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TUGUMI/吉本ばなな

今まで読んだ本の中で、もう生涯1冊しか読めませんと言われたら、
吉本ばななさんのスウィート・ヒアアフターか、TUGUMIでめちゃくちゃ悩むだろうな。

という大好きな小説!

やっぱり夏(初夏ではなくどちらかと言うと夏の終わり)はTUGUMIを読まなくちゃ。
毎年読む。


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まず、つぐみというのは主人公まりあのいとこなんだけど、この子のこと好きになる。

一生懸命まっすぐに生きていて、
性悪なことばかり言っているししているんだけど、それでも。
だって主人公が夏休みにつぐみの家に来た時、
「おーい、ただめし食いのブスが着いたぞ」
とか言うんだよ?
笑っちゃう私も性悪なのかもしれないけど、
でもつぐみは体が弱いのに主人公が来るから1人で迎えに行っているし、随所に主人公のこと好きなんだなってことが感じられる。
そんなところが可愛らしいよね。

文字通り命を燃やして、くだらないことも周りに迷惑をかけることも、自分の信念を貫いているつぐみは憎めなくて、
多分私が主人公だったとしても、嫌な思い出も沢山持って忘れはしないけど、つぐみのこと好きなんだろうなって思う。

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主人公は幼い頃からつぐみたち一家が営む旅館で一緒に暮らしていたのだけれど大学に入る頃から東京に移り、夏休みにつぐみのいる海辺の町へ帰省する。

東京の生活の幸福感もちゃんと感じている。

けれど、
「それでも時おり、眠れないほど海が恋しい。どうしようもない。」
銀座で不意に潮の香りを感じて、
「全身がその香りに急に吸い込まれて身動きがとれないほど切なくなる。」
くらい、自分が育った海辺の町が大好きで、そんな中帰省できた時、
何気ないところにしみじみと尊さや喜びを感じているところにとても共感した。

私も実家が大好きだから、一人暮らしの家から帰省をすると何気ないところに幸せを感じるし、全てのことが愛おしく感じる。

「私はいつでも楽しいし幸せだけれど、ときおりあの頃がたまらなく、悲しいくらいなつかしくなることがある。」
まさにこれなんです。

「正面から照らしてくる光に、まぶしそうに目を細めて私の横を歩く彼女の背の小ささが、歩くたびに肩に揺れる髪が、映画のシーンのようにしみじみと感じられた。バス停にゆく裏道の、古びた旅館群。いたるところに植えられた昼顔の枯れかけた色。海辺の町特有のこの乾いた真昼の中に、私の記憶は閉じ込められる。」
尊い描写。
ばななさんはいつも、私が感じていたどうにも言葉にできない、何かが満ちてくるような穏やかな、だけど叫びたい気もするような気持ちを言葉にしてくれる。
本当大好き。


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最後に、この小説の中で主人公が思っていたこと、とても分かるなあと思ったことがあった。

「誰ひとり、本当は心の底に眠るはずのどろどろした感情を見せないように無意識に努力している。人生は演技だ、と私は思った。」

「ひとりの人間はあらゆる段階の心を、あらゆる良きものや汚いものの混沌を抱えて、自分ひとりでその重みを支えて生きてゆくのだ。まわりにいる好きな人達になるべく親切にしたいと願いながら、ひとりで。」

自分が気持ち良く生きていくために、周りの人と楽しく過ごしていくために、
どうしても自分の中だけに収めている感情ってあると思う。

どろどろとした感情があるのは全然悪いことじゃない。
それを自分の中だけで浄化して、周りに見せないのは、偽りの姿なんかじゃなくて優しさだと思う。

だからそれで良い。


長々と語ってしまいましたが、ばななさんの本はもう読んでいる瞬間瞬間が身に沁みてくるし、私の浄化剤。

ここには書かなかったけど、美しい海の描写が沢山あるのもTUGUMIの大好きなところ。
ぜひ読んで沢山見つけてみてほしいな。

今日もばななさんありがとう!



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