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【小説】恐るべき子ども達(1117文字)

 小さい子ども達が吊り橋の手すり部分に乗って遊んでいた。

「あははははは」
「待て待て~」
「おいおいまじかよ…」

 自分はこの子供たちを見て恐ろしいと思った。吊り橋の手すり部分なんてほとんどあってないようなものだ。
 しかも吊り橋というのは風が吹いていて揺られている。

「あははは~」
「待て待て~」

 その恐るべき子供たちは長いことを吊り橋の手すり部分に乗っかっている。おそらく5分以上は乗っているだろうか。
 長いことを見ているからなのか自分の感覚もおかしくなってきていた。
 子供たちがあんなに楽しそうにできているんだから自分にも出来るんじゃないかという気がしてきたのだ。

「よし、やってみよー」

 自分もその子どもたちの真似をして、試してみた。

「よっこらせーの! よいしょー!」

 自分も吊り橋の手すり部分に乗ることに成功した。

「うわっーこわー! でも以外と乗れるもんだなー」
「よいしょー!」
「ドーン!」

 子供達は手すり部分から降りてしまった。そしてその子供たちは恐ろしいことを始めた。

「おじさん邪魔なんだけどー!」
「落っこちちゃえ落っこちちゃえ」
「うっ、うわぁーーー!!!」

 子供たちはなんと吊り橋の上で跳び跳ねたり、手すりをものすごく揺らしたりしているのだ。

「ちょ、ちょっと待って! 危ないから! 危ないって!」
「おじさん死んじゃえー!」
「落ちろ落ちろー!」

 そしてとうとう自分は揺れに耐えることができずにバランスを崩して奈落の底へ落ちた。

「うわぁーーー!!!」
「おじさんバイバーイ!」
「じゃあねぇー!」

 自分は落ちている最中で子供たちに見下ろされながら落ちていった。そしてこの子たちは自分が落ちていくのを見ると消えていったのだ。まるで霧が晴れるように。
 そして自分は思ったのであった。あの子供たちって実は生きた人間じゃなかったんだなということに。
 そんなことを考えていたら、自分はそのまま底まで落っこちたのであった。

「はぁ…!」

 その後のことではあるが自分は奇跡的に川に落っこちて助かった。ところどころ骨が折れていたりもするが命に別状はなかった。
 自分が吊り橋から落ちた場所というのが実はかなり事故が多いところで、今まで何人もの人が吊り橋から落ちているということだった。

 自分はあの吊り橋のことについて、いくつか体験談というのを調べていった。すると、身を乗り出して奈落の底を見ていたところを後ろから誰かに押されたという話もあった。
 実際に自分が奈落の底に落ちる1ヶ月前にも事件が起こっていて死人が出ていた。あの吊り橋には何か恐ろしい者がいる。
 世間一般では有名ではないが地方の知る人知る吊り橋であった。二度とあの場所には近づかないことを決めた。

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