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未来への問いかけ。コーチングはしあわせを見つける作戦会議

「大人はわかってくれない」
 
子どもの頃、何度思ったことだろう。

やりなさいって言われて、途端になくなるやる気。
こっちのペースなんてお構いなしに問われる質問。
答えられないでいると、怒られる。
降り注ぐダメ出しの数々。
 
勝手になんでも決めつけないでよ。
 
いつもそんな風に思っていた、気がする。
 
あの時の歯がゆい気持ちは思い出せるのに、気がつけば自分も「わかってくれない大人」の立場になっている。

つい押しつけてしまうエゴ。子どものためを思っているのに、伝わらない気持ち。

立場が変わると、こうも考え方が変わるのか。

そんな自分に何度、戸惑ったことだろう。
 

純子さんもその1人だった。

今から7年前、当時小学5年と2年だった息子たちが始めた少年野球。頑張る息子たちを応援しつつも、もっとこうしたらうまくなるのに、もっと頑張ればいいのに、という気持ちが湧いてくるようになったという。良かれと思ってアドバイスをしてみても、伝わったようには見えない。

「自分のことを棚に上げて、ダメ出しばかりしていた気がします。もっといい関わり方があるんじゃないかと、モヤモヤする日々でした」

 
そんなときに出会った一冊の本。
 
「立ち読みで、1冊まるまる読み終えちゃったんです」と笑いながら教えてくれた本の題名は、
「いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング」。230ページを超えるこの本は、文字通り純子さんのやる気に火をつけた。
 
「コーチングを学んで、自分が楽になった」と話す純子さんが感じたその魅力、日常での生かし方、そしてこれからやりたいことを、もっと聞いてみたくなった。

横山純子: GCS(銀座コーチングスクール)認定プロフェッショナルコーチ、GCS認定講師、ICF認定コーチ(ACC)「納得感を持っていきたい人を応援する」をテーマに、coaching.lab.tranquillaとして活動中。石川県在住。趣味は低山ハイキング。HP: https://jp.bloguru.com/yokojun

コーチングラボ・トランキラのロゴ
ペットのカメのモチーフがかわいい


コーチングとの出会い

 
本屋さんでの立ち読みが、コーチングとの出会いだったんですね。
 
「すごく面白くて、一気読みしてしまって。自分がぐるぐると考えていた問いへの答えが、この本にあるような気がしました」

 
どんなことに悩んでいたのですか。
 
「やる気の引き出し方です。息子たちが少年野球を始めて2年くらい経った頃、自分の息子を含めたチームの子どもたちにやる気がないように見えて。声をかけたり、話を聞いたりしてみると、どうやらやる気がないわけではないなと。自分にはできないと思っていて、消極的な態度を取っていたり、どう動いたらいいのかわからなくて、ダラダラと動いていたり、ちゃんと理由があることがわかりました」



子どもたちの言葉に耳を傾けることの大切さは、少しずつ始めていたカウンセリングの勉強を通して痛感していたという純子さん。だけどそれを知った上でどうしたらいいのか。どうやったら、心の中のやる気のタネを発散させられるのか。やる気の引き出し方という、次のステップを模索していたときに、出会ったのがこの本だったという。

「どんな人が書いているかと思ったら、飯山晄朗さんという金沢市に住むコーチの方だったんです。住んでいる距離の近さに興味がぐんと増しました」

カウンセリングの勉強を通じて知り合った友人が、コーチングを学んでいると言っていたことを思い出し、純子さんは早速友人を通じて体験講座に申し込んだ。自分でもその行動の速さに驚いたという。

「体験講座も面白くて、いろんな人に話を聞いてもらいたいって思いました。それで当時担当していた中学校のPTA役員の行事の一環として、飯山さんを呼ぶ段取りを進めていたんです。だけど講演会まで待ちきれなくて、先に銀座コーチングスクールに入っちゃったんです」

これだと思ったら飛び込めるその潔さと行動力。そして純子さんをそこまで引きつけたコーチングの魅力。もっと続きが聞きたくなる。
 

自分を観察する面白さ

 
コーチングを知って、変わったことはありますか。
 
「自分が楽になったと思います。物事の捉え方が限定的ではなくなったというか。今でも思い込んだり、勘違いしたり、早とちりしたりはします(笑)だけど『こうでなければならない』と思うことが減ったし、思ったとしても、その手放しが早くなったように感じます」
 
「〜ねばならない」という限定的な思考は、時に自分も相手も苦しめる。自分で作った枠組みに、自分も周囲の人も当てはめようとするからだ。その考え方をゼロにすることは難しいのだろうか。
 
「それぞれの価値観があるから、ゼロにはできないと思います。だけどそういう枠の中で、もがいている自分がいるんだなって客観的に見れるようになると、距離を置いているから楽に感じるんですよね」
 
最近よく耳にする「俯瞰力がつく」ということだろうか。
 
「俯瞰っていうと、ちょっと高尚な印象を受けてしまうので、私は『観察』の方がしっくりきます。自分を面白がる。また同じことで悩んでいるなぁって、自分を少し遠くからみている感じ。落ち込む、悩むといった思考の沼にハマり込んでも、抜け出せる術を知っているし、そもそもハマる回数も減っていきました。それはコーチングで学んだ思考の方法や問いかけ方が、身についたからかなと思っています」
 
思考回路が変わるということだろうか。もう少し具体的に聞いてみたいと、聞く側の姿勢も自然と前のめりになる。
 
「何かにすごく落ち込んだとします。その時に自分は何が欲しかったのだろうと、問いかけていく。そうすると例えば『かまって欲しかった』という、自分が欲していた感情が見えてくる。モヤモヤと悩み続ける状態は、何に対して負の気持ちが生まれているのかが分からない。だから、ぐるぐると考え続けてしまうと思うんです。そういう無意識下にある気持ちを、コーチングの手法で問いかけて引き出していく。すると、何に対してマイナスの感情を持っているのかがわかる。つまり認識できるんです。『自分はかまって欲しかった』という気持ちを認めることで、たとえその欲しかったものが手に入らなくても、満足できるんです」
 
悩みの根本を解消しなくてもよい、ということでしょうか。
 
「そうですね、私の場合は、かもしれませんが。欲しかったもの、この場合は『かまってもらう』ことが手に入らなかったとしても、自分の考え方の癖や、陥りがちな悩みがわかると、じゃあ次はどうしたらいいのかって行動で変えていけると思います。そうやって考えて、行動することを繰り返していくと、つまずく前に回避できるし、つまずいても起き上がるのが早くなる。自分なら大丈夫だっていう、安心感や信頼感につながると思うんです」
 
悩みそのものを解消しなくても大丈夫。その言葉にホッとする。大切なのは見つけた悩みの扱い方と、その後の行動。悩むのは悪いことじゃない。どんな経験もプラスに変えていける。そう感じて、ふっと肩の力が抜ける。

自分の未来のための作戦会議

 
クライアントさんにコーチングをする上で、気をつけていることはありますか。
 
「納得感を大事にしています。納得するって、その人が自分で答えを出した時に得られる感情だと思うんです。だからコーチはアドバイスをしません。問いを重ねることで、その人の想いを引き出す。それがコーチの役目だと思っています」
 
例えば自分とのギャップに悩む人は、自分に言い訳をしてしまうのだそうだ。本当はこうしたいのに、子どもがいるから、あの人がこう言ったから、社会的にはこうだからと、自分の気持ちにフタをしてしまうことが多い。
 
「無意識にねじ曲げていた自分の想いに近づくために、本質に関わる質問を重ねていく。するとクライアントさん本人が気づくんです。これをやりたいんだ、こう思っていたのかって。その過程に携われるのは、すごく嬉しいし、責任も感じています。」
 
自分で考えて、決めて、行動する。当たり前のことかもしれないけど、できていない自分を思い浮かべてドキッとする。誰かに決めてほしいと思うときは、思考停止、もしくは責任逃れをしたいときかもしれない。だけど、自分で出した答えを選ぶことは権利だ。主体的に自分に許可を出していくことは、自分を大事にしてもいいという自己信頼感にもつながっていく気がする。
 
「無意識の思い込みに気づくには練習が必要です。私はよくお風呂の中で考えています。自分で選ぶ練習、自分に許可を出す練習は、学校では習ってこなかったこと。だからその思考が癖になるまで、少し時間はかかるかもしれません。だけどコーチングは、自分がどうなりたいのかを考えて、実現するためのツールです。いわば『自分の未来のための作戦会議』。自分の想いを本来のあるべき姿に据えたい人や、子どもに関わる大人など、いろんな人に使ってもらえたらと思います」

 

最適ルートを一緒に探索したい

 
コーチングと一言でいっても、幅広くさまざまな活かし方があると思います。純子さんは今後、コーチングで何をしていきたいですか。
 
「学べば手に入るコミュニケーションスキルだから、コーチングに触れる人を増やしたいと思っています。チームの中でリーダーになった時に、どうしたら成果を上げられるのか?と悩みを抱えたクライアントさんも増えてきたので、企業、特に女性の多い職場でのコーチング講座やセッションをやっていきたいです」
 
純子さんの周りには、女性の管理職も増えてきて、仕事や人との関係性の質の向上などに関する相談も寄せられるという。
 
「コーチングの考え方が、一つの選択肢になったらいいなって思います。ちょっと立ち止まったときに、最適ルートを一緒に探索するツールのような。悩みの渦中にいるときって、視野が狭まっちゃう。だからコーチングが、納得できるルートを見つけるきっかけになったら嬉しいです」
 
コミュニケーション能力は才能じゃない。学んで身につけていくスキルだと純子さんは繰り返す。人と関わらずに生きていくことはできない。それなら円滑に、できるだけストレスなく暮らしていきたい。
 
「コーチングは楽しい人生のための道具だけど、万能ではないし、そこに心酔はしたくありません。でもあったらいいよって、使えたら気持ちが楽だよって伝えられます」

純子さんがコーチングに信頼をおいているのは、当たり前を大事にしているからだそう。人の話の聞き方という、対話の基本を学ぶ。きちんと聞くことで、相手に安心感を持ってもらえるし「伝える、伝わる」を実感してきたのだという。
 
「気がつけばコーチングは、自分の人生の大事なところに居座っていました。オタク気質なのか、考えると止まらなくなっちゃうので、性に合っていたのかもしれません(笑)おかげで、自分の頭の構造が分かってきて、自分にOKを出せるようになってきました。わがままに振る舞うわけではなく、自分が心地よい選択をする。それぞれのしあわせのカタチを見つけていく。自分もそうでありたいし、そのお手伝いをしていきたいと思っています」 


話を聞くことの大切さを噛み締めた時間だった。

同じ言語を話していれば、会話はできる。

だけど本当に話せているのだろうか。
伝わっているのだろうか。
相手の話を聞くという、前提を忘れてはいないだろうか。
そして何よりも、1番身近な他人ともいえる自分を理解しているのだろうか。
 
言い訳している自分、迷っている自分、落ち込んでいる自分。
それぞれが自分を作る一要素であるけれど、全部ではない。そう考えると少しは楽になる。

私にもなりたい自分がいる。
その未来に近づくために、そろそろ作戦会議を開こうと思う。

低山ハイキングが趣味の純子さん。
野山の写真もステキに撮っています



文責:CHIHIRO
写真:純子

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CHIHIRO|フィンランド好きの物書き
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