うなぎをためらいなく食べられる日はやって来るか ~持続可能な漁業を学ぶ①
「近大マグロ」で有名な近畿大学水産研究所が、大学として世界で初めてニホンウナギの完全養殖に成功したとの発表がありました。
このニュースに興味を持ったので、本日と明日は完全養殖魚やサステナブルな漁業について学んだことをnoteにまとめていこうと思います。まず今回は、ニホンウナギの完全養殖の何がすごいのかを学んでいきます。
1.ウナギが高嶺の花になったわけ
ウナギは絶滅危惧種だらけ
ウナギは世界で18種類(または19種類)存在しているそうですが、その中で食用にできるものは限られています。
ですが、これらの食用ウナギは今、その大半が絶滅危惧種に指定されているのです。
ピーク比で約3分の1まで減った国内供給量
平成19年にヨーロッパウナギがワシントン条約附属書に掲載されることが決まり、平成 21 年からは貿易取引の制限対象となったこともあって、ウナギの輸入量も減っています。
養殖生産量は近年、横ばい傾向が続いているため、結果として日本国内のウナギ供給量はピーク比で約3分の1まで減ってしまいました。
2.ニホンウナギを増やせないのはなぜ?
養殖の「もと」となるシラスウナギが激減
輸入ができないならば養殖の生産量を増やせばいいのでは?と思ってしまいそうですが、実はそれができない事情があるようです。
国内で養殖されているウナギは、ほぼ二ホンウナギ(ソースは水産庁資料)ですが、そのニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)が激減しているのです。
気候変動がシラスウナギの数を減らしている可能性も
シラスウナギが激減している背景には海流変動の影響があり、(断定を避けてはいますが)地球温暖化がこうした海流変動に関係しているとの研究報告もあると、JAMSTEC(海洋研究開発機構 )は指摘しています。
なお、海水温の上昇がニホンウナギの幼体(レプトセファルス)の動きに影響する可能性があることは、ニホンウナギの産卵場所を発見した人物である塚本勝巳教授も著書で指摘していました。
3.「結局、ウナギは食べていいのか問題」
こうした状況を受けて、平成24年6月には国内で「ウナギ緊急対策」が定められ、シラスウナギの採捕は都府県知事が特別に採捕許可を出しておこなうこと、また、採捕量を報告することが定められています。
しかし、水産庁の調べによれば、令和4年漁期におけるシラスウナギ流通では「採捕報告」があったシラスウナギの量が5.5トン、報告漏れ等が4.8トンと、”不適切な”流通が多いことがわかっており、この中にはいわゆる密漁(つまり無許可)採捕も含まれているようです。
中央大学法学部の海部健三准教授は、「国内で養殖されているニホンウナギのうち、半分から7割程度のウナギが、不適切に漁獲・流通したシラスウナギから育てられている」「国外で漁獲されたシラスウナギが輸入される際も、原産国から密輸されている可能性が高いと考えられている」と指摘しています。
こうした中、私たち個人ができることは「現状では、消費を削減するべきです。同時に環境を回復していく努力も重要ですが、環境の回復には時間がかかってしまいますね。消費削減は即効性が期待できると考えます」とのことで…やはり、ウナギを食べるのは大いにためらうべきこととなってしまっているようです。。。
4.ニホンウナギ「完全養殖」の意義と課題
「完全養殖」が養殖と大きく違う点は
説明に時間がかかってしまいましたが、ここまで調べたことでようやく、近畿大学水産研究所が発表した「ニホンウナギの完全養殖」の利点が理解できました。
完全養殖は、「人工養成したウナギから」「人工受精によってふ化仔魚(レプトセファルス)」を誕生させ、稚魚(シラスウナギ)へと育てます。
つまり、海からシラスウナギをとってくることはしないので、海の資源を傷つけずに済むのです。
課題はシラスウナギを育てる技術とコスト
とはいえ、もちろんまだ課題もあります。
この点については、明日のnoteで詳しく見て行こうと思います。
5.みどりの食料システム戦略と完全養殖
今後、世界的な食料不足やたんぱく源の危機が予測される中、水産物の完全養殖への期待は世界的に高まっています。
日本でも、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」では、現在養殖されているクロマグロ、ニホンウナギ、ブリ、カンパチについて、2050年までに完全養殖にすることを目標に掲げているそうです。
ということで明日は、「みどりの食料システム戦略」でも完全養殖が目指されているクロマグロについて、特に「近大マグロ」の現状と課題を中心に調べていく予定です。
以上、サステナビリティ分野の仕事についたばかりの私の「1000日連続note更新への挑戦」18日目(Day18)でした。
それではまた明日!