学生が突然真面目に勉強し出したら日本経済は崩壊する!?
大学生の授業出席率の変化
わたしが教えていた大学の学生の授業出席率の変化についてふと思い出しました。1990年代に日本の大学で教え始めたころは、学生の出席率は約40%でしたね。これは出席簿を使用しない場合の出席率です。すなわち、学生が自発的に授業に出てきた割合です。当時は、加えて「たとえ授業に出なくてもゼミには必ず出席する」という不文律がゼミ学生たちの暗黙の了解だったように思います。
それが、27年後に大学を定年退職した時には、自発的な出席率は10~20%程度に下落していたと思います。しかも、ゼミにも慢性的に欠席する学生が出現してきました。おそらく、これは一つの大学に限ったことではなく、日本全国の大学に共通して観察できる現象だと思われます。この変化が日本の「失われた30年」と見事に一致しているのは単なる偶然でしょうか?それとも何か関連があるのでしょうか?みなさんちょっと考えてみてください(これは重要な問題ではあるのですが、ここでは深入りしません)。
授業よりバイト優先
それでは、学生たちは授業やゼミに出ないでいったい何をしていたのでしょうか?もちろん(デートしていたケースもあるかもしれませんが)、多くはバイトです。授業料を稼ぐためにバイトしていた学生については理解できます(もっとも授業に出ないで授業料を払うためにバイトするのは少し矛盾しているように思われますが・・・この問題もここでは深入りしません)。
しかし、遊びのための金を稼ぐためならばなんといえばよいでしょうか?なにか目的を間違えているような気がしますけれど。
もっとも、学生の立場からのひとつの反論は、バイトの経験は社会勉強になるというものです。しかし、ほとんどの学生は卒業して企業に就職したら、いやでも毎日働かなければならないのです。いやでも、強制的に社会勉強させられるのです。大学生は大学にいるときにかできないことをした方がよいのではないでしょうか?その方が人生にとってもっと価値のある時間の使い方だと思いますが、どうでしょう。
実際、社会人になってから大学でもっと勉強していればよかった、と思っている人は多いに違いありません(そういう話をときどき聞くことがあります)。
学生が突然真面目に勉強し出したら日本経済は崩壊する!?
さて、ウオーミングアップはそれくらいにして、本題に入りましょう。わたしは、以前、もし日本の大学生が突然真面目になって、バイトをやめて授業に出席するようになったら逆に大変なことになると考えていました。
なにが大変かというと日本経済に対する大きな悪影響です。すなわち、百万人以上の学生アルバイトが労働市場からいっせいに引き揚げたら日本経済は大変なことになる!下手すると、日本経済の成長率が数年にわたりマイナス成長になるのではないと危惧したわけです。
若い労働者不足と名目賃金の上昇が多くの企業の利益を直撃することでしょう。確かに、短期的には、労働者不足が起き賃金が上昇する結果、企業収益は下落し日本経済には大きなマイナス効果が生まれることは間違いないでしょう!
短期ではなく長期的視点から見ると
しかし、短期的な逆説的な結果はとても面白いのですが、次のような長期的な結果を強調した方がよいだろうと考えるようになりました。すなわち、もし日本の大学生が真面目に大学で勉強し始めたら、長期的には日本経済にプラスの効果が生まれることになるだろう、と。
なぜならば、より優秀で能力のある労働者が日本経済を支えることになるからです。労働生産性が上がり実質賃金が上がり、多くの単純労働は機械化され、日本経済は欧米先進国並みの2%に近い実質成長率を実現できるのではないか、と思うようになりました。
やはり学生が勉強するのは日本経済にとって良いことだ!
それはそうでしょう。直感的に考えても、真面目に学習した優秀な労働者が増えれば労働生産性の上昇とともに一人当たりの労働者所得が上昇するし、優秀な労働者を獲得できた企業には多くのイノベーションが起こるでしょう。そうなれば、長期的には経済全体にプラスの効果が生まれるのは当たり前ではないでしょうか。
これは、経済学ではよく起こる「短期ではマイナスの効果が発生するが、長期ではそれを超えるプラスの効果が生まれる」という典型的な経済学のケース・スタディのように思われます。だれか卒論のトッピックにしてみたい(真面目な)学生いませんか?