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文豪への誘い:30代は始まる前から終わっていた
とらねこと一緒に小説を書きませんか?
以前公開していた「文豪へのいざない」を復活させようと思います。
テーマに沿って、エッセイや小説を書く企画です。参加は自由です。
■テーマ
30代は始まる前から終わっていた
この時期に掲げる目標次第で人生が大きく好転します。人生を会社勤めで終わらせていいのか。本当にやりたいことは何か。今一度整理してみると面白いかも知れません。ぜひ参加してみて下さい。
■参加条件
・文字数 300文字~6000字程度
・ジャンル 小説/エッセイ
・#文豪へのいざない をつける
私もこのテーマに沿って書いてみました。25歳から44歳までのY世代の挑戦。就職氷河期、金利上げ、リーマンショック、コロナウイルスなど様々なハードルを乗り越えてきた世代でもあります。あなたの貴重な経験を小説やエッセイにしてみませんか?
「ねぇ、気づいた?私たち、30代になる前からもう終わった感、出てない?」
高橋悠斗(たかはし ゆうと)は、何気なくそう言った。私たちのグループは大学を卒業して数年が経ち、社会人生活に慣れつつあった。悠斗はいつも無愛想で、少し冷めた目線を持っているけど、たまにこんな不意に鋭いことを言う。
「本当に終わったと思う?」と私は返す。私、田中未来(たなか みく)は、心のどこかで思っていた。“大人になるって、こんな感じなんだろうな”って。
だって、社会人って言ったって、結局は日々のルーチンに追われて、なんとなく流されるだけ。それが30代に突入する前からもう始まっていた気がして、心が少しだけ重くなる。自分で何かを成し遂げたという感覚もなく、ただ、日々をやり過ごしているだけのような気がしたから。
それから1週間後、私たちは再び集まった。今度は、小学校からの友達、佐藤亮(さとう りょう)も一緒だ。彼は常にポジティブで、みんなのムードメーカーだけど、最近は少し違う気がしていた。あの笑顔の裏に何かを隠しているような…。
「成人式、あっという間だったよね。あれから10年経ったんだって思うと、ちょっとゾッとするよ。」亮がぽつりとつぶやく。
「ほんと、それが現実だよね。」私がうなずく。あの日、みんなで写真を撮ったり、未来に向けての夢を語り合ったりしたけど、その後に何が起こったか、あまり思い出せない。
今、私たちは本当に自分たちが描いていた未来にいるのだろうか? 過去の自分と今の自分は、どこでどう変わったんだろうか?
ある日、私は仕事帰りに悠斗と偶然駅で再会した。彼はサラリーマンとして毎日忙しく働いているが、どこか消化不良の顔をしていた。
「なぁ、未来。最近、これって本当に自分のやりたいことなんだろうかって思うんだ。」悠斗がぽつりと言う。
私は少し驚く。悠斗は、昔から優秀で、何事にも真面目に取り組んでいるタイプだった。でも、そんな彼が疑問を感じているなんて。
「それって、今の仕事に不満があるの?」と私は聞く。
「うーん、違うんだけど。でも、なんかこう、毎日が同じことの繰り返しで、自分が何をしてるのかよくわからなくなっちゃうんだ。」悠斗が言った言葉には、どこか解放感を求めるような気配があった。
「でも、私たちって、もう30代が見えてきてるじゃん。なんか、無駄にしている気がしてさ。」私は答える。
その後、私たちは自分の「未来」について真剣に話し始めた。悠斗も、亮も、それぞれ自分が抱える不安や焦りを打ち明けてきた。私も同じように、思っていた。
「結局、私たちって、社会に合わせて生きることに必死で、本当の自分を探す暇がなかった気がする。」と私は言った。
そのとき、亮が突然立ち上がって言った。「もう決めた。僕、会社辞めるよ。」
驚きと同時に、みんなが一瞬黙った。亮が本気で言っていると気づくのに少し時間がかかった。でも、そんな亮の目は、確かに輝いていた。
「どうして?」と私は聞く。
「僕、これから自分の夢を追いたいんだ。まだ間に合うかなって。30代なんて、まだまだ始まったばかりだよ。」亮は少し照れながらも、にっこりと笑った。
その後、私たちはそれぞれの道を歩んでいく決意をした。私も、新たなチャレンジをするために小さな一歩を踏み出した。悠斗も、自分が本当にやりたい仕事に転職する決心をした。
亮の言葉通り、30代は「終わり」ではなく「始まり」だった。そして、私たちはこれからが本当の意味での人生のスタートだと感じるようになった。未来は、まだまだ手の中にあるのだと。
数ヶ月後、私たちはそれぞれの新しい生活に少しずつ慣れ始めていた。亮は、会社を辞めて、自分の夢を追う道を歩み始めた。彼の行動は私たちに大きな影響を与えた。それは、たとえ不安であっても「自分の人生を生きる」という選択ができるということを教えてくれた。
ある日、亮が言った。「俺、やっぱり夢を追って良かったと思ってる。毎日が楽しみだ。もちろん、上手くいかないこともあるけど、それを乗り越えたときの達成感が何にも変えられないんだ。」
彼の言葉に、私たち全員が感化された。そして、次に私が決めたのは、今の仕事にしがみつかず、もっと自分に合った道を探し始めることだった。
私は、ずっと興味があったイラストの世界に飛び込むことに決めた。最初は不安だった。自分にはその才能があるのか、今から始めても遅くないのか…そんな迷いが常に頭をよぎっていた。
だけど、亮や悠斗の姿を見ているうちに、次第に気づくことができた。「何かを始めるのに遅すぎるなんてことはない」ということ。むしろ、今の自分にできることを全力でやらなければ、何も始まらない。
私は、夜遅くまで絵を描き、オンラインで自分のイラストをシェアしていった。最初は反応がなかったけど、少しずつコメントやいいねが増えていった。それが励みとなり、私は少しずつ自信をつけていった。
ある日、悠斗と久しぶりに会うことになった。彼は転職してから、どこか以前の冷めた印象から少し変わったように見えた。
「未来、どうしてる?」悠斗が聞いてきた。
「うーん、毎日が挑戦だよ。でも、まだ正直、迷ってる部分も多いかな。」私は少し肩をすくめて答える。
「それが普通だよ。」悠斗が少し笑って言った。「俺も、転職してからすごく悩んだ。今でも、これが正解かどうかはわからない。でも、後悔しないように、自分のやりたいことを追いかけるのが大事だと思う。」
その言葉を聞いて、私は心の中で少し楽になった。迷うことは当たり前だ。それを恐れずに、進んでいこう。そう決心した。
私たち三人は、再び集まった。今では、それぞれの道を歩みながらも、いつでも支え合える存在になっていた。
亮は自分の夢を形にし、悠斗は新しい職場で満足のいく仕事を見つけ、私は自分のイラストで少しずつ認められ始めていた。私たち全員が、以前のように「これでいいのか?」と悩むことは少なくなり、それぞれの道で進んでいくことを選んだ。
最後に、私がこう言った。「私たち、まだ30代始まったばかりだね。これからもっともっと、やりたいことをやろう。」
亮も悠斗も同じように微笑んでうなずく。私たちはまだ歩き続けている。30代が始まる前から終わっていたと思っていたあの頃が嘘みたいに、今ではそれぞれが新しい未来に向かって一歩ずつ進んでいる。
それから数ヶ月後、私はようやく自分のイラストでいくつかのプロジェクトに参加できるようになった。最初は小さな案件から始まったけれど、着実に自分の仕事を増やしていくことができた。しかし、安定し始めたとき、また別の不安が襲ってきた。
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