二都物語🔖全てはクライマックスのための助走
イギリス作家、チャールズ・ディケンズの名作。
ロンドンとパリの2つの都市を舞台にした物語。
初めてタイトルを知ったのは、おそらく受験生時代、世界史の勉強中。
フランス革命期を舞台にしたこの作品を書いたのは誰か?のような、一問一答で知った気がする。
読む前に、「とにかくラストに大どんでん返しがある」とだけ聞いて読み始めた。
年末に読み始めたので、2ヶ月半ほどで読み終わった。
ゆっくり読んでたのもあるけど、最初はあまり面白いと感じられなくて、訳が古かったのもあり指が進まず、正直読むのが辛かった。
なんとかちまちまと読み進め、上巻を読み終えたあたりで、やっと話が大きく動き始めた印象を受ける。
それまでは、時系列があっちこっちになったり、誰が何なのか、登場人物がごっちゃになったりした…。単にあまり入り込めなかっただけだと思う。
しかし、下巻からじわじわと動き出す。
この後の印象は、とにかく「フランス革命前後のパリの混乱」に尽きる。
何世代にも渡って虐げられてきた市民たちが、立場を逆転させ、憎き貴族たちを糾弾し、正当な裁判をすることなくギロチン送り。
自分たちが受けてきた仕打ちを、そっくりそのまま貴族へ向ける。
革命熱に侵された異常な集団心理で、少しでも貴族の要素があれば取り囲み、広場に集まって、何百人もの貴族たちのはねられた首を数える残酷さは、いくら虐げられてきたからといって怖すぎる。
市民たちとしては、今までの恨みつらみをあらゆる特権階級に向けて爆発させているだけだけど、罪もない人々までが死刑にされているのを見ると、正義も何もない。貴族にも、市民にも同情できない…。
とにかく、フランス革命期は、パリはこんなに混沌としてたんだなと肌で感じられた。もちろん小説であり、フィクションであるけど。
そして、この物語の面白いところは、「主人公だと思っていたメインのキャラクターは実は主人公ではなく、真の主人公がいた」点。
自分が愛する人と、その人が愛する人のために、身代わりとなってギロチンにかけられて死んでいく、真の主人公。
このキャラクターこそが大どんでん返しの立役者であり、最後のブレーン。
物語の全ての要素は、ラストのための助走だった。
途中、何か大きな計画が進行中だと匂わされるのも、裏で手を引いているキャラクターやその動機も、何のことはない何気ない描写も、全ては伏線になっていて、最後に一気につながる。この気持ちよさに感動した。
こんなクライマックスを、19世紀の作家が書いたのか…と感慨深い。
これだから、読書はやめられないと久しぶりに思わせてくれた一冊。