みんなで見守る首里城復興プロジェクトブレストミーティングレポート(2回目)
みんなで見守る首里城復興プロジェクト
https://www.support-shurijo.org/
火災で消失した沖縄首里城の復興までを、みんなで見守る、応援することを目的とした、ボランティアプロジェクトです。現在は、首里の魅力を再発見し、楽しく街歩きするために、XR(VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)の複合形、次世代の技術と言われている)を活用したデジタルプロジェクトを進めており、幅広いヒアリングを実施しています。
1回目ブレストミーティング
https://note.com/supportshurijo/n/nc36a23538b61
アプリコンセプトは、首里のストーリーをめぐる旅
〜場所に宿るエピソード〜
企画担当:根子 明里(Curiosity Inc. CCO)
(根子)前回をふまえてまとめたコンセプトは、「ストーリーをめぐる旅」です。ここでいう「ストーリー」は、物語ではなく、その場所にあるエピソードの意味になります。その場所のストーリー、バックグラウンドをより知ることで、心も一緒に旅をする特別なXR経験が作れればよいと思っています。音楽、語り、歴史、伝承など、見えないものをその場で感じ取る経験は、上質な観光体験に繋がるのはと思っています。
(根子)アプリ利用の流れですが、まずはマップで気になるスポットをチェックします。チェックしたポイントに近くとアラートが鳴ります。スマホでは、アラートとよばれるコンテンツが出現し、スポットまで誘導されます。スポットでは、ガイドがスタートし、その場のストーリーを楽しめる流れです。目に見えないもの、いまはないもの、幻獣、過去の建造物、人物などです。ストーリーには、ARガイドをつけてユーザーをサポートする予定です。ガイドがつくと、AR初心者でもとりくみやすいのかと思っています。旅行先でのアトラクションのため、1スポットは2〜3分程度にコンパクトにまとめて、ストーリーを凝縮したいと思っています。
(根子)アプリ機能としては、以下を想定しています。
①ARガイドによるストーリー案内・解説
②AR矢印によるナビゲーション
③流れにそったアテンション
④歴史的な風景、建物、伝承を目の前に表示
過去のアーカイブで歴史的なアーカイブが存在しているとお聞きしていますので、ぜひ、活用できたらと思います。
(根子)現地とユーザーをつなぐ施策は、以下と想定しています。
①コンテンツをどこでも撮影でき、SNSに投稿できる機能
②コンテンツエリアに掲示板を表示し、現地でも自宅でも書き込みができる
アトラクションをわかりやすく、固定の掲示板を設定します。
具体的なコンテンツ案についてです。ひとつは、川上先生が参加されたプロジェクトでつくられた首里城コンテンツを現地で楽しむ体験を考えています。
みんなに首里城デジタル復元プロジェクト
https://www.our-shurijo.org/
今回集められた写真は、位置特定情報を保持していため、該当する場所で、メッセージを表示することが可能かと思います。他、このアプリならではのコンテンツを入れれると良いかなと思っています。その点は、現地のひとたちと相談して決めていきたいですよね。視覚的にわかりやすいものというよりも、空間を合間って当時の雰囲気が伝わるような、ARコンテンツをつくれると面白いのではと思っています。
現地に行くことが難しい方、まずは自宅で疑似体験をしたい方向けのコンテンツも検討しています。このコロナ禍では、ポイントになってくるのではと思っています。WEBVRを導入することになりますが、デメリット面は、コストになるかと思います。具体的には、360度カメラによる映像か立体の撮影になります。立体映像の場合、自分自身を投下して、データ内を歩き回る体験も可能です。
ニシムイ村跡地を活用した、沖縄でのアーティストインレジデンスの可能性
(山元)プロジェクトメンバーの山元です。コンテンツ案で取り上げられているニシムイ芸術村の住宅は、わたしの実家です。(※補足1)極力実現できるように協力できればと思っています。ここはあくまで個人の家ではあるのですが、いまも、ピアノ教室やコンサート会場として、来客対応で空間を解放もしていて、日常生活がおくれるよう、キッチン、トイレ、お風呂などが一通り備え付けられています。この空間は、アーテイストインレジデンスのような活用も面白いのではと思っています。
※補足1:ニシムイ芸術村。沖縄戦の後、画家達が多く居住した地区跡。 縄地域の芸術・文化の復興拠点の役割を果たした。
(松山)質問ですが、沖縄でのアーティストインレジデンス(※補足2)の状況はいかがですか?
※補足2:各種の芸術制作を行う人物を一定期間ある土地に招聘し、その土地に滞在しながらの作品制作を行わせる事業
(平良)過去に何度かいろいろな方が企画は立ち上げるのですが、残念ながら、行政を通じた正式な実現はしていないですね。アーティストインレジデンス自体が、いままで古民家活用や地域の過疎化で取り組まれることが多かったと思うのですが、芸術視点でチャレンジしてもおもしろいかと思いました。沖縄県立芸術大学もあるので、地域などもあわせて連携できると良いですね。文化芸術を通じて首里が復興するイメージは、大変良いかと思います。
アクセスしやすいポイントで出張版AR体験をしてもらい、現地へ誘導するチャレンジ
(根子)もし、実際に建物に入れない場合ですが、沖縄県立芸術大学内などギャラリーにARでアトリエを再現することも面白いかと思いました。アトリエで体験し、興味をもった人を現地へ誘導する方法もあるかと思いました。
(山元)熱心なキュレーターの方が、東京の板橋区美術館にいらっしゃって、ニシムイの展示をおこなったのですが、その際に、アトリエの特徴的な壁をパネルにして現地で展示したことがあります。ちなみに、実際沖縄県立芸術大学の生徒は、展示を学校内でおこなうよりも、県庁前の公共広場などでおこなったりしますよね。わたしたちもそこで、出張版AR展示をおこなっても面白いかもしれないですね。
(松山)首里城からは少し距離のあるニシムイも、どこかのアクセスのよいスポットでニシムイのAR体験をしてから、実際のニシムイへモノレールで訪問してもらうのもいいかもしれないですね。(ニシムイは、首里駅からは20分程度歩きますが、儀保駅から5分圏内です)
(山元)以前このアトリエの住人だった祖父の展覧会が沖縄県立美術館で開催されたのですが、その際、わたしの演奏会もあわせておこないました。ニシムイがテーマだと、美術館なども、興味をもってくれるのではと思っています。(※補足3)※補足3:山元さん自身も音楽家として活動しています。
(平良)ニシムイは、沖縄でももう少し評価されても良いかもしれないですね。ニシムイについては、ARアプリとは別にきちんと議論しても面白いかもしれないですね。
琉球音階をラインでのこして、アプリサウンドをつくる
(山元)引き続き、サウンドについてです。首里や沖縄と、音楽はきっても切り離せないかと思っています。今回、自身も含み音楽家の方に参加いただいているので、ぜひ意見を伺いたいです。
(久保)一般に向けたアプリなので、基本や親しみやすさは大事にしたほうがいいかと思っています。あと、実際にアプリを操作する過程で考えていったほうがいいかなと思っています。
(石川)個人的には、企画コンセプトの「心は時を巡って旅をする」が好きなのですが、曲のテーマにして、作曲してもよいかと思いました。
(根子)アプリのテーマソングいいですね!
(山元)那覇では、民衆のための音楽がたくさんあるのですが、首里では、王朝音楽がほとんどなので、聞く人には少しかっちりとした印象かもしれないです。(親しみやすさの問題)琉球音階をラインでのこして、作曲できたらいいかなと思っています。
首里のひとたちやうちなーぐちが、登場するアプリ
(山元)今回MTGに参加いただいた首里のすけさん(※補足4)ですが、自らもタレントで活動し、沖縄で芸能事務所も経営されています。せっかくのご縁なので、首里で活動するタレントの方にアプリに出演してもらうのもよいかなと思っていました。
※補足4:コンビ「しんとすけ」で沖縄をベースに活動、自らが所属する「オリジンコーポレーション」の代表としても活躍中
https://origin-oze.com/talent/67/
(松山)人前に出るプロの方にぜひ!心強いです。
(根子)ぜひ、参加してください!ナビゲーションなど、ぴったりかと思います。ユニークに、芸人バージョンのナビゲーションとかあってもいいですよね。
(山元)自分が考えていたナビゲーションに2パターンあって、ひとつは、標準語、ひとつは、うちなーぐち(沖縄の方言)です。本州のひとたちは、たぶんうちなーぐち、意味がわからないんですが、ニュアンスが聞いていて面白いなぁと感じてもらえるのではと思っています。
(根子)ぜひ、きいてみたいですね!
(首里のすけ)そうですね!ただ、うちなーぐちでも、実は首里の言葉はとくに難しいんです。首里言葉を使える若い方は、いらっしゃらないと思います。
(平良)そうですね、、80〜90代ぐらい方など年長者になるかと思います。
(山元)いま、プロジェクトのSNS運用でうちなーぐち(沖縄の方言)を配信する試みをやっています。デジタルで、首里の言葉を残そうとするチャレンジって大変面白いし、大変意義のあることだと思っています。Instagramのコンテンツと連携してもいいかなと思っています。
supportshurijo 毎日1うちなーぐちやっています!
https://www.instagram.com/supportshurijo/
(首里のすけ)うちなーぐちであれば、ご協力できるかなと思います!
(山元)言葉を残すことも、音楽を残すことも、とても大切な活動だと思っています。ぜひ、ご協力いただけたらと思います。
(首里のすけ)NHKのドラマなどでもあったような字幕がいらないギリギリのラインのうちなーぐちがよいかもしれないですね。沖縄のひとにも、本州のひとにも、ほどよいバランスで心地よいものになるかと思います。
(山元)アプリでももちろんですが、youtubeなどでチャレンジしてもいいですね、十分おもしろそう。
(石川)一方で、マブヤー(※補足5)など、放送内で話されるうちなーぐちが字幕がないとわからないと話題になり、ネット上で大量の書き込みが発生しました。癖になるというか、世の中に評価されたきっかけでしたね。
※補足5:琉神マブヤー 琉球放送で2008年10月4日から12月27日まで放送された特撮番組及び、沖縄県内で展開されているヒーローの名称。
http://mabuyer.com/
(山元)うちなーぐちをとことん追求するのは面白いですね。
旅行出発時の機内で、うちなーぐちコンテンツを聴いてもらい、首里に対するモチベーションをあげてもらうのも良いかもですね。旅行好きなひとなら、地元の方言に興味を持つひとは多いはずです。
あらためて、このアプリを通じて実現したいことは?
(首里のすけ)そもそもの質問になるのですが、このアプリの目的は、観光になるのですか?
(木村)歴史や文化の保存、地域PRも重要な役割かと思いますが、地域との交流や協業も大事なポイントになってくると思います。たとえば、首里の工芸作家とネットを通じた交流や、首里の食文化の紹介、オンライン展示会など、地域の人の紹介とセットで、顔がみれる紹介ができると、より効果的かと思いますね、その点、アプリのどう盛り込むかですね。
(山元)そうですね、たとえば具体的に話題にでていた工芸ですが、首里は現在どのような状況でしょうか。現在は、首里の周辺に職人さんが住まわれている印象なのですが。
(平良)そうですね、首里では工芸拠点が現在計画されています。その空間をいかすと良いかもしれませんし、拠点の方にも、地域住民や職人のためであれば、ご協力いただける可能性があるかと思います。オンライン展示についてですが、なかなか工芸品の量産は現実問題難しいと思うので、その点への配慮は必要かと思います。
(松山)地域との交流や協業についてのフォローは、アプリとは別に地域を応援するメディア「SHARE LOCAL STORIES」を現在準備しています。全国版ですが、当面は、沖縄特集でアプリのサポートを全面的にしていきたいと思っています。リリースが、こちらもアプリと並行して進んでいます。こちらのメディアでは、地域との交流や協業を最終ゴールにしているので、アプリ以上にコミットしたいと思っています。
あとは、可能であれば、アプリに投げ銭機能もつけたいなと思っているのですが、それは、検証次第ですね。やってみたい試みです。
(山元)地域との連携や協業はもちろんですが、アプリ自体はしっかり楽しんでいただいて、首里の魅力が伝わることがまずはファーストステップかと思っています。メディアとアプリの役割をそれぞれもってすすめるとよいかと思いました。
〜本プロジェクトの次ステップについて〜
・アプリブレストは以上となり、企画を最終的に完成する
・地域PRメディア「SHARE LOCAL STORIES」リリースと記事作成
・ニシムイの場所を活用した芸術文化のコンテンツ企画
・工芸と地域との交流に関わるコンテンツ企画
・首里に観光に来る方のペルソナ分析