4週目:まさかの感染疑惑!? 経営者がコロナになったらどうする?
訪問営業やテレアポを強みに、BtoBの営業プロセス代行(Sales Process Outsourcing)やマーケティング支援を手がけてきたサーパスが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、危機に直面しました。
私たちが訪問営業やテレアポを脱し、新しいスタイルを確立するまでの奮闘記をご紹介します。記録をスタートしたのは、コロナショックが深刻化した3月末のこと。それからの記録を掲載します。今回は4週目となる4月末のこと。
■4週目:4月20日(月)~4月26日(日)
営業の落ち込みをカバーするため、社会課題に合ったコロナ対策商材を扱うこと。急遽、舵を切って、私たちが売るべき商材を集め、いよいよ今週から営業構成をかけていこう——そんな大切な週に、一つの異変が起こりました。
4月20日(月)の夕方から、突然、驚くような倦怠感に襲われたのです。
この日はオフィスで作業をしていましたが、身動きが取れないほどの疲れを感じて、這々の体で、自宅にたどり着いたのが夜9時のこと。
呼吸をするのですが、肺が小さくなったような息苦しさを感じ、寝室まで行くこともできず、リビングのソファに崩れ落ちるように倒れ込みました。体温を測る力もないような状況でした。
翌朝、目覚めたのですが、やはり身動きが取れないほどのだるさは変わりません。体温は36度4分。予定していたオンライン会議は何とか自宅にいながらこなしましたが、昨日から続く倦怠感と息苦しさで、この日は夜8時には就寝しました。
実は私は、このタイミングではまだ自分がコロナウイルスに感染したのではないか、と疑ったりはしていませんでした。人間、疲れがたまると体調を崩すこともありますし、コロナショック後はデリケートな経営判断が必要なことばかりで、緊張が続いていたのも事実です。溜まっていた緊張や疲れが、こんな形で噴出したのかな、くらいに思っていたのです。
「もしかして私、感染した?」
月曜の夜に体調を崩し、翌火曜もなるべく安静にしていたのに、水曜になっても体調は好転しません。この頃から、少し危機感を覚えるようになりました。ひどい偏頭痛で、身体の節々も痛むようになりました。そして、それまでは平熱のままだったのに、夕方にはついに37度後半まで熱が上がっていったのです。
この時に考えたのが、経営トップが新型コロナウイルスに感染したらどうするか、ということでした。ちょうどこの頃、ニュース番組などでは、新型コロナウイルスによる死亡者の中で、20〜30代の若い世代が増えていることが報じられていました。もし、感染したら、最悪のケースも考えないといけない——。
一番に思いを馳せたのが、サーパスという会社の事業継続についてでした。仮にわたしがいなくなった時に、サーパスは企業として残っていくことができるのだろうか。これまでは時々、漠然と考えていた事業継続について、この時ほど高い解像度で「その先」を見据えたことはありませんでした。
そもそも私たちのような中小企業の場合、危機に直面すると、まずは経営者が第一線で差配を振るいます。きっと日本中の多くの企業で、社員が自宅勤務をする中でも、第一線に出ている経営者も多かったのではないでしょうか。
幹部が育っていた
私も数年前までなら、危機こそ経営者の腕の見せどころとばかりに第一線で戦っていたはずです。
もちろん、その覚悟は今もできています。と同時に、私が心強く感じたのは、仮に私が何らかの事情で経営に携わることができなくなったとしても、それを支えてくれる幹部が確実に育っている、という安心感でした。
サーパスではこの1年ほどで経営体制を抜本的に刷新していました。外部から優秀な経営幹部を招き、同時に長くサーパスを支えてきたスタッフの幹部育成も成果を結びつつありました。
それも、コロナショックという大きな危機を共有することで、社歴の長短に関係なく、経営幹部同士が綿密なコミュニケーションを重ねるようになっていたのです。もちろん、幹部たちの働いてきた環境や経歴はそれぞれ異なりますから、時にハレーションが起こることもあります。ただそれでも、会社を良くしようという思いの下で、互いに率直にぶつかり、そして信頼関係を構築していこうとしているのだと、この出来事を機に感じる瞬間が幾度となくありました。
仮に私が一定期間、経営に関与できなくても、優秀な幹部たちが支えてくれる。普段の事業は、彼ら・彼女らに任せておけば、問題がない。経営執行を委ねられる幹部が育っていることを、改めて認識できました。
体調は依然として悪く、木曜もほぼ寝たり起きたりを繰り返すばかり。金曜に起業家仲間たちとZoomで話している時に、検査を受けなさいと叱られ、ようやくオンライン診療を申し込むことを決断しました。
土曜の昼にオンライン診察を受け、必要な薬を処方してもらい、ようやく体調が少しずつ回復していきました。
結局、体調が戻った後で、新型コロナウイルスの抗体検査を受けましたが、結果は陰性。つまりは、単なる風邪だったのです。
突然の体調不良を通して、経営者として経営の継続性について思いを馳せ、同時に頼れる幹部が育っていることもよく分かりました。辛い1週間ではあったけれど、体調を崩したお陰で見えてきたものもあった。何だか心が温かくなりました。
しかし、その間も、コロナショックは確実に、サーパスに打撃を与えていました——。厳しい状況が判明したのは、この翌週のことでした。