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あんたがサンタだろ!ロック様の妙技を味わう娯楽良作『レッド・ワン』【映画感想】

あらすじ

「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」「ジュマンジ ネクスト・レベル」のドウェイン・ジョンソンとジェイク・カスダン監督が再タッグを組んだアクションアドベンチャーコメディ。何者かに誘拐されたサンタクロースを救うため、心優しいマッチョなサンタ護衛隊長と、サンタの存在を信じない賞金稼ぎが手を組み、世界をまたにかけて奮闘する姿を描く。

クリスマス・イブの前夜、コードネーム「レッド・ワン」ことサンタクロースが何者かに誘拐された。サンタクロース護衛隊長のカラムは、世界一の追跡者にして賞金稼ぎのジャックと手を組み、サンタ救出のために世界中を飛び回ることに。しかし彼らの前に立ちはだかる誘拐犯は、サンタの力を利用して、ある恐ろしい計画を企てていた。

https://eiga.com/movie/102519/

レビュー
TBSラジオ『アフター6ジャンクション2』の人気コーナー【週間映画時評 ムービーウォッチメン】課題映画になったので感想メールを送りました。このレビューはそのメールの全文です。

以下、なにひとつネタバレをしていませんが、作品の内容には触れています。あまり事前情報を入れずに映画を鑑賞したい方は映画鑑賞後にご一読くださいませ。 



1:気楽に楽しめる快作

『レッド・ワン』見てきました。気楽に見られるファミリームービーとして良作だったと思います。

"ロック様"ブランドのセルフプロデュースに長けるドウェイン・ジョンソンと、”ロック様”の活かし方をマスターしつつあるジェイク・カスダン監督のコンビネーションが輝く逸品でした。

『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』から続く2人のタッグ作は「ちょうどいい娯楽映画」の精度を着実に上げていると思います。


2:"ロック様"というブランド

「ちょうどいい娯楽映画」といいつつも、この作品の魅力は稀有な映画スター・ドウェイン・ジョンソンの魅力、もっと言えば彼自身がクリエイトし、そのブランドを維持し続けている「ロック様」を愛でることにあると思います。

おそらく『セントラル・インテリジェンス』あたりで何かを摑んだロック様は、近年の映画ではほとんど必ずといっていいほど製作を兼任し、そして「今回ロック様とタッグを組むヤツは誰だ・・・?それは・・・コイツだ!!」とプロレスの対戦カードを発表するときのようなエンタメ高揚感を映画に上手く転用しています。

もちろん『ブラックアダム』のように1人で看板を背負うこともあるのですが、なんにせよ「今回は誰がロック様とイチャイチャするのか?」を観客も楽しみにしている不思議な共犯関係が生まれています。こんなスター俳優は他にいないのではないでしょうか。


3:フランチャイズ・バイアグラ

さて今回ロック様とイチャイチャする俳優はJ・K・シモンズとクリス・エバンスの二人なわけですが、どちらとタッグを組んでもお互いWin-Winの関係でお見事です。

ロック様は特殊メイクなどはせず、衣装こそ違えど常に素に近い容姿で映画に出てきます。

なので誰がどう見ても「いつものロック様じゃねえか」と思うのですが、しかしJ・K・シモンズ演じるサンタの近くにいる時は「上司に忠実で頭の切れる有能な部下」という印象がしっかりと観客に伝わる演技をロック様はしています。

フレッチャー先生としての顔も持つJ・K・シモンズは、もちろん単独でも「人間を超越した存在としてのサンタ」を見事に演じていますが、ロック様のあまりの忠臣ぶりを見ることで「あのロック様がこれだけ尽くすということは、サンタってマジで凄い存在なんだ」と観客に示すことに成功しています。J・K・シモンズとのシナジー効果がかなり出ていました。

デイミアン・チャゼル監督作『セッション』
フレッチャー先生も人間を超えたモンスターでした

一方、クリス・エバンスとバディになって繰り出す一連の活劇では、その忠実で頭の固いキャラがしっかりギャグとなって回収されています。

誰がどう考えても最近のクリス・エバンスは「キャプテン・アメリカ」のイメージを払拭するため積極的にヨゴレ役を演じていると思うのですが、ロック様と並ぶことで「憎めないイイ相棒」感が生じ、かつ最後には必ず改心(成長)する人として約束されながら観客も見られるので「本気でイヤなヨゴレ役」にはならずに済んでいます。

つまりロック様と共演するだけで、名優たちがよりおいしく輝いているわけです。ロック様ご自身が自分のことを「フランチャイズ・バイアグラ」と評していたようですが、単体映画においても「サンマの塩焼きにおける大根おろし」のように、脇役として誰かの魅力を引き立てることができる稀有な存在感をロック様は持っていると言えます。


4:でも最後の最後は・・・ね?

だがしかし、これはロック様映画でもあります。最後の最後はロック様でしか成し得ない方法で解決していく。そこに誰も何の違和感を抱かないし、それこそを期待してみんなが見ている。

『ワイルド・スピード スーパーコンボ』
クライマックスで戦闘ヘリと素手で闘うロック様
目を疑う文言と画像ですが、マジです。

そしてこれを特殊メイクや原作があって作り込まれたキャラクターなどではなく「ロック様」のままで成立させてしまう。

近年のトム・クルーズ、キアヌ・リーブスのように俳優がガチすぎるスキルを発揮し、CGなしのスタントこそが魅力、という作品は増えていると思います。最近だと『フォールガイ』がまさにそういうテーマの作品だったわけで、私もそういったアクション映画が大好きです。

※メールを送ったあとに気がつきましたが、『フォールガイ』はトムやキアヌのように俳優が本当に演技するというより、名も無きスタントマンへの愛がテーマの映画ですよね。これはちょっと書き間違えちゃいましたね。

しかしロック様はCG・VFXをガンガン駆使した映像の中でのスタントがむしろ魅力的に見える不思議なアクションスターだと思います。

もはやロック様は人智を超えた存在に到達しています。本作くらいCG丸出しの世界にいたほうがリアリティーが生まれるくらいです。

本当にこんな映画スターが実在するのか?と疑ってしまうこの感じ、もはやロック様こそが「サンタクロース」のような状態になっています。

ドウェイン・ジョンソンという一人の俳優の軌跡をもう少し掘り下げてみたいなと思うほど、ロック様ってやっぱり演技うまいよな〜とか感心しながら安心して見られる良作でした。予算のかかったファミリー映画を、シリーズなどでなく単体として成立されるのは本当に難しいはず。でもロック様なら可能なはずですし、彼にはこの路線でもっともっと突っ走ってほしいものです。


あとがき

※以下、一部もう見た人向けの内容あり

「普通に面白い」映画ほど書くことに悩む、というのは何度か書いてきましたが、今回もそうでした。

しかしここは「ロック様の魅力」一点突破で行こうと決めてしまったら割とサクサクいけた感じです。

メールでは触れませんでしたが、クリス・エバンスの親子エピソードもいい回収でしたね。劇中での「悪い子リスト」の設定とかを考え出すと「?」が湧かなくはないのですが、ラストの「子どもと子ども」の会話はちょっとウルッと来ましたね。

カースタントは若干分かりづらい部分もあった気はしましたが、アクションも全体的に好ましいものでした。

特にガジェットのアイデアは好きでしたね。「ロック様が小さくなる」というアイデアは「絵面の面白さ」だけでなく、後にサンタクロース稼業に必須のガジェットだったのか!と伏線回収してくれるのも気が利いてますよね。

クリスマスムービー、ファミリームービーとして万人に勧めやすい、この丁度良さ。こういう丁度良い映画がみたいから映画館に通うんですよねえ。


思ったより厳しい感想だった宇多丸さん評はこちら。

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