全米学生長距離界ナンバーワンともいえる強豪の北アリゾナ大中長距離チームの”丘陵地の起伏”を利用した閾値走。
(写真:FloTrack:YouTubeより)
私は普段、ランニング系YouTuberのチャンネルはほとんど見ないのだが、自分がまだ知らないトレーニングの学びになるような動画は積極的に見る。
理由は、そのトレーニングがどういう理由で行われていて、その結果どうなっていくのか、ということを考えるのが楽しいからだ(勉強になるから)。
【動画:FloTrack / Workout Wednesday】
2016-18年の全米学生クロカン選手権D1男子総合の3連覇、20,21年2連覇を達成した強豪校の北アリゾナ大(NAU)。NAUが拠点とするアリゾナ州フラッグスタッフ郊外のバッファロー公園(標高2,150m)の丘陵地での閾値走。
【コース】1周890mの起伏のある周回(Sis CCW Death:標高差17m)
(上り坂は勾配が7-12%と急勾配:200mの上りで17mの上昇)
このコースは丘陵地。例えば、箱根駅伝を目指すような大学のトラックの周りに作られるような人工的なクロカンコースでにちょこっとあるような上りではない。アリゾナ州フラッグスタッフという高地(標高2,150m)に位置する場所であること、自然の地形を生かしたトレーニングエフェクトをかけた有酸素練習である(実際には乳酸を生成し酸化させていくハイブリッド練)
メニュー:4周 / 3周 / 3周 / 2周:それぞれR3-4'
ペース:Steady(定常ペース)適度なペースであるが"速く"走らなくてよい
刺激時間:13分 / 10分弱 / 10分弱 / 6分程度
因みに↑の動画で一番喋っている黒いマスクの男性は北アリゾナ大の中長距離ヘッドコーチのマイク・スミスで、彼はゲーレン・ラップやルイス・グリハルバ(オレゴン世界選手権5000m4位)の現在のコーチである。
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ポイント:ペースはステディ(定常状態)で良くて、速く走る必要は無い。起伏があるから、主に上り区間で作られる乳酸を利用しての"乳酸シャトル"が起こり(速筋線維でできた乳酸が遅筋線維や心筋で使われる代謝様相)CVインターバルやファルトレくなどといった練習と同じく速筋繊維の中間筋(Type-IIa)等を刺激する練習であるといえる。
この練習は10分前後の持久走を4セット行っている(分割している)のもポイントである。
これに似たようなものとしてやや長めの距離の登坂走が挙がる。ただ、そのような練習は走行区間がほぼ全て上りであり、リカバリー区間が歩きなどの完全休養であるので、ジョグで息を入れる間があまりない。
細胞間乳酸シャトルを起こして乳酸の酸化を強化するのか、もしくは長めの登坂走で速筋線維に長めの刺激を入れてグリコーゲンをすり減らしていくような練習なのか、それぞれに目的がある。
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私はCV-OBLA強度のインターバルやファルトレクを推奨しているが、こういった起伏のある丘陵地の周回コースでの軽めの持久走(ステディ=定常状態の持久走)も推奨したい。
しかし、この練習はやはりこういった地形があることが前提となるので、どこでもできる練習であるとは言い難い。特に軽めの持久走で乳酸シャトルを期待しようと思ったら上りの区間は勾配が急でかつ150-300m程度の周回コースが望ましい。
こういう"スレッショルドワークス"(閾値付近の練習)はファルトレク、起伏を使った持久走、そしてトラックやロードでのクルーズインターバル等色々とある。
これは、いわゆるトラックでの"ペース走"(8000m / 12000m / 16000m等)だけでなく、色々と練習の種類があるのでそれぞれ試してみると楽しく、多くのバリュエーションがあるのは良い。
トレーニング計画で最も大事なことは一貫性を持たせることであるが、かといって同じ練習ばかりを延々と繰り返していくわけではない。もちろんハードな練習をこなしていく過程で、“トレーニングに飽きない”ことはすごく重要であり、それはモチベーションを維持・向上させるというキーワードにも通ずる部分である。
その為、一言に閾値練習と言ってもトレーニングメニューのバリエーション(引き出し)は多くあったほうが、適宜調整できるので色々と役に立つことが多い。
毎週、インターバルとペース走、ジョグという流れでしかやっていない人がいるとしたら、それはいつか飽きるケースが多いかもしれない。そうであれば、いろんなバリエーションの練習を試してみることをお勧めする。
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