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【小説】追いかけてくる花火(1246文字)
今日は花火を見に来ていた。今ごろ会場にはものすごい人数がいるに違いないのだ。会場に人が多すぎてぎゅうぎゅう詰めという感じだと思う。
なので自分しか知らないエリアで今は花火を始まるのをワクワクして待っている。
「それでは今から夏の夜空を彩る花火が打ち上がります。カウントダウン5・4・3・2・1・0!」
遠くの会場からアナウンスが聞こえてきた。そして何発か花火が打ち上がった。
ヒューーーーーードンッ!
「うわーキレイな花火だなぁー」
最初は普通に花火を見ているだけだった。しかし花火をずっと見ていると少しずつある異変に気づいた。
「あれっ、花火がちょっとずつこっちに近づいてきてないか?」
夏の夜空にうちが上がっている花火が少しずつ打ち上がっては消えてを繰り返して、こちらへと向かってくるのだった。
「おいおいおいおい嘘だろ!?」
そして花火は全て自分のほうに向かってきた。明らかに狙われている。
「うわーこれはヤバい! 逃げろ!」
ヒューーーーードンッ! バンバンッ!
「ふざけんなよ何でこっちに来るんだよやばいってこれマジで!」
そして花火は逃げても逃げても追いかけてきた。さすがの自分も死を覚悟していた。
花火には鎮魂の祈りに似た思いも込められているようだが、このままでは自分が祈られる対象になってしまう。
「なんでこんなことになってるんだ!」
人の心を何色にでも彩ってくれる夏の思い出になるはずの花火が兵器と化してしまった。
「今のはマジで危なかった! やべーってマジで!」
なんと花火が自分の足元で着弾したのだ。服がちょっとだけ焦げた。これが直撃したらどうなるのか考えただけでも恐ろしい。
しかも一発のみならず、連発でこちらに向かってくるというのだから恐ろしい。今頃、花火大会の会場の人たちはどう思っているのだろうか。
花火が夜空に打ち上がるのを楽しみにしていたはずなのに花火が急にどこかへと消えていくのだ。
「こうなったらみんなに花火を見せてやる!」
花火を見せたいと思って花火会場の方へ走ることを決意する。自分はとにかく一生懸命走った。
そして花火会場を付近に辿り着いた。するとみんなは自分を見てものすごく驚いていた。
「えっ?」
「えっ?」
自分は一瞬わけがわからなかったがすぐに理解はすることができた。この花火大会はもともと自分が花火に追いかけられている姿を見て楽しむためのものだった。
その証拠に会場には大きなスクリーンがあって自分の姿をずっと映していた。これには自分もぶちギレた。
「こうなったらみんな道連れにしてくれるわぁ!!!!!!!!」
自分は花火会場にいる人たちめがけて突っ走っていく。
「うわぁーーー!!!」
「やめろーーー!!!」
「近づくなぁーーーー!!!!」
「うるせぇーーー! みんなして俺を笑いやがって! 次は俺が笑う番だぁーーー!!」
「うわぁーーー!!!」
「きゃーーーーー!!!」
その日の花火大会は何人もの死傷者を出した大事故となったのであった。そして自分はちゃっかり生き残った。