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【小説】全力失踪(1115文字)
自分は全力で失踪することに決めた。あの地獄のような学生寮にはもう戻りたくない。何から何まで本当に厳しい。朝起きるのは早いし鬼みたいな教師が、わんさかといる。
治安も衛生環境も最悪で何人も病気になって死んだやつもいるし、暴行で死んだやつもいる。だが、あの学校は法律なんて一切効かないのだ。弱肉強食のような世界だ。
自分は早速学校から脱走して外の敷地に出た。もう1度でも外に出たからには絶対に見つかってはならない。もしここで見つかって連れ戻されたら今までよりも更なる地獄になるだろう。殴られたり罵声を浴びさせられたりして精神と肉体の両方が磨り減って死んでしまうかもしれない。
「ゴラァー!絶対に逃がさんぞゴラァー!例えお前が地獄の果てまで逃げようとも絶対に見つけて半殺しにしてでも連れ戻す!」
どうやらもう脱走したことに気付いたらしい。すぐに追っ手がやってきたようだ。そして学校では生徒が脱走したということでサイレンがなる。サイレンが鳴るということは寝ていた生徒達が起きてしまうということだ。もし連れ戻されれば明日先輩や同級生に寄って集ってサンドバッグの刑に処されるのだ。
「クソッ!何でこんな学校に入っちまったんだよ!」
自分は頭が悪すぎてこんな学校にしか入ることが出来なかったのだ。こんなに辛い想いをするなら、苦手な勉強を辛い想いをしてでももっと勉強すれば良かったと何度後悔したことだろうか。
自分は林の茂みに隠れながら上手くやり過ごしていく。
「ワンワン!」
犬が登場してきた。自分の匂いを辿って見つけようしているらしい。自分はすぐに移動を迫られることとなった。
「クソッ!何であんな警察犬みたいなのまで出てくるんだよ!」
自分は山の斜面を転がり落ちていく。身体中が傷だらけだ。いくら傷付こうが自分はひたすらに走り続けた。
この学校はかなり標高の高い山の中にあるのだ。下界にある街とは一切の交流が遮断されている。まさに刑務所と呼ぶにふさわしい学校だ。
交通機関を使うとおそらく鉢合わせする可能性があるので、ひたすら山の中を走った。
自分は一体どのくらいの時間を走ったのだろうか?もうひたすら走り続けている。逃げたくて無我夢中にひたすら走った。今ならフルマラソンに出て優勝出来そうな程には走った。
自分は完全に失踪扱いとなっただろう。実家にも帰ってないので多分どこかで野垂れ死んだと思われているだろう。
数ヵ月後、自分は寮のある仕事場で働かせてもらっている。社長は事情も聞かずに自分を受け入れてくれた。今やっている仕事はバリバリの肉体労働でなかなか辛いがあの刑務所のような学校に比べたら断然マシだった。
とりあえずは当分ここで仕事をやって人生の再起を図ろうと思う。