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#98:不吉な塾講師
小6の夏。塾の夏期講習は佳境を迎えていた。
過去の記憶を呼び起こして自らの話の引き出しを整理、タグ付けするシリーズ。事実ベース、教訓なし、これって何の話?となる恐れあり
甲陽コースの橋本先生
当時ぶっちぎりで1番嫌いな大人だった。もう嫌いというより恐怖の対象。
なぜか中学受験をすることになり、なぜか自分とは場違いなエリート集団が集まる受験校別の対策講座に紛れ込んでいた。恐らく塾の方針でとにかく少しでも引っかかる可能性があれば、上を必然的に目指すことになっていたようだ。
よく母親から、塾長にはもうひとつ上を目指せと言われたなどと聞いていた覚えもある。今もかなり無理してるのに、何を言ってるのか、と全く理解できなかった記憶がある。
話を戻すと、橋本先生はそのコースのボスみたいな人だった。なぜだか年中、白衣を羽織っていた記憶がある。果たして年齢はいくつくらいだったのだろうか。案外、20代だったかも。
完全に当時の悪い印象から想像が増幅してるが割と高めの掠れた声で、ドラマに出てくる長渕剛のような威圧感があった気がする。(もしかしたら全然違う喋り方かもしれないw)
逃げ出す経験(トゲ)
夏期講習が終わってからか、はたまたその途中かは分からないが、とうとう甲陽コースからはドロップアウトした。
一度始めたことをギブアップするとかなり責められる家だったので、辞める時も辞めてからも割とこの事は言われた。実は逃げた本人はケロッとしてたかもしれないが、後から母親に繰り返し本件を蒸し返されることで記憶が強化されてる可能性はある。
今、親の立場となり、ちょうど子供が同じくらいの歳になって考えると、親的にはあのままで踏ん張って欲しかったのだろうな、と思う。
しかし、何度思い返しても、あのドロップアウトは間違えてない、と直感的に思う。レベルも気力も伴ってなかったし、万が一、まぐれで合格してもその後の中高でも恐らくキツかった。
とはいえ、当時の小学生である自分にはかなり自分史に刻まれる大いなる逃げだった。もとから粘り強さはなく、どちらかというと明確なぐうたら人間(朝起きないとか)なので、他にも色々と逃げてはいた。ただ親のショックもありそれを内面化した自分に、完全な逃げたヤツのレッテルを貼ることになった。
この前読んだ本で、自らを知るには過去の自分に刺さったトゲを抜かないといけない、というとても印象的な示唆があった。↓
確実にこの経験は自分のトゲだった。
よく逃げる自分
まあ元から飽きやすい、堪え性のないところはあるのだと思う。
それもあり、中学生で入ったサッカー部は大半が高校でも続けるところを退部したり、大学時代もろくにやりたい事は見つからず。いや、音楽や小説が好きで、思春期の真っ只中の若気の至りのアーティスト希望はありつつも、それも全く行動はしなかった。
よく逃げる自分は、何事にも本気になれない自分は全くダメ人間なんだという諦めがあった。
折り合う
そんなシニシズムと全く制御できないだらしない自分とを持て余し、うまくコントロール出来ず、もっぱら海外旅行して誤魔化していた。
諦念の極致で、割と冷静な気持ちを抱えて就職で東京にやってきた。自分への期待も、会社への期待も低く淡々とやっていたら、そのうちに何となく楽しくなった。かなり周りには失礼なヤツで、まあ昔からそれはあまり変わらない。
でもしっかり諦めたところ、それはすなわち、ありのままの自分を開き直って受け入れたことだったようだ。逃げる自分も、それはそういうカッコ悪い気の弱いところも自分の特徴だと。
無理してカッコつけられないから仕方ないのだがなかなかそれが受け入れられなかった。ただ現実社会に放り込まれると、そんなどうでもよい見栄は通用せず、できることをできる範囲でやるしかない。
まあ当たり前のことだが、ようやく現実と折り合いがついたのだ。このことでだいぶ生きるのが楽になったと思う。
レッテルと中にあるもの
改めて振り返って、今では直感に従って、全力で逃げ切った自分を褒めたい。
自分の直感に従うこと、他人の期待に過剰に応えることに個人的な意義は見出せないことなど、大人になった自分では確定事項だ。ただしまだ揺れ動く価値観ではその選択はキツかったかもしれない。
かといって、親や周りの大人(橋本先生)を取り立てて非難したいわけでもない。人と他人の関係性は、期待や希望を与えたりもらったりで成り立っている。もらった期待を生きる活力にしてきたことも確かだ。
むしろ周りの期待と自分の意識(直感)を分けて取り扱うことが大事かもしれない。あとは、自分で貼った自分のレッテル(とげ)を抜いてその中にある声を形にする、とか。
過去の印象的な記憶は自分を知るのに役立つ。
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