[小説]動物のライブに行ってみた(1236文字)
時代はかなり進化していた。なぜなら今の時代は人間だけでなく、動物たちですらライブを開くのだ。
この動物たちのライブというのがかなり人気でチケットが発売されるとすぐ完売されるといった感じなのだ。
色々と訳あって自分はチケットを入手した。早速自分も動物たちが歌うというライブに行ってみることにした。
「いやー楽しみだな」
「あの犬ちゃんと猫ちゃんがものすごく可愛いんだって」
「ふーん」
色々な会話が聞こえてくる。俄然ライブが楽しみになってきた。
そしてクソみたいに長い列に並んでやっと会場に入れた。
ライブが始まるまでの高揚感というのはものすごいものであった。
「いやー楽しみだな」
そしてスポットライトが当たっていよいよライブが始まる。ステージには動物たちがちょこんと座っていた。
狼とか犬とか猫とかとにかく鳴きそうな動物が色々いた。
「キャー!可愛い!」
「カッコいい!イケメン!」
「キタキタキター!」
ものすごい熱狂の渦だった。そして動物たちのライブが始まった。
「ワオン! ニャー! アオーン! ホーホー! ツクツクボウシ!ツクツクボウシ!」
「え… 」
何か思っていたライブとは違った。もっときれいに重なる感じで歌えるかと思っていたら、それぞれがただ鳴き声を発しているだけだった。
なんというか不協和音だ。
「わあすごい!」
「最高!」
観客の盛り上がりはすごかった。どうやら盛り上がっていないのは自分だけだった。
ここで盛り上がらないのもあれなので無理やり 盛り上がることにした。
「頑張れー!」
「おー兄ちゃん元気がいいね!」
誰よりも声を出す。やっぱりライブというのは周りの雰囲気に流されることも大事だと思うんだ。
なんやかんやでライブは終わり会場を後にする。
そして無言のまま会場の外を歩く。
「いやー最高のライブだった…」
思いの他ライブが良くて喜びを噛みしめていたのだった。
「このまま帰るのもあれだし、この後どっかで飲みに行こうぜ」
「いいね」
「ふーん」
ちらほらとライブ終わりの 打ち上げ 的 どうする 声が聞こえてくる。
「あの良かったら、あなたもこの後の感想会に参加しませんか?」
「え、僕ですか?」
後ろから声をかけられた 少し悩んだが行くことにした。
「では、お願いします」
自分も参加することになった。そして何人かで居酒屋的なところに入る。
「それでね、あの犬ちゃんがとっても可愛かったんだよ」
「ツクツクボウシも最高だったよな」
「アハハ…。そうですか…」
自分は一方的に動物たちの良さを話されただけなのであった。
しかし、最初は乗り気ではなかったものの酒が進むに連れてどんどん感想会を盛り上がった。
「いやいや、ツクツクボウシがマジで最高でしたわ!」
「お前にもツクツクボウシの良さが分かるか! 親友だ! ガッハハハ!」
なんやかんやで楽しくライブの感想を語り合えたのであった。
次回も機会があるんだったら動物たちの合唱ライブに参加したい。
そして気分良く家に帰っていたのだった。