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ケーキと砂時計

紅茶には、誰かが持ってきてくれたケーキと砂時計。
砂時計は、美味しくなるおまじないだから、iPhoneじゃダメなんだって。

吉祥寺のレピキュリアンで買ったケーキを右手で持つようにして電車を降りる。

左手は、無意識に大きく振るクセがあって、買った時は4つだったはずのトップスのチョコレートケーキが、家に着いたら1つになってたことがあってから、
大切な物は右手の分担。

買ったケーキは、シブースト。
フランスの菓子職人の名前が由来みたい。
「らしくない名前だと思って調べてみたんです」
と買ったときに店員さんが教えてくれた。

駅から実家までは10分くらい。
改札口が一箇所の小さな駅だけど、改札を出ると目の前は、バス停がいくつもあるような割と大きなバスターミナルになっていて、前はバス停なんてひとつだけだったのに。

バスターミナルを避けるようにして、改札を出て右へ向かう。
片側だけにお店が並ぶ小さなアーケード。
学校と同じように毎日通ってたおもちゃ屋さんは、いつのまにかマクドナルドとドトールコーヒーになっちゃって。
お店の人がプラモデルを作っているのを見ながら、何時間でも過ごせたなぁとか。

アーケードを抜けると実家までは、2車線ある大きめの道をまっすぐに。
車道から一段上がった歩道を歩いて向かう。
前は車道と歩道の間には、ところどころかすれた白い線があるだけで、その白い線の上だけを歩いてどこまでいけるかなんて、良くやっていた。
白い線からはみ出したら、友達のかばんを持たされたり、サッカーでキーパーをやらされたり、好きな女子の名前を言わされて、その後で、好きだった女子と仲良くなれたり。
できたばかりなのか、白くて綺麗な歩道を歩きながら、そんなことを。

実家について、買ってきたケーキを母親に渡すと、箱を少しだけ開けて見て。
「わっ美味しそう」なんて少し大げさに驚いた後に、「紅茶を入れなきゃ」と台所へ。

紅茶には、誰かが持ってきてくれたケーキと砂時計。
今も変わらない紅茶のある風景。

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