こういう話、よく聞きますよね。
旦那が死んで人生開花した。
嬉しそうに語るのは齢94歳の女性。
年輩者が集う老老会議で
赤裸々に亡き夫との過去を語る。
生前の夫との生活は
楽しいと思ったこともないし
一緒に語り合おうと思ったこともない。
亭主関白で自分勝手。
都合の悪いことはすべて
主婦であるわたしに押しつけた。
碌でもない奴だったけど、
この歳まで生かしておいてやった。
何度毒を盛ってやろうとキッチンに立つが、
あることが何時もわたしを制御してくれていた。
この男の年金だ。
当時の年金額は破格によかった。
今死なれたら、我慢してきた努力が無になる。
いつもそう言い聞かせていた。
都合がいいところまで生きてもらって、
あとはあの世に行ってもらえばいい。
20年以上我慢してきたそうだ。
旦那に毒を盛る方法知ってるかい?
嬉しそうに語りかける。
いや、毒なんて盛ったらすぐにバレるからやめなよ。
すぐ側にいる70代の若輩者が止めにかかる。
覚えておくといいよ。
絶対にバレることがない毒の盛り方を教えておいてやるよ。
自慢げに語り出す。
それはだね、醤油だよ。
醤油はね、
腎機能を奪って大人しくさせるのに最適なんだよ。
疲れやすくなったり、
体調が悪いとガミガミ騒がないからね。
鬱陶しい旦那がいたら、
毎食少量の醤油を混ぜてやればいい。
気づかないうちに大人しくなってるから。
これはね、炊事場に立つ女の特権なんだよ。
旦那を生かすも殺すも
わたしたちが決められるってことよ。
94歳とは思えないハツラツとした声で
60代、70代の子ども世代を圧巻させる。
旦那がなくなったのは89歳のころ。
それまでは顔はしわくちゃ
声の抑揚もなく
顔前面に死相が出ていた。
背中は曲がり
一日中部屋に閉じこもっては
よしな仕事をしていた。
旦那が亡くなってからは
積極的に外出するようになった。
食事も自炊するようになり
スマホも新調した。
最近の若者が好む映画を見たり
ラノベにも興味を示している。
姿勢もよくなった。
絵画をしたり
文章を書いたり
アプリでゲームもしている。
長い足枷人生から解放されて
やっと自分の人生を送れるようなった。
彼女の青春は今なのだ。
・・・
あの婆さん、はやくあの世に行ってくれないかな。
そうボヤくのは彼女の長男。
介護もそろそろ限界なんだよな。
口うるさいし
お金の面だって楽じゃない。
わがまま言いたい放題で
貯金もないくせに
大きな買い物もしたがる。
俺にも俺の生活があることを
理解してほしいのだが。
誰のせいで離婚することになったのか。
誰のせいで自己破産しなければならなかったのか。
いつになればこの親子の縁を
切ることができるのか。
炊事場に立つ長男は
母親の料理に醤油を混ぜる。
俺の人生が輝ける日はいつなのかと。
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