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寂しい星

"僕が孤独だと感じるなら、
きっとこの星も孤独だと感じるのだろう。"

目の前には宝石の欠片のような小さな星が、壮大な暗黒の闇にまぶされたように散らばっている。
温度も何も無い、ゴツゴツした地面にほっぺたをつけて今日も君の声を聞こうとする。

「何も…分からないね。」

どうして僕はこの場所にいるのか、何も分からない。ただ一つだけ分かるとするなら、このどこまでも続く真っ暗な空間の中で存在する僕と君のことだけ。
君は大きくまあるい球体で、僕をただ乗せている。
僕は…そこに存在するだけ。
誰もいない寂しさで胸がいっぱいになる。
もしも、この世界に僕しか居ないのなら、どうして僕に"命"を宿し、"感情"を与えたのだろうか。
横にある小さな君の欠片をころんと弾く。
不意に自分の大きな目からぽろぽろと涙が溢れ出す。

こんな無の世界なら、僕も無でありたかった。 君も、そう思うだろう?
静かな世界で僕のすすり泣く声だけが聞こえた。もしも、消えることが出来たなら…。

その思いがどっと溢れ出したと同時に足元から冷たく鋭い痛みがじわじわと襲ってきた。
目をやると、足元から徐々に僕が砕けていくのが分かった。

ああ、やっと孤独から解放される。

痛みがどんどん増してきて、僕は体中の水分を全て押し出すように大きな声で泣いた。
その一瞬、地鳴りのような音と共に地面が大きく揺れ、優しく暖かい光が暗闇を照らした。
僕は生まれて初めての温もりを感じた。
宙に君の破片がばら撒かれる。

「君も寂しかったんだね」

1人だと思っていたのは僕だけだったみたい。

君は僕であり、僕は君だった。

僕が孤独だと感じるなら、きっとこの星も孤独だと感じるのだろう。
僕が最後に温もりを感じたのなら、きっとこの星も温もりを感じたのだろう。

僕は初めて君の声が聞こえた気がした。

1つ壮大な宇宙の中で、寂しい星が姿を消した








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