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コーヒーの「情報」って。

こんにちは。

ここ数年、特に一杯のコーヒーの情報量がどんどん多くなって、一般のお客様のとっては飲む前から「このコーヒーは美味しいんだよ!」と思わされてしまうような。。。
もっと言えば「美味しいと言わないといけない」くらいの、情報になっているような気がします。

コーヒーは、飲む人が「美味しい」と思うか思わないかだと思っています。
ほとんどの消費者がそんな情報はどうでも良いのです。

先に言っておきますが、私自身もコンペティションの上位とか、「アナエロ」とか、あまり興味はありません。

それでも、コーヒーに興味の無い人や、産地に興味の無い人へ伝えたいことはあります。あくまでコーヒーのプロとして。

ただ、現在は一般消費者にとっては、いらない情報が多すぎると感じています。

と言いつつ、このnoteは、半分はプロ向けですので情報だらけになりますので、ご覚悟を!笑

最初のころは、コンペティションで何位に入賞したとか、何点だったとか。。。その程度でしたが、そのうち上位入賞の常連農園は有名になり、農園名だけで「美味しい」というレッテルが貼られ、入賞ロットでなくとも同一の農園のものであれば「美味しいだろう」と買い付ける業者が増えてきました。

元々、スペシャルティコーヒーの概念がスタートしたころは、生産者の人々の生活の向上や、安定した取引などを目的としてコンペティションやインターネットオークションが行われ始めました。

SCAAの本来の目的は、消費国側が産地の意識も変えていって、良いコーヒーを作ることでしっかりと稼いでもらうこと。
うーん、簡単に言うとこんな感じですね。建前は。

そして、コンペティションを行うことで、上位になるほど世界中から注目を浴びて、大きな会社と取引ができるようになり、安定して取引できるようになります。

日本人はコンペティション上位大好き。
昨年上位を獲得した農園でも、今年上位を獲得しなければ、取引しない。

私が、コーヒーの産地へ行くようになった、18年ほど前はすでにこのような弊害がたくさん起きていましたが、それはまた次に機会に。

まぁ、いまだにスペシャルティコーヒーの定義ははっきりとしていませんが。。。

まずは、最初に大切にしていたのは、トレーサビリティです。
生産者までトレースできるということは、そのコーヒー豆を育て、収穫している人々の顔が見えるということです。
特に、コーヒーはそれまでどこで収穫されたものかはっきりしないものでした。

トレースできることで、味とは関係なく「安心感」を与えることができます。

自分が今飲んでいるコーヒーは、どんな人がどんな所でどんな風に育ててどんな風に収穫しているのか。
自分がこのコーヒーにお金を払って飲むことで、生産者にどう貢献できるのか。

そういった思いを馳せながらコーヒーを味わっていただき、価値を感じて喜んでいただけるように、トレースというストーリーをお知らせする。

これが我々スペシャルティコーヒーを扱う者の仕事だと思っています。

飲む側はもうこれだけで充分。お腹いっぱい。

しかし、コーヒー生産国は日本人から見ると遠すぎて、途上国のイメージしかない。
そのため、産地のため産地のためという声を過剰に伝えすぎてしまうお店も増えていきました。
当時から中米のコーヒー産地でも経済的にかなり豊かな国もあり、農園主がリゾートホテルを経営していたり、高級車を乗り回したりしていることが多く、日本人よりもよっぽどお金持ちでした。
皆さんが思っているほど生産者全てが貧しい生活を送っているわけではありません。

今でも、ある国では「日本人はあほだから、コーヒーは高ければみんな飛びつく」と思われているのも事実です。

あくまで農園主は、と言うお話なので、そこから先の労働者まで、お金が行き渡っているかとか、労働者の生活が守られているかという話はまた別ですが、それは農園主によるところです。

その話もまたの機会に。


個人店が大手と差別化するためには、コモディティコーヒーから、プレミアムコーヒーの時代になり、なんとか農園名まではトレースできるようになったような気がしていましたが、実際には偽装表示のものも多く、実はいろんな農園のものが混ざっているロットがたくさん輸入されていました。
なんなら、実在しない農園もたくさん。笑

グァテマラのコーヒーの偽装は有名でした。
「アンティグア」という火山灰土壌の地域で栽培されるのコーヒーはとても特徴があり、美味しいので高値で取引されていましたので、全然違う地域のコーヒー豆をかき集めて、存在しない農園を作り上げて麻袋に「Antigua」の刻印を押して、流通させてしまうなんてことがたっくさん起きていました。
もちろん、日本にもたくさん輸入されていました。
そのため、「ジェニュインアンティグア」という刻印が出来て、現在では偽装表示ができにくくなっています。

ブラジルの豆が発酵して、モカっぽく仕上がってしまったものを「モカ・マタリ」と言って売ってしまったり。笑
もう、生産国まで偽装でした。笑
当時は今のように「発酵プロセス」のコーヒーは存在していませんでしたが、樹上完熟のような過熟のコーヒー豆は、珍しがられて出回っていました。

考えてみれば、COE(カップオブエクセレンス)が始まってから、一部のカッパーにはずっと発酵気味のコーヒーが評価されていたように思いますね。

基本的には「ファーメンテ」(発酵臭)というのはディフェクト(欠点)の評価でした。

産地カッピングなどは、農園のパティオでおこなったりした場合、生豆の水分量が15%以上(通常出荷時は11~13%)です。
プレシップサンプル(船積み前の精製済の豆)とは比べ物にならないくらいフルーティですので、よく発酵フレーバーと間違えられます。
パティオでカッピングする場合に陥りやすいトラップです。

また、農園は高地にあるため、水の沸点が低くてカッピングに適した抽出ができない場合もあります。

しかし、生豆は新鮮であるほどフルーティフレーバーですが、出荷前に水分調整をして船便での輸送時の乾燥を重ねて消費国に入荷すると、そのフルーティーフレーバーはカッピング時の印象程ではなくなります。

この「新鮮さ」を求めて、私たちは「リーファーコンテナ」を使ったり、「バキュームパック」にしたりと工夫を重ねてきました。

そこへ「ゲイシャ種」のように、際立ったフルーティーフレーバーを生まれ持ったコーヒーがもてはやされるようになります。

当時、パナマ以外での栽培が難しかったゲイシャのようなフルーティーなコーヒーを作りたいという想いと、偶然が重なって生まれたのが「アナエロビックファーメンテーションプロセス」です。
アナエロは、賛否両論ありますが、ある意味発酵プロセスに辿り着くのは自然の流れだったのかもしれませんね。

発酵プロセスは、農園主によっては伝統を守りたいから絶対にやらないという場合も多いです。
農園自体がやりたくない場合と、商売だからなんでもやる場合、その中間みたいな場合もありますのでなんとも言えませんが、、、

コーヒーの風味とは?ってなるのもよくわかります。

ここまで話しておいて何ですが、一般消費者にこんな情報いりますか?

全然美味しく飲めないですよ。この情報。

ということで、今日はここまでにしておきます。

いつもたくさんお読みいただき、ありがとうございます。

では、また。




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