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「世界で1番住みたい街」ポートランドから学ぶまちづくりvol.1

アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド市の「地域価値の創造」と「地域活性化」について、サスティナブルな地域社会を構築している点から着目して考えてみました。

ポートランド市は2035年に向けた包括的プランを2016年に策定しました。
その政策のプロセスは市民や企業の参加やオンライン会議の開催などを通して一般共有し、人口や建物、仕事や活動も増えている中で「どのように持続可能な社会構築をしていくか」を常に念頭に置き、官民が連携してまちづくりを行っています。
直接的なまちづくりに関心の少ない市民においても、生活の質やを重視する観点により持続可能なまちづくりの実現につながっています。これはヒント。
行政がサスティナビリティを軸にした明確なビジョンを示すことで、環境・経済・社会の調和と発展が成立し、サスティナブルであること自体が地域価値を創造し、注目の的となっています。

 なぜ、これほどまでにポートランドのまちづくりは機能し、世界の関心を惹き付けるのでしょうか。3つの観点から、ポートランドを捉え、今後の日本のまちづくりに向けて考えてみました。

1 持続可能性 Sustainability

ポートランドの地域活性化の最重要キーワードは「持続可能性(サスティナビリティ)」。住民のライフスタイルや官民による諸活動の根底にこの概念が含まれていました。

ポートランドでは1970年代より公害や石油エネルギーの依存からの脱却のため、サスティナブルな社会づくりが論議され、高速道路を廃止し自然との共生を大切にし、公共交通や自転車を中心としたまちづくりを行ってきました。

都市農業を守った地産地消やチェーンストアよりも地元製品を愛する文化が根付き、モノや資源も3R(reduce,reuse,recycle)が当たり前となっていました。もちろん、それができていない場面も見受けられましたが・・・

このように環境・経済・社会においてサスティナブルなまちづくりを実現している模範として、ポートランドは注目されています。

持続可能性は、国連が定めた全世界共通のアジェンダであるSDGs(Sustainable Development Goals)や世界最大の事業であるオリンピック・パラリンピックにおいて、共通して計画の根幹に組み込まれている概念であり、いまや世界で最も重要なキーワードの一つと言えます。私たちの生活は世界とつながっています。

行政はもちろん、企業、NPO、市民等々が、「一人一人」や「地域」のために、「コミュニティ」や「ポートランド」のために、さらに言えば「人類」や「地球」のためにとるべき選択や配慮といったものを随所で感じられました。

未来のことを考えた循環。

それがこのまちでは道徳的でもあり、クールでもあるのです。

2多様性と包摂 Diversity & Inclusion(D&I)

視察中、この2つの言葉もキーワードとしてよく耳にしました。(Diverse, Diversity,Inclusive, Including, Inclusion など。)

簡単にいうと、Diversity とは「多様性」「一人ひとりのちがい」のこと。
Inclusion とは、「包摂」「包括・包含」「受け入れる・活かす」という意味。

アメリカはもともと多民族国家です。
特に、超人気なポートランドでは毎週350人もの新住民が国内外から移住してきます。
だから、多様性に富んでいます。

ちなみに、多様性とは、年齢、人種や国籍、心身機能、性別、性的指向、性自認、宗教・信条や価値観だけでなく、キャリアや経験、働き方、企業文化、ライフスタイルなど多岐に渡ります。

この多様性をまちづくりやビジネスに活かすことがポートランドでは定着しています。

多様な人々が互いに影響し合い、異なる価値観や能力を活かし合うからこそ、このまちでは活発なイノベーションが生み出されているのです。
新たな価値創造が実現できているのです。

簡単にいうと、いろんな考えの人たちで考えた方がより良くおもしろいアイデアが生まれるということ。
だけど、日本ではそれは難しいこととされています。

D&Iは、持続可能性の概念の一部でもありますが、日本においても先進的な企業や自治体で経営方針やアジェンダにD&Iが単独で組み込まれてきています。
それほど重要な概念です。

日本でも東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシーとして、このD&Iを広め、定着させることが考えられています。

しかし、簡単な例でいうと、障がい者は福祉分野で、、、外国人は国際分野で、、、などと、分野での対応を基本としてしまっている考えが行政には根強く残っています。
しかも、多様性とは、障がい者や外国人だけではないです。

SDGsでも、ゴール17でパートナーシップが掲げられています。
社会全体で多様な主体が参画していけるような、D&Iが実現された地域づくりがいま求められています。

イベントもD&Iを意識しないと。
とかく、元気な人が元気な人向けのイベントを無意識のうちに企画している現状があります。
D&Iが達成されたイベントほど、持続可能なものとなると思います。

では、どうすればD&Iが実現できるか。
それは、社会教育の原則である「相互学習」にヒントがあると思います。
僕は、相互学習のためには何より「アンラーニング」が大事だといつも思っています。

敬愛するマスター・ヨーダはこう言っています。

Your must unlearn what you have learned

アンラーニングは「学びほぐし」とも訳されていて、ヘレン・ケラーが使っていた言葉としても有名です。

例えるなら、一度、型通りに編んだセーターを解き、今の形に合わせて再度編みなおすこと。
すでに持っている知識や過去の経験に新しく学び得たことをそのまま上に積んだり上書きしようとするのではなくって、いったんリセットして、今までの知識や経験と新しく学び得たものをもとに再構築する考え方のことです。

学習者の経験が共有されて、学習の相互作用がおこって、新たな価値を生むことも期待されるし、何より、多様性を認め合って高め合えるのが、ワークショップの本当の価値です。
D&Iを最も学べる場も、最も実践する場も、社会教育だと思います。

社会教育という言葉を意識するかしないか、使うか使わないかは置いておき。

互いを理解し、多様性の尊重によって個々の人財が力を発揮できる環境から生み出される居心地の良さ、そして、そのアウトカムやインパクトの偉大さについて、ポートランドでは大いに実感できました。

つづく。

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