【小説】永遠の時の中で懺悔
ここは一体どこなんだろう? 自分は何も思い出せないただ暗闇の中で漂っている。どのぐらいの時が流れたのかもわからない。ただ空間に漂っているだけ。
前に進んでも本当に進んでいるのかどうかは分からないし、そして後ろに下がっても本当に下がっているのかわからない。そもそもどちらか上下なのか左右も何もわからない。
自分を一体どうしてしまったのだろうか? ただし、一つわかることがあって何となく動いていることはわかるのだ。だがそんな時だった。
「…!?」
暗闇にただよっているはずなのに急に動けなくなった。いくらもがいても動けない。はっきりと動けないっていうことがわかる。すると、暗闇の中からいきなり目が現れて凝視されている。
「ギョロギョロ」
「うわーーーーーーー!!!!!!!!」っと声を出しているつもりだけど声が全く出ない。きっと何かの禁忌に触れてしまったのかもしれない。
しかし何の禁忌に触れたのかわからない。そもそも自分ははこの謎の暗闇に入ってしまった時点でもすでに詰んでいるのかもしれない。目が現れた瞬間にはっきりと動けなくなった。
凝視されていることによって何か動けない効果があるのかもしれない。でもこれで終わるんだったらもうそれでいいやとも思った。こんなわけのわからない暗闇で未来永劫を生きるぐらいだったら、いっそあの化け物に終わらせて欲しい。
でも結果はそれと逆なものになった。あの目に縛られてから未来永劫の時を生きなければならなくなったのだ。そもそもここには時間の概念があるのかもわからないけど、あいつに見られて動けなくなってからもう何年間も時が経ったような気がする。
何もできずに動けないというのがものすごく苦しい。本当に気が狂いそうだ。もしも地獄というのがあったらこれも地獄なのかもしれない。永久の時を何もできずに生きるというのは十分罰に値する。
死なせてくれたらどれだけ楽だろうか。自分はそんなことばかりを考えるようになった。自分はこの空間にたまたま迷い込んだだけなのか、はたまた前世で何か悪いことをしたのかはわからない。
何を目的としているのかもわからないからなおさら怖い。体が一切動けないのに頭がはっきりしていることほど怖いものはない。そうなんだ、あいつに見られてからなんか頭の靄が晴れて、はっきりとクリアになってきた。
「ギョロギョロ」
たしかに自分は生きている間になにか悪いことをしていたのかもしれない。忘れているだけでものすごい罪深いことをしていたのかもしれない。
きっとそれが当たり前すぎて1つ1つを忘れていただけなのかもしれない。自分は未来永劫、自分自身と対話して過去を1つずつ忘れ去られた罪を思い出していく作業に入ったのだった。
そう、永遠の時間をかけて忘れた罪を懺悔する。
~おわり~