医療・福祉の課題に対して建築ができることを考える
続いて、SDG's(エス・ディー・ジーズ)の目標3「すべての人に健康と福祉を」というヘルスケア領域の課題に対して、建築側からどんなアプローチができるのかを考えてみる。
ちなみに、この領域については、デジタルヘルスというテクノロジーが進化しつつあり、病院と自宅の機能が曖昧になっているという考察をしてきた。詳しくは下記を確認いただきたい。
ここでは、これを踏まえて、医療・福祉の全体像を捉えて、それが建築とどう関係していくかを考えていきたいと思う。
ただし、ここは領域が広く、課題も深刻で、普通に考察するだけで本が一冊書けてしまうので、本当に簡潔に要点だけをまとめていく。
まず現在の医療・介護の方向性は大きく下記の3つだろう。
①国民皆保険+介護保険制度による財政的な支援
②対処医療から予防医療へのシフト
③地域包括ケアシステムによる地域全体での支援
昔は①が大きな柱であり充実したシステムとして機能していた。けれども今やこれだけでは成立せず、②や③が必要になっているという状況である。
これから高齢化は加速し、借金も増える一方であり、この状況は更に悪化していくことは容易に想像できる。つまり、この②予防医療へのシフトと、③地域包括ケアシステムが今後の命綱になる様である。
であるなら、これに関連して建築・建築業界にチャンスとなるのはどの様なことだろうか?
まず予防に関して。
これまでは対処医療なので、病気になってから対処する為に病院や施設を充実させてきた。ここが、そもそも病気にならない様にしようというのである。
その為には、健康的な食習慣と運動習慣ということになる。。。
本当はもっと画期的な提案にしていきたかったのだが、ここは正攻法で。当たり前のことにも関わらず、現在は出来ていない。つまりこれからチャンスがあるのではないだろうか?
食習慣については、現在はまだ建築と直接的な関係は小さい。ただし、これから日々の暮らしの中で、どんな食事を取っているか、いつ取っているかというのがデータ化されていく。データ化されると、悪さが見える様になるので、例えば地域のスーパーと連携して理想的な買い物がレコメンドされ自動で配達されたり、調理器具やキッチンがその人にあった調理をしてくれるなんてことが可能になってくる。
そうなると、自動的に届けられた食事を受け取り、最適な調理へとつなぎ、更にゴミは集められて外に出されるという、新たな食品導線が必要になり、新しい間取りや出入り口などを考えなければならなくなるハズである。
運動習慣については、今は家ではくつろぎ、運動は外でというのが一般的な考えである。けれども、それではなかなか運動が習慣化されない。そこで、住みながら運動できて健康になるという方向性があるだろう。先進的な取り組み事例などで、家にボルダリングの壁や、うんていがあったりというのを見かけるがそういった話しが普及していくだろう。ただし、現在はあまりこれが成功している様には見えない。お金がかかり、わざわざそんなものをいれる人は少ない。
ただし、今後、世の中の動きは予防へシフトしていく。だから、介護リフォームの様に、家にそういったものを作るのに補助金が出るかも知れない。またテクノロジーの進化により、ゲーム感覚て他の人たちと競える様になったり、更にはそういったものがある家に住んでいる人には保険を安くしますなんていうサービスまででるかも知れない。いずれにせよ、こういった健康のためのリフォームを周囲が後押しする様になるハズである。
続いて、地域包括ケアシステムと建築の関係についてである。
現在の地域で死ぬまでずっと住み続けられるにしようというものであり、その為に、医療・介護・薬などあらゆるサービスが24時間連携して、地域に住む人を支え続けるシステムである。
そして、ここでの建築のあり方は、実はずっと考えられてきて、論文なども沢山でている。
例えば、住まいを開くなどの、生活者を孤立させないための仕組みである。
ただ現在は、この取り組みはあまり上手くいっていないので、私としては、ハードだけで考えずにソフトも組み合わせていくべきだと考えている。※ここは前回のnoteで書いたものと同じ内容。
更に、生活者を孤立させないということに加えて、サービスをする側にとって最適な住まいにすべきだと思っている。
ここはアイデア勝負になる部分でもあるので、いくつか例を出すに留める。
例えば、サービス提供者がきた時に、いちいち応対の為に玄関まで出なくても中に入れる様な住まいのセキュリティシステム。
例えば、空き家や住まいの一部を利用した、医療・介護・薬などの機材、医薬品の中間貯蔵場(ストックヤード。富山の薬売り的な感じ)。そして使った分だけ補充されるシステム。
例えば、サービス提供者の車が時間単位で止められる一般家庭の駐車場。
などなど・・・・
まだまだアイデア次第で様々な可能性が見えてくると思う。
まさに「やったもん勝ち」状態である!
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