直積
2つの対象があると、これをまとめて、「組」という1つのものとして認識することがある。対象が2つ以上になっても同様に「組」が作られる。
珈琲を飲むときに砂糖とミルクもほしくて、
(珈琲,砂糖,ミルク)
とセットにしたいときに、
「珈琲ありあり」
などと呼んで言葉にする。(実際の言い方は地方に依るかも?)
そのような概念を一般的に集合を使って記述しよう。そして演算がある場合でも演算を導入しよう。
1.2つの集合の直積
AとBを集合とする。Aの元aとBの元bの組
(a,b)
のすべてから成る集合を
A×B
と書いて、これを集合A,Bの直積(direct product)という。
次に集合に演算が付与されている代数系となった場合について。
A,Bを同じ代数系で、対応する演算は同じ記号で書くとする。直積集合A×BにA(ないしB)の演算μ(n項)を用いて
μ( (a(1),b(1)),・・・,(a(n),b(n)) )
=(μ(a(1),b(1)),・・・,μ(a(n),b(n)) )
で定めればA×Bにもn項演算μが定まり、従ってA×BもAと同じ代数系となる。こうして得られる代数系A×BをAとBの直積(direct product)という同じ用語を使う。
A,B,Cが互いに同じ代数系のとき、
(1)A×B≅B×A,
(a,b)↦(b,a)
(2)(A×B)×C≅A×(B×C),
((a,b),c)↦(a,(b,c))
となる。
従って3つ以上の直積の並び順は同型の意味においては無関係である。
そこで次節で3つ以上の直積に拡張しよう。
2.任意個の集合の直積
任意個(有限でも無限でも)の直積も定義される。
Γを任意の集合とし集合Γの元ごとに代数系A(γ)が対応していて各A(γ)は全て同じ代数系であるとする。
まず
ΠA(γ)
を組
(a(γ);γ∈Γ)
のすべてから成る集合と定め、これを集合族(A(γ);γ∈Γ)の直積という。
組(a(γ);γ∈Γ)とは、Γの元γに応じてA(γ)の元a(γ)が1つ指定されているから、その実態は「写像」である。しかしこのように「元の組」として書く方が、有限個の直積の場合の無限版への拡張とすぐに見れるから分かりやすい。写像として書くなら、b=(a(γ);γ∈Γ)とおくと、
b:Γ→∪A(γ),(和集合∪は、γ∈Γすべてを動く)
γ↦a(γ)
となる。
この直積集合ΠA(γ)の上に、演算μを
μ( a[1],・・・,a[n] )=b,
b:γ ↦ μ( a[1](γ),・・・,a[n](γ) )
で定める。
こうしてすべてのA(γ)に付随する演算μに対してわたってこれを行えば、
ΠA(γ)
も各A(γ)と同じ代数系が得られる。