったんだったんですが・・・。ギリギリまで粘りましたが、今年の2月値上げを決めました。値上げでお客さんが来なくなるかなと心配したんですけど、結果的にはあまり変わらなくて安堵しました。こんな風に通ってくれるお客様には感謝しかありません。昔は学生でも多くにぎわっていて、私としてはかしこまらない普段使いできるお店でいたいですね。

――――この定食量で780円は安いです!ヘビーユーザーが多い理由もわかる気がします。

休みも仕事をやり続ける。その理由は顧客が喜ぶこだわりだった。


――――話は変わりますが休日は何を?

『休日も仕事をしてますね(笑)木曜日が定休日なんですけど、水曜日の晩に仕込んだものを金曜日にお客様に出したくないので、休みの木曜日に仕込んでいます。お客さんには新鮮な美味しいものを届けたいし、それが私のこだわりなんです

――――すごい。調理に対してのまっすぐな気持ちが本当に伝わってきます。何を頼んでも美味しいと言われるのは、それが理由なのかもしれませんね。

定番コーナー「夢を教えて下さい」

――――最後になりますが「夢」を教えて下さい!

『夢はありません(笑)私自身に子供や跡継ぎがいないので、この代でお店は終わりかなと思っています。調理は好きでずっと続けていきたいので、そこはやめたくないと思っています。将来的に収入を気にせずカウンターテーブルだけの小さな食堂が出来ればいいなーと考えています。経営しているとどうしても調理以外にも気にしないといけないことが出てきて・・・まだまだ先の話ですが、そんなことを気にせずに調理をしてお客さんに美味しいものを提供出来ればいいなーと思っています』

――――そこまでの調理への強いこだわり、本当に素敵です。これだけの強い思いがあるお店だからこそ、ご主人の夢を叶えて続けて欲しいな・・・というのは私のわがままでしょうか・・・でも心のどこかで期待しています!
今日は長時間にわたるインタビューをありがとうございました!!また友達連れて食べに行きますね!

仕事中、キッチンに立ち続けるのでほとんど表には出ないが
お客様に運ばれる料理にはこだわりが詰まっている。

【のーすレコメンド】
全部美味しいし、どれもオススメですがカツ丼は本当に美味しい!それにセットに蕎麦までついて来るとかお徳でしかない。
でもラーメンも捨てがたい・・・つまり1回じゃ満足できないってことで(笑)

【のーすレポート】
私が着任して間もなく、このお店に足を踏み入れました。
その時のかつ丼とそばつゆの衝撃が忘れられずそれ以来、時間があれば松葉屋さんにお邪魔するくらい、何度も食べさせてもらいました。
ほとんどネットには情報が無く、どうしてもその店主とこのお店の歴史を見てみたい!と思い、アタックさせてもらいました。蕎麦よりもラーメンの方が歴史が深いことも、須坂市民には以外だったのではないでしょうか?個人的には音楽の趣味が凄くマッチしたので、実は私がこの店にハマった理由はコレじゃないか?と思うほどでした(笑)
ここに来れば知り合いに遭遇する率が高い!というくらい須坂市民に愛されているお店です。私自身もいろいろな方のオススメでラーメンを食べてみて、冬はほぼほぼラーメンを注文してました(笑)でもそれくらい美味しいんです!チャーシューも美味・・・
須坂に来た人には必ず行ってほしい名店だと思います。
もしお友達が須坂に遊びに来たら、ここで「須坂っぽさ」を出してみてください。

【この記事を書いた人】

のーす

1986年7月3日 石川県金沢市生まれ
2022年8月神奈川県川崎市より須坂市に移住し妻と二人暮らし
現在、須坂市地域おこし協力隊として活動中
趣味:レザークラフト、野球、DIYなど
好きな歌手:吉川晃司、氷室京介
主な活動:空き家バンク、信州芋煮会
夢は須坂市の特産品で6次産業の企画・開発・営業で起業すること


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