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環境問題と深い関わりのある「緑の革命」を知って一緒に未来を考えませんか

環境問題は食と農に深く関わっています。それは現代の農業が、人類がそれまで10000年に渡ってしてきた農業と全く異なる農業をしているためです。20世紀の起きた農業の変化を「緑の革命」と言います。「となりのトトロ」で行われていた農業から見ると10000年前の人類の方がやっていることが近くて、現代の農業の方が遠いと言えます。
しかし、「緑の革命」の効果は絶大です。「緑の革命」は世界中の飢餓と貧困を激減させ、人類の人口を爆発させ、地球の環境を変化させました。私たちがどこから来たのかを知ることは、私たちがどこに行くのかを知ることに繋がります。是非「緑の革命」を理解して人類が地球で持続可能な経済を作ることを考えるきっかけにしてください。

「緑の革命」とそれがもたらす社会変革

「緑の革命」以降の農業でこれまで10000年の農業と決定的に違う点は以下の通りです。

・品種改良
・灌漑の整備
・化学肥料の使用
・化学農薬の使用
・機械化

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これらがどんなものなのかはそれぞれ後ほど説明します。これらの技術革新によって、農業の生産効率が飛躍的に上がります。それは同じ面積で収穫できる作物の量という意味でも激増しますし、一人当たりの農業生産量という意味においても激増します。また、農業とは元々、暑さ寒さ、病気や害虫に対しての抵抗性が低く自然のふとしたことで収穫が激減していましたが、「緑の革命」によりこれらの自然の災害に対しても強くなりこれまでと比較すると安定した収穫が得られるようになります。
実は「緑の革命」は日本をはじめとした先進国の高度経済成長の陰の立役者と言われております。「緑の革命」により農村では収穫量が増えるのに人手が要らなくなっていきます。これにより、仕事のない農村から都市に若者が移ることで工業化が進むと考えられているからです。
一方、出生数が多い発展途上国では乳児死亡率が下がったため人口が増加していました。地球の人口は「緑の革命」が始まる前より30億人増えていますが、人口増加が大規模な飢餓に繋がらなかったのは「緑の革命」による食料生産の増加によります。
では、この「緑の革命」の技術革新の一つ一つについて詳しく見ていきます。

品種改良

品種改良は人類が農耕を始めた時から始まっています。作物の中でよいものがあると選別していました。このため我々が食べている作物は江戸時代の時点で既に自然のものと比べると大きく、美味しく、たくさん収穫できるものとなっていました。
しかし、近代以降では遺伝学の発展により体系的に品種改良ができるようになりました。どういうことかと言いますと、受粉をするとお父さんお母さんの性質を受け継ぐとか、接ぎ木をすると元の木のクローンができるとか、現代では当たり前の理解を基に品種改良をするようになりました。加えて意図的に遺伝子を突然変異させたり、ついには遺伝情報をコピー&ペーストするようになります。
また、それまではあくまで個人で行っていた品種改良を国家や企業など組織的に行うようになります。これによって時間のかかる品種改良を多数の人が協力して多くの手間と長い期間をかけて実施できるようになります。
これにより収量が増えるだけでなく、病害に強く、気候条件にも左右されにくい品種が生まれます。

灌漑の整備

灌漑とは農地に人工的に外部から水を供給することです。灌漑のない農業を「天水農法」と言いますが、世界中の多くの農地は灌漑なしには農業が成立しない降雨量の土地です。また、米は特に灌漑を前提とした田でしか栽培できません。このため、人類は農業を始めるとほぼ同時に灌漑を始めました。
しかし、20世紀以降は科学の発展により灌漑の技術は上がり、スケールも大きくなります。大きなダム、長い水路、深い井戸が次々と作られてそれまで農業ができなかった原生地が大穀倉地帯になっていきます。

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化学肥料の使用

農業をすると田畑から作物を収穫するため、土の栄養を外に持ち出します。このため、収穫を減らさずに農業を継続するためには肥料を田畑に入れないといけません。近代より前は山などの柴や草、人間や家畜のし尿、動物や魚などを発酵させて畑に入れていました。
20世紀になると畑に必要な栄養素が窒素、リン酸、カリだということが明らかになりました。加えて窒素は空気から合成し、リン酸、カリは特殊な鉱物を掘ることで大量に得られるようになります。これらは化学肥料と呼ばれて畑に大量に投入されることで、収穫量が飛躍的に向上しました。

化学農薬の使用

人間は長い期間、作物が病気や害虫にさらされても、それによって飢えて死ぬ可能性があっても、できる対策をほとんど持っていませんでした。また、刈っても刈っても生えて、作物の栄養を吸収してしまう雑草には人力による草刈りしか対抗手段はありませんでした。
しかし、近代になると病気、害虫、雑草に対して人間は効果的な兵器を手にします。それが化学農薬です。病気、虫、草それぞれの身体のしくみを良く理解して、人間には害が少なく、自然への影響が軽微でありながら病気、虫、草それぞれに強い効き目を持つ農薬が開発されました。

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機械化

耕うん、種まき、施肥、収穫などの農作業はもちろん、作物の脱穀、乾燥、運搬等々、農業をして食料を生産するには多くの農作業をしなければなりません。これらも当然、近代前にはどんなに重くても、どんなに繰返しの回数が多くても人力やせいぜい動物の力を利用して行っておりました。
近代になり蒸気機関が発明されると人類はこれまで手にしていたエネルギーとは比較にならないレベルのエネルギーを手にします。初めの頃は駅と駅の間を列車が行くだけでしたが、やがて自動車が畑の前に来るようになり、耕運機が畑を耕すようになります。力がいる作業、繰返しの回数が多い作業は全て機械がするようになります。
これにより1人の農民で多くの都市住民を養うことができるようになりました。また、日本の農業は世界でも特に高齢化が進んでいますが、それでも食料の生産を維持することができています。

「緑の革命」の弊害

農業に工業化を持ち込んで生産性を飛躍的に上げた「緑の革命」ですが、それにより弊害ももたらしています。
例えば灌漑をすれば利用できる水と農地は増えますが、地上に降り注ぐ水が増えている訳ではありません。利用した水は本来は他の場所に行くべきものでした。井戸水も化石燃料と同様に再生不可能な資源です。
また、化学肥料は農地から河川や海に流出して生態系に影響を与えており、プラネタリーバウンダリーでは最も深刻な環境問題とされて地球の限界を超えているとされます1) 。加えてリン酸のカリは鉱物資源なので永遠に掘り続けることはできません。
農薬も安易に多量に撒くと菌や虫や雑草が耐性を持ち始めます。これらは元々いたものより余程やっかいです。
機械化も労働者の立場からするといい事ではありますが、再生しない資源を燃やして二酸化炭素を排出しているのも事実です。
「緑の革命」がもたらした農業が人類に恩恵をもたらしたのは事実ですが、「緑の革命」の農業のままでは、持続可能な農業と言えないのではないかというのが昨今の議論です。

ポスト「緑の革命」時代の農業

「緑の革命」に弊害があるからといって、「緑の革命」以前の江戸時代の農業に戻ることはできません。そのようなことをしたら、水と自然が豊かな日本でも日本人の大部分が朝から晩まで畑仕事をしても今の豊かな食生活を維持することは不可能です。江戸時代を通じて多くの農民は盆暮れ祭り以外は「生きること=働くこと」でしたが、手にした食事は今よりは余程粗末なものでした。それでも日本はましで、水や自然が乏しい他の地域では間違いなく多くの餓死者を出します。また、飢餓が戦争や政治不安を引き起こすことでしょう。加えて、世界のどの地域でも病気や害虫が発生するたびに多くの餓死者がでることも間違いありません。
上にも書きました通り、現在は水、肥料、化石燃料は再生可能な量をはるかに上回るスピードで消費しています。「緑の革命」の農業は持続可能ではない可能性がありますが、我々は後戻りできなくなっています。江戸時代の農業は「緑の革命」以後の農業よりも、よっぽど持続不可能です。
しかし、現在人類は「緑の革命」を達成した時にはなかった数々の新しい技術を持っています。バイオテクノロジー、ドローン、IoTなどです。また、スローライフ、ビーガンなど「大量生産と大量消費」、「肉の消費」を是としない新しい思想も誕生しています。
これらが江戸時代の農業でもなく「緑の革命」そのままでもない、新しい農業を作っていってくれると筆者は信じています。

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最後まで読んで頂きありがとうございます。

1) プラネタリーバウンダリーについは以下に書きました。



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