お正月の暮らしって、いつか家族が欠けると思うと感慨深いよね。
元旦の朝。
降り注ぐ冬の光。
重くのしかかる、布団の魔力。
「お母さん、起きてよー!」
長女が布団を引っ張りながら叫ぶ。とらねこはまだ寝正月を満喫したい気分だったが、家族の喧騒がその夢を容赦なく壊していく。
時計の針は10時を指していた。
冷めたコーヒー。
昨日の夜に準備したはずのおせち料理。
だが、重箱の中は既に空っぽ。
長男が昨日のうちにフライングしたことは明白だった。
「おせち、うまかったわー。昨日彼女と遅くまで話したから腹減っててさ!」
能天気な長男の告白。
食い尽くされた正月料理。
何も言えずに笑うしかないわたし。
元日の午後。
夫が提案したのは、まさかの焼肉だった。
「正月くらい、贅沢してもいいだろう」
「いいの、焼肉!?やったー!」
目を輝かせる長女と次男。
その横でニヤリと笑う長男。
財布を握る夫の決断。
お年玉を握りしめる子どもたちの歓喜。
家族で向かう、いつもの焼肉店。
元日だというのに賑わっている。
焼肉店のテーブル。
ジュージューと焼ける肉の音。
笑顔を浮かべる子どもたち。
長男は昨日のデート話を得意げに語る。
「俺、今年は彼女と初詣行ったんだよ。もう成人に見られちゃったけど!」
「どこがだよ!」と即座に突っ込む次男。
長女は焼けたカルビを器用にひっくり返しながら、兄弟たちの会話を楽しそうに聞いていた。
賑やかな声。
香ばしい煙。
ひとときの家族の団らん。
焼肉の帰り道。
店を出た瞬間に響く寒風。
だが、子どもたちの笑顔は変わらない。
「今年は何買おうかなー」
次男がお年玉の使い道を真剣に考え始める。
「私はゲームソフト!あと可愛い文房具!」
長女はすでに目を輝かせている。
長男は少し大人びた顔で、
「俺は貯金だな。彼女とのデート代もあるし」
そう言いつつ、笑うその顔に満足感が漂う。
家に帰り、こたつに潜り込む子どもたち。
夫はテレビをつけて野球の特番を見始める。
わたしはキッチンでゆっくりと片付けを始める。
ぬくもりに包まれるリビング。
疲れた体を癒す、こたつの力。
正月の終わりを感じる静けさ。
夜、子どもたちはお年玉で遊ぶ計画を立てて盛り上がる。
「映画行こうよ!」「それよりショッピングモールで!」
声をあげる長女と次男に、長男が「俺は節約な。」と冷静に提案する。
家族の中に流れる穏やかな時間。
今年も始まる日常。
小さな幸せの積み重ね。
翌日、朝日が差し込むリビング。
こたつに入りっぱなしの長女と次男。
長男は自室からスマホ片手に降りてくる。
「兄ちゃん、昨日から彼女とLINEしてるんでしょ?」
長女が目をキラキラさせながら問い詰める。
「な、なんで知ってるんだよ!」
長男の焦り。
正月早々始まる、兄妹間の攻防戦。
「兄ちゃんがスマホ握ってニヤニヤしてるの、絶対彼女の話でしょ!」
的確に刺す長女の推理。
「違うっつーの!」と叫びながら、長男はスマホをポケットにしまう。
その様子を見ていた次男が、こたつの中からぼそっと呟く。
「大人になったつもりでも、兄ちゃんはバレバレなんだよなー」
ニヤリと笑う次男。
長男は「お前ら、ほんとに性格悪いぞ!」と顔を赤くして言い返す。
その頃、キッチンでは夫がコーヒーを淹れながら、わたしに耳打ちをしてくる。
「あいつ、昨日デートで使い果たした分の金、もうお年玉で補填してるみたいだぞ」
「まあ、まだ若いからね。仕方ないでしょ」
苦笑いを浮かべながら、昨日の焼肉のレシートを思い出す。
正月の我が家。
どこかで感じる、小さな経済危機。
それでも消えない家族の笑顔。
昼食はどうするか。
重くのしかかるこの問題に、また夫が提案する。
「そろそろ鍋でもするか?あったまるし。」
鍋という提案。
意外な静けさに包まれるリビング。
子どもたちは顔を見合わせ、そして一斉に声を上げた。
「餃子鍋がいい!」
驚きのリクエスト。
突然の家族の一致団結。
いつの間にか決まっていたメニュー。
買い出しに行く夫と長男。
こたつで待機する長女と次男。
わたしはその間に、部屋の掃除を始める。
静かな午後。
ちらちらとテレビで流れる新年セールのCM。
幸せそうな子どもたちの声が響くリビング。
夜には餃子鍋を囲む我が家。
湯気が立ち込める中、子どもたちは満足そうに餃子を取り合う。
「俺が作ったやつが一番美味い!」
長男が得意げに言うが、次男がすかさず突っ込む。
「それ、冷凍餃子だから!」
家族の笑い声。
温まる食卓。
正月の終わりが近づく予感。
そして夜。
長女と次男はこたつで眠り込み、長男は再びスマホを握りしめる。
夫はコーヒーを片手に新聞を読み、わたしは洗い物を済ませた後、ソファで一息つく。
静けさが戻ったリビング。
正月の夜の余韻。
平凡な幸せを感じるひととき。
正月という特別な日々は、こうして終わりに近づいていく。
だが、この小さな喧騒や笑顔、湯気に包まれた食卓は、きっと何年経っても忘れないだろう。
家族の絆。
怠惰と幸福が織り成す日常。
明日から始まる新しい一年の、静かな序章。
再来年からは次男、そして3年後には次男、さらに3年後は長女。
家から子どもたちが巣立っていくと思うと、大切にしたい正月休みだ。
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