認知症が始まった祖母がひたすら俺や家族に食べ物を与えまくる話。
認知症が始まった祖母がひたすら俺や家族に食べ物を与えまくる話。
俺は11年実家を出てアパートで暮らしており、去年の秋に久々に実家に帰って再び暮らすようになった。
俺の祖母は小さい頃から母親のようにたくさん面倒を見て育ててくれた。
そんな祖母も後期高齢者。
数年前から認知症が始まってきて、直前の会話をすぐ忘れる。
何度も雨戸を閉めたかどうか確認したり、テーブルの物をいじっては動かしてどこかにワープさせる。
そんな中気になったのは、こまめにアレ食べなコレ食べなと、とにかく食べ物を勧めてくること。
でもその内容が和菓子だったり生の果物だったりと、俺の好みじゃないものばかり。
相手の好みや満腹感を一切考慮せず勧めてくるのはどんな心理か。
たぶん「自分が好きな食べ物は他人も食べて嬉しいだろう」という凝り固まった主観でずっと生きてきたのだろうと。
そういう人間は少なくないのだろう。
田舎の閉じられた社会や秩序しか知らない昔ながらの人間。
世の中には和菓子だけじゃなく洋菓子も、おつまみも、即席、冷食だってある。
果物以外からだってビタミン、各種栄養は摂取できる。
でもミカンや柿で育ってきた祖母の頭にはもうそれらしかこの世に存在しない。
祖母のために買った物でさえも、数日後には食べなと勧めてきて自分では食べない。
享受することより与えることがそもそも生きがいなんだろう。
今までそうしてきたろうから。
なら金をくれよと(笑)
それ好きじゃないと伝えても、もう認知症だから2分後に同じ好きじゃない物を勧めてくるので、もうゲームの村人、NPCのように決まったことしか言ってこない相手とのやり取りだと思って受け流してます。
あとはずっと世話の毎日だったろうから、家事、洗濯はとにかくこまめに気にかけてくる。もうやった、もうやったの無限ループ。
世話が好き、与えるのが好き、でもお金は寄越さない(笑)
自分の思い通りに家族全員が動いて、喜んでほしい、それ以外の価値観や幸せ観は理解できないし、今更アップデートも無理だろうな。
11年実家を出て都会的な暮らしをしてきた俺にも同じ対応だから、やっぱり自分のやり方を肯定してそれに喜んでほしいんだろうな。
まぁ俺も大人なので、和菓子でも食えそうなものは有難く頂くしありがとうも言うようにしてる。ごくまれのお金をもらえたらこの上ない感謝を表現する。
認知症の唯一いいなと思うのは、喧嘩や嫌なことがあってもすぐ忘れるから毎日ケロっとしているし能天気で幸せそうなところかな。
済んでいる会話を、初めて言うかのように何度も提案、勧めてくるのは家族みんな疲弊していると思うけど、都会で広い視野と知識を蓄えてきた俺がなんとか家族の空気やムードを楽観的に、ほどよく適当に、お気楽に塗り替え続けていきたい。
俺自身がいつもそうやって生きていたいから。
はは、ウケる、の精神で高齢化社会を眺めて、俺も来る中年までこの世を走り続けていく。