書籍感想:安いニッポン
普段あまり読まない系統の本だけど、本書は飽きずになかなか面白く読めた。
部分まとめ&感想 その1
世界の様々な国にあるディズニーランド、マクドナルド、アマゾンプライムなどの値段を比較すると、日本の価格は突出して安い。
ダイソーも同様世界展開しており、最早100円均一なのは日本だけで海外諸国では日本より高い(商品によって3段階ほどのマルチプライス設定がある(200円、400円、600円、みたいな)
【日本からの輸送費で高くついているんじゃないか反論】については、中国生産の商品も多数あるが、中国でも商品単価は基本160円で、やはり日本より高い。
高くつく理由は人件費である。
海外展開しているほとんどの国で人件費、賃料、物価、所得が向上している。(なので現地の購買力もあがっている為、日本より商品単価が高くとも成り立っている)
40年以上、ダイソーの100円均一で継続してるのは、世界的にみて日本くらい。また、日本の平均年収はドルベースで主要先進国の中で低く、30年間ほぼ横ばい
・アメリカ 6万5836ドル
・韓国 4万2285ドル
・イタリア 3万9189ドル
・日本 3万8617ドル
これはかなり異常事態。
海外と比べると相対的に日本の購買力が低下している。
背景はデフレ(物価低迷)にあり、【製品の値上げができない→企業が儲からない→賃金が上がらない→消費が増えず物価が上がらない】といったループに陥っている。
商品を値上げすると「鳥貴族」のような客離れが起こる懸念がある。
このため、食品メーカーは内容量を減らすなど、価格据え置きだが実態としては値上げを強いられている。
コロナ前のインバウンド特需は、「日本が旅行先として魅力的だから」が主な理由ではなく、実は「日本は安くてコスパがいいから」。
海外から見た「日本の安さ」は豊富な資金を持つ海外勢から格好のターゲットである。
分かりやすい例として、ニセコ、白馬などの不動産が外資に買われている。
これらの土地では、一部、日本の観光地とは比べ物にならない程食事代が高い(ラーメン1杯3000円とか)ケースがあるが、それでも海外平均で見ると安い。
なので、やはりインバウンドは「日本は安くてコスパがいいから」来るのである。
また、あまり知られていないが、大阪などの下請け町が日本メーカーから見はなされ、代わりに中国メーカーに買われている・下請けとなっているケースが増えている。
なかなかに衝撃的、結構ショックだ。
日本人の何割がこの事実を知っているのだろうか。
こーゆー事実を学校で習った記憶は一切ないのだけど、これ現代社会の教育課程に入れてくれよと思う。
部分まとめ&感想 その2
「賃金が安くても物価が安ければ生活できる、それが何が悪いのか。ランチ安い方がいいじゃん」という意見に対して。
・日本=継続して人件費、賃料、物価、所得が横ばい
・海外=人件費、賃料、物価、所得が向上
これにより、相対的に日本の購買力は低下し、どんどん【安い日本】と【高い海外】となる。
これは以下のような問題として返ってくる。。
・海外旅行しにくくなるなどの個人的問題
⇒【安い日本】と【高い海外】になれば当然。
・海外留学するような人材が育たない、国際的に活躍できる人材が経る
⇒【安い日本】と【高い海外】になって海外留学もしづらくなるから。
・人材流出
⇒給与・条件で勝てない為、IT・AI人材などがGAFA等に引き抜かれる、また、海外の優秀な人材も獲得できない。(理由:海外では殆どの企業が成果に応じて処遇する「ジョブ型雇用」であり、日本はメンバーシップ型。日本は人件費や制度が硬直的なため企業が柔軟に対応できない)また、海外人材獲得のネックとして、転勤当たり前の日本は世界的には特殊という点もある。
総合すると、日本の成長力を根本的に削ぐ。
そろそろ「安いは良い」の考えから脱却した方がいいのではないか(成果物をたたき売りされてるのと一緒である)。
人件費、賃料、物価、所得などをバランスとって向上させるために、「物価2%あげるなら賃金は3%上げる」といった政策が必要。
また、筆者結論としては、現状を変えるには消費者・企業・被雇用者、それぞれもう一歩踏み込むこと。
なお、日本の45〜49歳平均年収はこの10年間で50万円程下がっているらしい。。
年功序列が多い日本企業でもこうなっているのは、中高年を抑制して、難しい若手獲得のための給与に充てている。業種業界によっては、実は若手ファーストの傾向になりつつある。
・とりあえず「転勤嫌」は完全同意。私も1社目、地方転勤で病んでたw
・「賃金が安くても物価が安ければ生活できる、それが何が悪いのか。ランチ安い方がいいじゃん」⇒とりあえず、日本はいわゆる「お客様は神様」が行き過ぎたので是正すべき。
低価格高品質をキープできるのは素晴らしいことだけど、裏で頑張っている人にもう少し還元してあげてほしいなと思う。
なんとなくラーメンが消費者心理的に1000円以下ってのがあるが、出汁や具材の種類や作業工程の増加、そもそもの材料費高などがあるのでしょうがない。
上手ければワタクシ2000円くらいでも好きなので食べますよ。
と思うのだが、こう言える私はある程度幸せなのかもしれないな。
・今の若手は売り手市場だし転職サービスも超発展してるし、一個人としては昔よりチャンスがあるとも言っていいのかもしれない。
ただし「昔のように皆が一律いい」ではなく、情報を取って実力と運がある者は、一個人としての利益享受できる。(格差が拡大していくとも言える)
なので情報とること、どの業界、会社、職種を選択するかなどは改めて大事なのだなと。
・「IT人材、AI人材がGAFA等海外にもってかれる」→IT会社に勤めててなんだけど、それってどこまで悪いことなのか?だってスマホPCデータ関連やデリバリーもUBEREATSなど、既にほぼ海外メインではないか。とも思う。
なかなか話が壮大なので、自分の課題として直視するのが難しいな。。
結局、最大の問題は以下の懸念なのだろう。
「このまま日本が賃金、物価継続し海外諸国は賃金、物価上昇した将来の懸念として、今の団塊世代退職、日本人若手は外資に、外国人労働者ももっと高給な海外諸国に流れた時、超人材不足に陥っていまの生活もキープできなくなる」
あれあれ、全然サステナブル(持続可能)じゃないなw
・「現状を変えるには消費者・企業・被雇用者、それぞれもう一歩踏み込むこと」⇒ほんそれ。
なんだけど、日本人の気質的にも変化を嫌うし、「今までと違う事する、踏み込む」は不得意分野なんだよね。。。
なかなか壮大なのでどうしたらいいのか。
最近なんでも思うのだが、人間にやらせるのは限界があるので、是非AIに最適解を出してもらい、それを実行させたらいいと思う。
特に政治。
権力を持つと権力を維持しようとするし、ホントに人のために、将来を考えて行動するのは人間にとっても難しいんだと思う。
なのでAIの方が間違いがない、と。
以上。