住みやすいマレーシアを経てドイツに!国際派寿司職人夫婦の挑戦:丸島夫婦②
夫婦で寿司職人をされている丸島さんのインタビューその②です。
※この記事は2017年10月に東京すしアカデミーのWEBサイトで公開されました。
プロフィール
丸島正成さん:前職は農と食、協同組合関連の取材を専門にしていた編集記者。食に関する記事を執筆する中で「寿司」が持つ可能性を確信し、また妻の海外移住への強い思いに後押しされ入学を決めた。飲食業は未経験で入学、マレーシアで初めて飲食業の世界へ。
堀 咲子さん(※堀は旧姓):前職は日本語教師。国内だけでなく、海外数カ国でも教鞭を執った。日本経済に陰りが出てきたことをきっかけに、海外における日本語学習の需要が低下。日本語教師として就労ビザを取得できる国も限られてきたため、改めて海外就職を視野に入れた転職を決意した。
編集部:マレーシアでの暮らしについて教えてください
咲子さん:私は他にもヨーロッパ、アジアで色々な国に住んだことがありますが、マレーシアはその中でも住みやすい国だと感じます。物価が安いのに、サービスの質は先進国並みというところが魅力です。
クアラルンプールはかなりの都会でありながら、家賃も安くて東京より遥かに広い家に住めますし、ベビーシッターなどのサービスに掛かる費用も、日本よりずっと抑えられる上、英語のバイリンガル教育をしてくれる学校もあります。子育て中のキャリアウーマンにも恵まれた環境だと思いますよ。
正成さん:働きやすさはお店によってかなり差が出てくると思います。オーナーが日本人か、マレーシア人かによって経営の方針も異なりますし、自分の目指すキャリアが何かを基準に、自分に合ったお店を見極めることが必要です。
語学を理由に物怖じしない
正成さん:きちんとした文法で話せないから躊躇する、恥ずかしい、という日本人は多くいますが、まずは「何でもいいからしゃべる、伝える、表情で伝える」ことを心に留めておけば、まず問題ありません。
海外では特に「何とかなる、何とかする」の精神が大切です。そうすれば、実際に何とかなってしまうことばかりです。言葉を理由に海外に出ることをためらうのは、本当に勿体ないと思いますよ。
少なくとも、寿司の技術については東京すしアカデミーで学んだものがあるわけですし、それを伝えたり、お客さんに見せるために言葉を喋る必要は無いのです。
編集部:マレーシアの食材の質はいかがですか?
咲子さん:マレーシアくらいまでが、日本から直接空輸で冷凍せずに魚を運べるギリギリの距離だと聞いたことがあります。築地や福岡などから新鮮な鮮魚が手に入るので、食材に恵まれていると言えるのではないでしょうか。
正成さん:寿司職人として働く上で、鮮魚を調理できる環境があるのと無いのとでは、やはりモチベーションが変わるし、きちんと魚をさばくことへの使命感も芽生えます。日本と同じように正統派の江戸前寿司を握りたい人には良い条件が整っていると感じますね。
日本人シェフの需要は高い
正成さん:日本人の寿司職人の需要は、まだまだ世界中で広がっていく可能性を感じます。東南アジアの国々も豊かになってきて、「日本から直輸入した食材」で、「日本人が調理する和食」に付加価値を見出してくれる人が増えているからです。
マレーシア人の味覚に合わせたアレンジを、あえて加えない「日本の寿司」が求められるようになってきたので、それは日本人シェフが今後も働く際の強みにつながると言えるかもしれません。
編集部:現地の方の好みの傾向はありますか?
正成さん:2年以上マレーシアに住んで感じる、最近人気のある和食というと焼き鳥とラーメンですね。私が働いているお店では炭火焼の焼き鳥も日式ラーメンも提供していますから、その人気を実感します。
丼物も注目され始めている印象ですね。海外で和食のメニューを考える際には特に、日本からの輸入食材を使う場合のコストとニーズのバランスなど、経営面で考慮すべき点があります。
その点、全て地元の食材でまかなえる焼き鳥や丼物などはレストラン側から見ても、お客さんから見ても、コストパフォーマンスが良くなります。
現地の方の好みで言えば、華僑の人々は生魚を食することにあまり抵抗がなく、江戸前寿司を好む傾向がありますね。特に日本に駐在経験があったり、富裕層のお客さんは「銀座で食べた寿司と同じ味」を求めて来られる方も多くいます。
咲子さん:逆にマレー系とかインド系の方は、寿司屋に足を運んで来てくださっているのに「生魚は食べられない」とおっしゃる場合も…。
そういう時は、すべて炙りで注文をお受けするなどして、お客さんのお好みに近づけるように努めています。元々「寿司」の具体的なイメージが無いという印象を受けますね。
お店の方針にもよりますが、イスラム教徒のお客さんに向けて、「ポークフリー」対応を打ち出す所もあります。その一方で、ベジタリアンの方は少なく、せっかく時間をかけて開発した「ベジ寿司(ネタが野菜の寿司)」は、あまり注文が入りませんでしたね(笑)
編集部:海外就職を目指す方にメッセージをお願いします。
正成さん:海外に出るタイミングは、人それぞれ考え方があると思いますが、考え込まずに思い切って飛び出していく方が良い、という考えです。
職歴としては飲食業未経験でも、東京すしアカデミーで寿司職人としての基礎はしっかり身に付けているわけですから。あとは、採用試験の際に、魚のさばき、握り、刺身、巻き、盛り付けのほか、卵焼き、天ぷら、包丁さばきといったスキルチェックをされることもあるので、その対策は立てておくと良いでしょう。
その点、東京すしアカデミーの講師の先生方は、こうした技術も一流ですので、そうした課題が課せられた時にも気軽に相談できるというのが心強いですよね。
咲子さん:自分に合う、合わないという感覚的なことも含めて、やはりその国に実際に住んでみないとわからないことはあるので、若いうちに挑戦すれば修正もききやすいという利点があります。
ただ、マレーシアに限って言えば、一般に就職が難しくなってくると言われる40代の方でも、寿司職人としての職歴があれば、採用されるチャンスはあると思います。
家族でマレーシアに移住するという大きな決断をし、夢を実現させた丸島さんご夫妻。慎重に準備を進める一方で、心を決めたら行動は大胆に、そして柔軟に。
メリハリのある物の考え方で人生を切り開いていかれる姿が印象的でした。さらに間も無く、ドイツでの新しいステージが待っているとのお知らせが。スタッフ一同、益々のご活躍を願っております!
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