深夜3時、ヴィレッジヴァンガード。[小説]
「嘘でしょ…?ここのヴィレヴァンまで閉店…?」
ヴィレヴァン。小さい頃は洞窟のような店内に怖気付いていたけど、今ではすっかりあの狭さが身に馴染んでしまっている。
入っても何か買うことってぶっちゃけあんまりないんだけど、店主のこだわりを感じられる品揃え、見渡す限りの雑貨たち、力作のPOPとかを見てるだけでめちゃくちゃワクワクする。
そんなヴィレヴァンが最近閉店に閉店を重ねている。
ちくしょう、世間はこの良さがわかんねーのかと悪態をつきながら、「閉店致しました」という無機質な文字が並ぶチラシを睨みつける。
しばらく経ってさすがに帰ろうとした時、
シャッターがおもむろに開けられた。
「ひぃ〜寒。最近の風冷たすぎるって。
あれ?こんな時間に嬢ちゃんがうちの前にいちゃダメでしょ~。もしかしてあれ?チケ持ってる子?」
「え?いや、何ですかそれ、てかおにーさん誰?」
「はは、まだおじさんじゃなくて良かった。
俺はね、ヴィレヴァン大好きおにーさんだよー。
ここが閉店しちゃうって聞いてねーもう悲しくてねー、だからここで常連さんは遊べるようにしてんの」
なんで閉店したばっかの建物に平然と素性の知れないお兄さん(?)がいるのかは置いておくとして、
シャッターの中からはたしかに青々とした光と音楽が流れてきているてかこれは。
「これ、いつもヴィレヴァンでかかってた曲だ。
流行りの曲じゃないけど、好きだったやつ…」
「はは、あったりー。この曲が流れてるところまでじっくり見てるなんて、やっぱ常連なんだねー。いーよ、チケット持ってなさそうだけど特別に入れたげる、ほら入って入って」
えーー怖い大人とかいっぱい居たらどうしよーとか考える暇もなく押し込まれた。力つよ。
「わ、すごい」
店内はほんのりと薄暗かったけど、青色の照明が所々を照らしてたからまるで海の中みたいで。
みんな思い思いに商品を見たりなんだかよく分からないけど美味しそうな飲み物を飲んだりしていた。
…てかおにーさん、手ごつくね?
初対面で手を繋ぐなんてこれが陽キャのやり口?
いや、私がオタクすぎるだけでこれが普通なのかも。
私が大人な雰囲気とおにーさんの手の感触にオドオドしているとおにーさんがこちらに顔を向けてきた。ちっか。
「嬢ちゃんって何してる子?こんな夜まで何してたのよ」
「いや〜え〜〜となんといいますか…」
とても大学をサボってヴィレヴァン近くのゲーセンで適当に時間潰してましたとは言えない。
「サボり?」
「は、はあ?いや、そ、そういうおにーさんこそ何してたんですか?こんなとこに女の子連れ込んで大丈夫なんですか?」
「連れ込んだなんて人聞きの悪い。実はいつもここのヴィレヴァン行くとき見かけててさ、可愛いなーと思ってて。このチケット配ってるのも嬢ちゃんに出会うためだったり、して」
「…みんなに言ってますよね?それ」
「…そう見える?」
気づいたら人は誰もいなかった。
あの音楽だけがずっと流れている。
指先が熱を持ってうまくちからが入らない。
「ねぇ、」
おにーさんの長い前髪をそっとかきあげる。
ぎゅっと目を瞑った。
「あれ?」
気づいたらあのシャッターの前にブランケットがかけられた状態で座り込んでいた。
寝ぼけ眼で、紙と青色のチケットを握らされていることに気づいた。
「なんだこれ…」
「俺はどっかのヴィレヴァンにいるからさ、
またどっかで会おーね」
「…ばかだなあ、閉店ばっかなんだよ」
それからというもの、ヴィレヴァンに出会った時はいつもおにーさんの姿を探してしまう。
あーあ、おかげで夜更かしになっちゃった。