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【完全版】「組織開発」を学ぶ本

著者の本棚

 本記事では、組織開発という学問分野を基点として学ぶ際の情報源を整理するため、メモとして作成する。(私が読んだことがあるものに限定して、記載しています。)

※備忘で、独学の仕方(調べ方)について、読書猿先生の図解を引用します。大変参考になると思います。また、私が独自に作成した、「成長段階モデル」を示します。

出典:読書猿『独学大全』(287頁)より引用
出典:「成長段階モデル」著者独自に作成
本記事は、「認識:知る」「理解:分かる」段階の記事になっています。

組織開発とは何か

 組織開発とは、「組織をWorkするための意図的な働きかけ」を意味します。多様な組織だと、それぞれの個性が強いので、外に離れようとします。そんな時に必要なのが、組織開発で、組織を一つにまとめるための方法論です。組織開発は、①見えるか、②ガチ対話、③未来づくりの3ステップで行うとされています。組織開発は、実務の要請から、言葉の意味は非常に「多義的」です。(一義的ではありません)そのため、アンブレラワードと揶揄されるようです。
 組織の問題を考えた時に、表に目に見えている問題(コンテント)ではく、組織の目に見えない問題(プロセス)に対するアプローチが組織開発になります。また、組織の問題の深部(プロセス領域の下の方)が、「適応課題」の問題であるとされています。この問題に対するアプローチ手法が、まさに、組織開発です。


組織開発がない組織とある組織
出典:中村・中原『組織開発の探究』(2018)を基に著者作成
組織開発の3ステップ
出典:中村・中原『組織開発の探究』(2018)41頁を基に著者作成
コンテントとプロセスを表した氷山モデル
出典:中村『入門組織開発』(2015)、中村・中原『組織開発の探究』(2018)を基に著者作成
適応課題と技術的問題概念図
出典:宇田川(2019)5頁をもとに著者作成
対話型組織開発と診断型組織開発の代表的な手法を整理した表
出典:中村・中原(2018),中原(2023)を基に著者作成
対話型組織開発のモデルの図解
出典:中村・中原(2018)303頁を基に著者作成
診断型組織開発(ODマップ)のモデルの図解
出典:中村・中原(2018)301頁を基に著者作成


1.参考文献

① 中村和彦監修『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(2023)

いちばん、分かりやすく容易に組織開発について書いてあると思います。組織開発の第一人者である、南山大学の中村和彦教授が監修し、お弟子さんなどが執筆されています。

② 中村和彦『入門 組織開発』(2015)

組織開発の第一人者である南山大学の中村和彦教授の2015年の本です。ビジネスマンの入門書として最適だと思います。

③ 石川明『Deep Skill』(2022)

石川先生は、リクルートご出身で、リクルートの新規事業提案制度「New RING」の事務局長を長年務め、オールアバウト社の創業・上場に携わり、その後独立。新規事業を成功させるためには、人や組織を巧みに動かす「ディープ・スキル」の必要性を痛感し、本書を執筆。私は、勝手に、石川先生は、「社内起業の父」であると勝手に思っています。(直接ビジネススクールで第7回にわたり、ご指導いただきました👐)

④ 中原淳『サーベイ・フィードバック入門――「データと対話」で職場を変える技術』

⑤ 坪谷 邦生『図解 組織開発入門 組織づくりの基礎をイチから学びたい人のための「理論と実践」100のツボ 「理論と実践」100のツボシリーズ』

組織開発について網羅的に図解し、書かれた本です。入門書として扱えると思います。中小企業診断士である著者が作成しています。図解が豊富です。

⑥ 坪谷 邦生『図解 人材マネジメント 入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ』

④と同様の著者が作成しています。組織開発の中心は、組織の人間的関係性に対するアプローチですが、周辺領域も実務として「組織開発」というフレーズに含まれます。

⑦ 坪谷 邦生『図解 目標管理入門 マネジメントの原理原則を使いこなしたい人のための「理論と実践」100のツボ』

④⑤と同様の著者が作成しています。

⑧ 坪谷 邦生『図解 労務入門 人事の土台をゼロからおさえておきたい人のために「理論と実践」100のツボ』

④⑤⑥と同様の著者が作成しています。

⑨ 西尾太 『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』

⑩ 中原淳・中村和彦『組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす』

人材開発の専門家である東京大学、現在立教大学の教授である中原淳教授と中村和彦教授がタッグを組んで、組織開発の歴史的変遷から考察し、哲学的基盤、集団心理療法、独自手法の発展の「組織開発の3層モデル」より整理されています。組織開発を学ぶ際に、メイン教材になると思います。

⑪ 中原淳『研修開発入門---会社で「教える」、競争優位を「つくる」』

立教大学の中原淳教授が研修開発について、実務での組織の政治的な力学も考慮して、学問的な視点と実務の視点の融合を意図して、執筆された本です。研修を実践する際の実務のイロハを知ることができます。

⑫ 山内祐平・森玲奈・安斎勇樹『ワークショップデザイン論 第2版』

フォーマル学習(学校のような計画だてられたカリキュラムでの学習)とノンフォーマル学習(ワークショップでの学習)とインフォーマル学習(仕事でのOJTでの学習)と整理した場合の、ノンフォーマル学習を仕組む上でのワークショップデザイン論について記載されています。大変参考になりました。

⑬ 鈴木克明『研修設計マニュアル: 人材育成のためのインストラクショナルデザイン』

⑭ 鈴木克明・美馬のゆり『学習設計マニュアル: 「おとな」になるためのインストラクショナルデザイン』

⑮ 稲垣忠・鈴木克明『授業設計マニュアルVer.2: 教師のためのインストラクショナルデザイン』

⑯ 鈴木克明『教材設計マニュアル: 独学を支援するために』

⑰ ケネス・J・ガーゲンほか『現実はいつも対話から生まれる』

⑱ 宇田川元一『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』

日本の人事部のHRアワードの最優秀賞受賞の本になります。余談ですが、大学院の時代の仲の良い先輩が宇田川先生の福岡勤務時代のゼミ長らしいです。なぞに親近感があります。

⑲ ロナルド・ハイフェツツほか『最難関のリーダーシップ』

宇田川先生が参考にされていた本です。世の中の問題は、「技術的問題」と「適応課題」に分かれる。世の中の頭の良い人たちがすでに技術的問題は、解決して、残っているのは、適応課題であると言われています。私はこの本まだ、積読の本になっていますが、分かるように読解して、要約、図解、して、実践活かせるようにしたいですね。

※ 技術的問題の考察は、下記を参照


⑳ 中原淳『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』

㉑ ジャルヴァース・R・ブッシュほか『対話型組織開発――その理論的系譜と実践』

組織開発について、2008年以降にこれまで、従来の組織開発の手法を「診断型組織開発」として、新しい手法の組織開発を「対話型組織開発」として、ラベリングをするようになりました。中村和彦教授は、本書は、組織開発の分野においても30年ぶりの本格書であると言われています。大変難しく、私も本書の読解に頭を悩ませています。。読めるようになりたい!

㉒ ジャヴィス・ブッシュ『実践 対話型組織開発生成的変革のプロセス』

対話型組織開発の実践についての、新刊になります。翻訳本になります。手に取って読んでみたい!!!対話型組織開発について、日本において、紹介・実践されている手法は、代表的なものは、4つ程度だと理解しています。(アプリシエイティブ・インクワイアリー、フューチャーサーチ、オープン・システム・テクノロジー、ワールド・カフェなど)その他の手法として、どんなものがあるのか知りたいです。

2.研究会・勉強会

① OD Network Japanの機関紙 「組織開発研究」

② 南山大学 人間関係研究センターの機関紙 「人間関係研究」


3.論文

 組織開発の分野についての基礎文献を整理しました。


4.まとめ

 本記事では、組織開発という学問分野を基点として学ぶ際の情報源を整理するため、メモとして作成しました。(私が読んだことがあるものに限定)今後、改訂していきます。

5.新たな問題意識

組織の仕組み作り

 組織開発は、直接的には、企業で活用する場合、「職場の人間関係性を高めるための手法」なので、診断型組織開発(ODマップに応じた、サーベイフィードバック)や対話型組織開発、コンサルタントの介入の仕方としては、診断型であるとプロセスコンサルテーションや、対話型であると対話型のファシリテーションが提供される形になります。しかし、中小企業で考えた場合、人間関係性を高める以前の組織の仕組み作りがトップダウンで必要だよ。と言われるかもしれません。(それはもしかしたら、その組織の仕組み作りは、組織開発の対話の場を設定し、何度も当事者自らその必要性に気づき、自分たちで、その方策に気づき、考え、一緒に組織の仕組みを作っていく方が、組織の求心性は高まるものかもしれません。)

著者作成
「組織開発の活用フィールド」
出典:著者作成
組織開発の活用フィールドとして、現在注目を集めているのは、(ビジネスの分野では)事業承継の場面やM&A経営統合の場面だと感じています。組織の文化をどう承継、統合するのか、その方法論があるのか、注目されていると思います。また、組織開発の応用として社会課題を解決するために合意形成をどうとっていくのか。

<組織の仕組み作りの(例示)>
・目的や目標を作る
  (ミッション、ビジョン、バリュー)
・組織のステークホルダーを整理する
・組織の考え方の定義を整理する
・仕事の役割を作る
・組織の歴史を整理する
・仕事の組織図を作る
・仕事の役職を作る
・仕事の報酬を作る
・仕事の階級を作る
・仕事のルールを作る
・仕事の職務分掌を作る
・仕事の教育プログラムを作る
  (新卒研修、中途採用研修、幹部研修)
・仕事の会議のルールを作る
  (時期、回数、話し合いのルール、報告のルール)
・バックオフィスの仕組みを作る
  (給料の振込方、採用のルール、退職のルールなど)
・業務マニュアルを作る
  (業務記述書、フローチャート、リスクコントロールマトリックス:RCM、標準業務手順書:SOP)
・プロジェクトを進めるための仕組みを作る
  (名前、目的、スケジュール、進捗管理、成果物、準備物など)

(改訂記録)
2024年12月10日 初版作成
2024年12月13日 読書猿先生の図解追加、論文の基礎文献追加、適応課題と技術的課題の図解追加、最難関のリーダーシップ追加
2024年12月16日 Deep Skill追加、労務入門追加
2024年12月21日 サーベイフィードバック追加、新たな問題意識追加

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上田 誠也  |  事業承継研究
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