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繊細さは私の強み。本質を見抜く力で「飛躍できる」土台作りのお手伝い。

朝5時。静かな朝のひとり時間に庭に出てみると、日中の暑さの予兆を感じさせる風が頬を撫でる。それでも時折ひんやりとした空気を感じる瞬間があって、秋の入り口に足を踏み入れたのだと実感する。季節は巡る。その当たり前を思いながら、目をつぶって深呼吸をする。

なんてことない時間だけど、自分の心に余白がないと楽しめないし、しようとも思えない。少しは自分にやさしくなれているのかも。こんなわたしも悪くないなって、思う。

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「コーチングを通して、自分と向き合っていくうちに、『まぁ、いいかー』と思えることが増えてきました。投げやりな気持ちではなくて、AでもBでも大丈夫だよと認めている感覚です。ご飯がおいしくて、風が気持ちよくて、今日も笑顔で過ごせる。それでいいんだと思えるようになりました」

そう朗らかに話すのは、ありまゆうさん。HSP、いわゆる繊細さんの気質を持っている。物事を深めにみてしまう自分の特性を、ずっと受け入れられなかったそうだ。

「みんなはうまくやっているのに、どうして私はみんなのように割り切れないのか。違和感を持ち続けるのか。それが分からなくて苦しかったんです。でもコーチングを通して自分に向き合うことで、今はすごく楽になりました」

徐々に起こるグラデーションのような自分の変化を楽しんでいるゆうさん。長年感じていた違和感をどのように昇華させていったのだろうか。コーチングを受けたことでの変化や、自分がセッションをしていく上で大事にしたいことなど、ゆうさんの本質に触れる時間を過ごさせてもらった。

ありまゆう:​​大手シンクタンク勤務14年。銀座コーチングスクールでコーチングのプロ資格を取得後、コーチとのパラレルキャリアで活動中。海と自然が好きで、特にハワイとオーストラリアがお気に入り。趣味はわんこと行ける温泉巡りと日本酒に合うおつまみ作り。夫とチワワのふたりと1匹暮らし。HP :https://ameblo.jp/arimayu-07

私は繊細?長年感じていた違和感への気づき


ブログのハッシュタグに「HSP」をつけていますが、もともと自覚があったのでしょうか。

「会社に仲の良い同僚がいるのですが、『タイプが違うのに、どうしてそんなに仲がいいの?』と聞かれたことがあって。その同僚の子が私のことを『すごく繊細で色んなことに気づける、自分にはない視点を持っている人』だと言ってくれました。そのときに、自分は繊細なのかと初めて気がついたんです」

転職をして、業界では有名な大手シンクタンクで働くゆうさんは、現在入社14年目。当初は優秀な人たちが集まる場所でどんな人に出会えるか、どんなステキな考えに触れられるのかとワクワクしていたそうだ。だけど上から目線のエリート意識と、感情や感覚を抑え込む風潮に違和感を覚えるようになったという。

「職業柄、仕方ない部分もあります。なんというか、戦闘民族みたいな人が多いんですよね。勝つことが大事。負けてはいけない。だから自分たちの非を認めることは避けて、ミスも別の言い訳で言い換える風潮があります。責任を負うことに対して必要以上に慎重な気がして。だけど私はミスをしたら、まずは『すみませんと言ってもいいのでは?』って思ってしまう。周りの親しい同僚に話すと、思考優先で感情は後回しの企業文化に疑問を持っている人もいます。でも同僚は口々に、うちの会社は仕方ないよねと言う。みんなは仕方ないと割り切れることに、どうして自分は違和感を覚え続けてうまく処理できないのかなって、ずっと苦しさを抱えていました」

やり場のない気持ちを持ち続けていた時に耳にした「繊細」の2文字。本屋さんに行ってみると、ちょうど平置きされていた「繊細さん」の本が目に留まった。

「書いてあること全てが当てはまるわけではありませんでしたが、物事を深めにみる感覚は、当たり前ではないのだと気づきました」

これまでのやり方に限界。人に頼る勇気


物事に対する感覚が自分の特性だと気づいたゆうさん。モヤモヤした現状が続くのは嫌だ、何かを変えていきたいと思い、本やインターネットで情報を検索してみても答えは見つからない。どうすればいいの?と途方に暮れたときにふと、答えは外側にはないのかもと気づき、自分の内面に向き合っていくことにしたそう。

「人に相談することが苦手でした。自分の感覚をいいものだと思えていなかったし、ずっと本音を押さえつけていました。でももう、これまでのやり方を押し通すことに限界を感じていて。自分1人では消化できない。誰かに頼ろうと決意してコーチングを受けることにしたんです。今から2年くらい前ですかね」

コーチングを受けたことで、気持ちに変化はあったのでしょうか。

「正直初めは聞かれたことに答えはしたけど、納得した回答をしていない感覚がありました。自分の心とピタッと繋がった答えをしていないなって」

でもそこでは終わらなかったんですね。

「答えられていない気持ちは『問い』として残りました。私は本当はどうしたいのか、違和感があるのはなぜか。コーチングを受けながら時間をかけて自分と向き合いました。自分だけで考えていると、一定の思考ループから抜け出すのは難しい。だからコーチングを受けて、コーチにサポートしてもらって、本当に良かったと思います。1人だったらもっと時間がかかっていたと思うし、自分の弱い部分をさらけ出して人に頼るのは弱さではなく、むしろ自分を受け止める強さなんだなと感じました」

コーチングを受けてから1年後、銀座コーチングスクールのプロコーチの資格を取ったゆうさん。スピード感のある行動を後押ししたのは何だったのだろう。

コーチングの資格を取ろうと思ったわけ

「『あなた、コミュニケーションに熱があるから向いていると思う。コーチの勉強をしてみたら?』ってコーチに言われたんです。それで『はい、やります』って(笑)熱量高くできることを見つけたと感じたから、動きが早かったのかもしれません」

「コミュニケーションに熱」とは、どういうことでしょう。

「これかな?となんとなく答えは出ていることでも、『適当に答えない』『安易な共感でお茶を濁さない』のが私のスタンスです。この人が言いたいことは何かと考えて、私の中の答えを探し出して、相手に伝える。打ち返された言葉をまた自分の中に取り込んで、もう一度探し出してきて再度相手に伝える。昔から変わらないこのやり方を、コーチとのセッションの場では遠慮せずにやりました。普通の会話だと面倒くさいと思います。考え込んだり、漠然とした答えになったりもする。でも自分にとっては心地よいコミュニケーションの方法です。キレイな表面上のわかりやすい言葉で取り繕うのは違和感がある。自分にも相手にも誠実でいたい。だからどうやったら伝わるか、納得できる答えを出せるかを意識して話しました。それが『熱がある』と言ってくださった理由かもしれません」

「コミュニケーションの熱」とは、目の前の他人に注がれるものだと思っていたけれど、1番身近な他者は自分だ。自分自身との対話に情熱を注げるのは、ゆうさんの大きな魅力だと感じた。

自分が大事にしているものを大事にできないのであれば、しがみつく必要はない


心の持ち方が変わって、会社での時間に変化はありましたか?

「会社は正直、楽しい!!というわけではないです(笑)でもしんどさはかなり減りました。以前は、『私は違う考えだな』と思っても、その場に自分を当てはめようとしていました。世間的に良い会社で働いているのに、そこにマッチしない私はダメな人間だと感じていたのが苦しさの原因。でも今は、『ここはこういう場所。私が大事にしたい思いはこれだ』と切り離すことができています。他者と自分は違うもの、違っていてもいいという意識があります。今から考えると不思議なんですけど、会社を辞めていいという選択肢すら自分に与えていなかったんです。世間の声が正しいと思っていたし、ここを手放してしてはいけないと思っていました」

この人と別れたらもう次はないみたいな感じですか?

「そうですね(笑)自分の感覚に正直でいられる今は、大事なものを大事にできない場所なら離れてもいい。ここじゃなくても自分は自分でいられるし、可能性を広げることもできる。そう思えたらしんどさは減りました」

自分への信頼を深めていく過程を丁寧に語ってくれたゆうさん。そんなゆうさんが、もっとも大事にしたい感情を教えてくれた。

安心感を大事にしたいわけ


「実は、この事実や感情を認めるには時間がかかりました。安心して自分のままでいられる時間が、幼少期にあまりなかったなって」

ゆうさんは、幼稚園児の頃の記憶を話してくれた。赤、青、黄色などのカラフルな色のりを、自由に画用紙にのせて重ねていく時間。幼いゆうさんは、自分の感性のままにたくさんの色を混ぜた。紫や黒へと色が変わっていくのが面白くて、自分にとっての最高の作品ができた。その大傑作を満面の笑みでお母さんに見せたところ、その反応はゆうさんの期待とは異なっていたそうだ。

「母のガッカリ感を察知しちゃったんです。『他の女の子たちは、赤、青、黄色ってキレイに並べていたのに、ゆうちゃんのはすごーく自由だねって先生に言われちゃったのよ』って、ため息をつかれました。そのときに、好きなことを好きなようにやっちゃいけないんだと、思ってしまったんです」

両親、祖父母の期待に応えたい、がっかりさせたくないと頑張ってきたゆうさん。いつしか、期待に応えなければ喜んでもらえないという刷り込みが出来上がっていったという。

「ずっと気づかなかったんですよね、自分の気持ちを抑え込んでいること。限界だと思って人に助けを求める。自分が汚い、いけないと思う感情を吐き出す。すごく勇気のいることだったけど、大好きな人たちは離れていかなかった。そうだよねって言ってくれる。その経験を通して、ようやく安心感を味わえるようになりました」

発芽できる土台のお手伝い


これからコーチングの活動をしていく上で、大事にしていきたいことはありますか。

「まず、安心感の土台をクライアントさんご自身の中に作ることです。私にとってコーチとのセッションは、外からの目線や考えを入れずに自分の感情に素直になる時間だったし、自分が前進していく大きなきっかけとなりました。今迷ったり、立ち止まったりしている人たちが、ありのままの思いを話せること。自分で自分を認められること。自分の足で進んでいけること。そのための安心と信頼のある場所を作りたいと思っています」

ゆうさんが安心感を「与える」というよりは、この人は受け止めてくれる存在だと認識してもらう。そしてクライアントさん自身に「思うままに話しても大丈夫」「自分の思いを大切にしていいんだ。自分は自分でいいんだ」という感情を積み重ねていってほしいという。

「自分で自分を受容できるようになると、安心を自分の中に作れます。その安心感が、その人を支える土台になる。ヒトは安心感があると動き出せるものなので、その出発の場になったらいいなと思います」

人に相談するときは、何かしらしんどいとき。安心を感じる場があるのは心強い。

「しんどい状況を私がなんとかしてあげることはできません。でもその人が、エネルギーを貯めて前進する後押しはできると思っています。誰もが生まれながらに才能のタネを持っています。その才能・資質を発揮することへの怯えや恐れがあったり、隠れていたりして、才能や資質が発芽できない状態になっていると生きづらさにつながってしまう。だからといって、『発芽しろ!』って押し付けてもダメですよね。『発芽してもいい』土台作りが、コーチングでできるサポートなのかなと思います」

昔から「そのヒト」の資質や才能を見つけるのが得意だったというゆうさん。こういうところがステキだな、きらっと光っているなと思うことを伝える。すると驚きと喜びの反応が返ってくることが多々あったそう。

「資質って、当の本人からすれば当たり前すぎてなかなか自分では気づきづらい。私自身、ヒトの才能を見つけられるのが私の才能であり資質なんだってことに、自分1人では気づけませんでした。自分のことって意外と分かっていない部分も多い。だから時には客観的な視点も取り入れながら、今の自分を知っていけばいいと思います。自分のことを知って、認めて、どこに向かうのかを見つける。それが『答えは自分の中にある』ということだと思います」

「安心の土台=自己肯定感」と言い換えることもできると思いますが、自分で何かできることはありますか。

「否定的な声かけをしている自分に気づくことだと思います。例えば自己肯定感をアップさせる方法だけをやっても、自分を否定している限りは自分への認識は変わらない。自分の好きになれない部分は、意外と周りはそうは思ってないことがほとんど。私という1つのカタチは色んな要素でできているから、イケてない面も私の一部。そうやって気づきを繰り返していくと、『まぁ、いいかー。私はわたしなんだものね』と思えてきます」

繰り返して、時間をかけていくことが大事なんですね。

「自己否定やめるぞー!って、スパッと変われたらいいけど、そうもいかないですよね。今否定しているな、心地よくない言葉や目線を自分に向けているなと気づく。それを緩める。その繰り返しです。自己肯定感爆上げじゃなくてもいいから、昨日よりも、先月よりも、去年よりもちょっと幸せ。今の自分は悪くないと思える人が増えるといいなと思います」

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話を聞いた後も、しばらく余韻に浸っていた。

ゆうさんに話を聞いてほしいって、率直に思った。言葉に対して真摯で、感覚に正直な人は嘘がない。だから信頼できるし、こちらも自然と話したくなってしまう。 

「自分の感覚を外に出すようにしたら楽になった」と笑顔で語るゆうさん。つい相手の顔色を伺って、当たり障りのないこと言ってしまうこともあるけれど、それは上辺だけの関係になってしまう。弱みを見せるのはちょっと怖い。身近な人だからこそ、大事にしたいからこそ、つい大丈夫なフリをしてしまう。だけどそんな自分を続けるのはしんどい。

全部をみんなに合わせる必要なんてない。心の中に自分だけの部屋を作る。自分の言葉に自分で耳を傾ける。誰かの言葉で心が動いたら、何に反応したのかを書き出してみる。そうすると自分の正直な思いに気づいて、動き出せる。

自分の「好き」を守りながら、進む方法だってある。そう教えてもらった時間だった。

文責:CHIHIRO
写真:ありまゆう


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CHIHIRO|フィンランド好きの物書き
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