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雑文・永遠 『Ever17』リマスター版発売
テキストアドベンチャーゲームとしては屈指の名作『Ever17』が現行ゲーム機用にリマスターされて発売されるという事をいま知った。もう3週間前には発表されていたというではないか。ちょうどリアルがてんてこまいという事でゲーム界隈のニュースから離れていたのだった。以前もステキブンゲイ内で公開している記事にて、ファミコン探偵倶楽部の新作をネタにしたことがあったのだが、その開発メーカーMAGE'sからEver17リマスター版も発売される。MAGE'sはEver17を発売した今は亡きゲームメーカーKIDの流れを受け継ぐメーカーではあるのだが、KID倒産時にそのゲームタイトルの権利は別メーカーに売却され、その別メーカーも倒産。かつてはスマホにも移植されていたEver17だったが、この時点で配信停止。私も金出して買ったスマホ移植版がいきなり再ダウンロードできなくなってふざけんなこの野郎と思いましたよ。古いスマホだと容量少ないから、とりあえず削除して新機種に買い替えたら、再ダウンロード不可! ゲーム好きなら似たような事を経験された方は少なからずあると思われますが、なかなか凹みますよね。権利関係のあれこれで、かつての名作がなかなか現行機で移植されない事はよくあります。まあ、逆にいえば20年以上前のタイトルが当たり前のように移植されるようになったのはゲームメディアの文化的成熟を表しているようで感慨深いものがありますが。ドラクエやFFリメイクならともかく、20年後にまた『Kanon』を購入してるとはドリームキャスト版を熱心にプレイしていたときには思いませんでしたよ。(ノベルゲーム界隈をご存知でない方に説明すると、今回の本題Ever17とは直接関係ないメーカーではあるのだが、『Kanon』は現在スマホゲームの人気作『ヘブンバーンズレッド』に関わるゲームブランドkeyの処女作で、初出は18禁ゲームだったが、2度に渡るTVアニメ化(2度目はあの京都アニメーション制作)や現在までコンシューマーゲーム機に移植を繰り返す名作である。リーフ(アクアプラス)の『To heart』とあわせて葉鍵系と称され、2000年代以降のノベル系恋愛アドベンチャーの礎を作った)
switchなんかだと、ゲームの体験版が色々ダウンロードできるわけですが、ノベルアドベンチャーゲームを試しにプレイしてみると、システムが20年前とほぼ変わってないのが凄い。PSからDC、PS2世代に変わった辺りで基本的なノベルゲームのシステム周りはほぼ完成されているのですよね。今回取り上げた『Ever17』は2002年に発売されたKIDのPS2初オリジナルタイトルでした(同時にDC版も発売されたが、私は限定版を購入した。後に中古でDC版も購入した)。新規タイトルで内容がよくわからないけれど、当時の電撃G'sマガジンなどを見る限り、キャラクターの絵柄も好みだしドリマガなどで評価が高かった『Never7』(今作も『Ever17』とあわせてリマスターされる)と同じ製作陣が関わるシリーズものだと知り、これは良作になるだろうと期待して予約購入したら、想像以上の大傑作で、あれをリアルタイムで体験できたのは本当に幸運だったとしかいうしかない。ゲームメーカーKIDを代表する一作となり、後の『シュタインズゲート』などの化学アドベンチャーシリーズが生まれる土壌を形成したといえよう。有名な批評家の東浩紀氏の書籍で論考されるなど、文芸界隈の影響力も大きかったのです。
それほどのとんでもないゲーム、いったいどんな内容でなにがすごいんですか? と思われるだろうが、ネタバレ厳禁が特に強く言われている作品のひとつで、詳細はあまり深く語れないのです。ゲームシステム自体は、当時のノベル系ギャルゲーの体裁を採っていて、登場する5人の女性キャラクターのうちの4人を順不同で攻略すると最後の1人のシナリオが解放されるという、当時の大作ギャルゲーのお約束パターンに乗っ取っているのですが、この最終シナリオの展開が凄い。あまり深くは説明できないが、鏡を見た後の怒涛の展開は本当に凄い。主人公の格好良さと来たら!各々が壮絶な人生を送ってきたものの、最後に訪れるのは感動の大団円。後味も良く、ゲーム内の出来事が年表形式で流れるエンディングも感動的です。(この反動か続編の『Remember11』では後味最悪&未完という結果になったが、私はこっちも発売直後に一心不乱になってプレイした思い出の作品なんでこっちもリマスターしてほしいですね。事実上4作目の『12Riven』とのダブルパックでお願いします! 『code18』は別によいです)
担当シナリオライターは、後に極限脱出シリーズなどに関わる打越鋼太郎さんですが、彼は現在も続くメモリーズオフシリーズの1、2作目のメインシナリオを担当し、このEver17もメインシナリオを担当。ギャグシーンのノリは正直ついて行き難い雰囲気がありますが、ダークなシーンのコンシューマーギリギリの描写はなかなかのもので、主人公とヒロインのひとりがアレする展開に至る経緯や、後にその一部始終を見ていた某キャラに嫉妬でぬっ殺されそうになる展開だったり、一見明るく活発に見えるヒロインが実は相当に闇深いバックボーンを抱えていたり(彼女はメインストーリー的に選ばれないヒロインであることが確定しているだけに、最終シナリオの立ち位置はなかなか思うところはあります)、さすがに正統派の恋愛アドベンチャーのメモオフシリーズで近親相姦を取り扱ってたりするだけはありますね!
発売は3月6日ということで、それまでに第3の目を開眼させるための準備をしておくことにしましょう!
オープニングはXbox360版が流用されるようですが、断然オリジナル版の主題歌が私は好きです。
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