見出し画像

【小説】休日なのに会社に怒られた話

 今日は休日に設定されていたのに職場からなぜか電話がかかってくる。

「あ、はい。タケッピーですが。休日になんのようですか?」
「今日は伊予市に勉強会行くから免許持って集合って言ったよな? 」
「え?」

 一気にサーっと血の気が引いた。たしかに今日は休日のはずなのだが、もしかして自分が間違ったのだろうか?

「今何時だと思ってる」
「え、あ。15時です」
「あ、15時です。じゃないんだよ! バカか!」
「す、すいません」

 もう訳が分からなかった。

「ちょっと局長に電話変わるわ」
「あ、はい…」

 局長って誰だろう?

「あ、もしもしタケッピーさん?」
「はい、タケッピーです」
「お疲れ様でーす」
「あ、はい。お疲れ様です」
「早速なんだけど、これまずい状況なんだよね」
「え?」
「もう僕たち行っちゃったんで。このようなことが起こってしまったのはしょうがないことではあるんだけどぉ」
「はい」
「まあ次回には今後の進退について話すことになったからね」
「え? え?」

 休日なのに仕事みたいな予定が元々入っていたらしい。そもそもそんな話を事前に聞かされていなかったのだ。
 もうめちゃくちゃ冷や汗が出まくりだった。しかも今後の進退とか脅しをかけられた。

「それじゃあ今回はしょうがないですね。切りまーす」
「えっ、あっはい…」
ぷーぷー

 着信は切れた。そして予定表を見てみると小さく勉強会と書いてあった。もうこの仕事は続けられないかもしれない。

「あー人生終わったわ…」

 入ってまだ1週間の仕事だけど、もう今後の進退の話が出るなんて終わってるよ。でも社会人に出たら小さくて勉強会の予定が見えませんでしたなんて通用しないんだろうなー。
 本当に社会やめたいよ。それに休日なんだから普通は休みだと思うじゃん。

「あぁ、どうしよどうしよ…」

 いや、待てよ。そもそもこの仕事は本当にやりたい仕事なのだろうか? 入って早々こんなしくじりをしたけども、非は向こうにもあるのではないのだろうか?
 そもそも勉強会が全員出席なのかも分からないし、小さすぎて見えないし告知もないし。

「よし、こんな仕事なんて今すぐにやめよう!」

 自分はこの仕事をやめることを決意したのだった。後日すぐに退職届を持っていく。そして上司と話し合いになった。

「いやいやいや! やめられたら困るよ!」
「えっ、でも」
「入る時にずっと長くいることが条件だったでしょ?」
「え、はぁ…」

 まさか引き止められるとは思わなかった。

「どうしたの急に? なんか辛いことでもあった?」
「え?」

 急にイラッとしてきた。辛いことの原因を作った本人が目の前にいる。そして本人は何も分からないようだ。

「とにかくもう辞めますので」
「いやいやいや、考え直そう! ね! あと1日考え直そう!」
「はぁ…。分かりました」

 なんとか丸め込まれた。こんな自分が情けない。

そして次の日
「ゴラァ!」
「す、すいません…」

 いつものごとく上司に怒られていた。そして誤るだけの自分。それからは相変わらず上司から文句を毎日言われるが仕事をこなす。
 そしてなんやかんや話し合って進退についてだがクビはないものの昇給は一切ないということになった。
 やっぱり辞めようと再決意をして退職届を出す。

「いやいやいやいや、考え直そうよ!」
「いや、この仕事正直続ける意味がないかなーっと思って…」
「えっ、なにそれ?」

 上司にスイッチが入る。

「お前仕事なめとんのか!」
「ひぃぃぃぃ! すいません!」
「すいませんじゃねぇ! いっつも謝りやがってよぉ! こちとら人手足りなくて忙しいんじゃ! それなのに続ける意味がないとかごちゃごちゃ言いやがって! ゴラァ!」

 怖かった。でもムカついた。

「ちょっと、それは言いすぎじゃないですか!」
「何が言いすぎや!」
「もうやめます! こんなところで仕事なんて出来ません!」
「なんだとぉ! てめぇぇぇ!」
「そんなんだから人も少ないんですよ! こんなおかしい仕事も早々ないですよ!」
「クソ! ブフッ! 痛いところつきやがってぇい!」

上司は怒りと笑いで交差する。気持ち悪い。

「とにかく今日限りでやめます! さようなら!」
「おい、ちょっと待てい!」

 強制的に切り上げた。

「ふぅー、スッキリした!」

 仕事を勢いでやめたけど、何か胸の中がスカーっとした。明日からどうやって生きていくのかは分からないけど、今はこの仕事を辞められた気持ちの良い余韻に浸っていよう。

いいなと思ったら応援しよう!