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45「MとRの物語(Aルート)」第三章 8節 メガネっ子解放

メガネっ子と書いたり女神と書いたり神と書いたり。
不統一なせいで、分かり辛かったらすみません。
またまた、あらぬ方向へ向かい始める第三章。

(目次はこちら)

「MとRの物語(Aルート)」第三章 8節 メガネっ子解放

「どうでもいいが……」、Mが言った。
「その女の子の身体は、お前自身のものか? それとも借り物なのか?」

メガネっ子、の身体を持った女神が答えた。
「もちろん借り物。あなた達の様子を観察していたら、
 この子がRちゃんの後を、ずっと付けていたものだから、
 ついでに身体の中に、隠れさせてもらってたの」

「え? なんで? ストーカー?」Rが驚く。

「さあ? 心は読んでないからわからないけど、
 Rちゃんと友達になりたいんじゃないかしら」

「ともだち!!」
Rの顔が少し赤らんだが、暗くて女神とMは、気づかない。

「私もどうでもいいんだけど」女神が言って、遠い空を見つめる。
「人ばらいをするのも疲れてきたんだけど、どこかいい場所ないかしら?」

「ない!」Mが言った。

女神の言っている「いい場所」というのは、誰に見られることもなく、聞かれることもなく、3人でゆっくり話が出来る場所、ということだ。今の東京に、そんな場所などあり得ない。人が多くてうんざりさせられるか、犯罪者の巣窟のような、危険な暗がりのどちらかだ。

「相談する場所? 学校の図書室は、どうかな?」

「学校にも監視カメラや警報装置があるからな。無理だろう」

「そうね……。まあできなくもないけど、ちょっと面倒ね。
 あ、Rちゃんの身体の中なんて、どうかしら?
 きっといい匂いがしててあったかくて、居心地よさそう」

「ええ? Mさんだけじゃなくて、女神さんまで?」
Rは少し迷惑そうな表情を見せたが、その声は少し楽しそうだ。

「駄目だ。Rにも、Rの母親にも、これ以上迷惑はかけられない」

「あらそう。じゃあ成仏の話も、聞いてあげられないわねえ」

メガネっ子は、ぷい、と横を向いた。ふくれっ面がかわいい、とRは思った。

「女神さん、いいよ。私の中で、3人で相談しましょう。
 だからその子の身体は、解放してあげてくれる?」

「さすがRちゃんは、優しいわね。Mとは大違い。
 いいわ。でも、この子の身体から抜ける時は、
 記憶を消させてもらわないといけないから、
 もう少し安全な場所に移動してからにしましょう」

「おい、Rが許しても俺は許さないぞ!」
「Mさん、ごめんね。あと少しだけだよ、我慢してね」
「うんうん、今日のRちゃんはいい子」

Mは思う。まあ、さっきの地獄門についても、相談しておかないといけないから、ここでこのまま解散は危険だな。しょうがないな。Mは女神を警戒しながら、Rの身体に戻った。メガネっ子が暗がりに止めた自転車を押し、またがった。

「こっちよ。ついて来て」
「うん」

今日は少しだけ肌寒い。暗い神社を出て、二人は明るい商店街に向けて、ゆっくりと自転車を漕いだ。

「Rちゃん、ここで手を握って」
「う、うん……」

商店街の外れにある交番の前。Rはメガネっ子の差し出した手を握った。

「この手からRちゃんの身体に移動するから、全力でここから逃げてね。
 記憶を消されたこの子は、しばらく混乱すると思うから、
 その間に、見つからないように、そこの角を曲がってね」
「わかった……、やってみるよ」

握った手から、何かがぬるっと入り込んできたのがわかった。不快感はない。むしろ清涼感があって、ここちよい何か。身体が中から癒されるようだ。

 いいわよ、はやくその角に!

 うん。

記憶を消され、自転車にまたがってぼうっとするメガネっ子。

「あれ? え?」

辺りは真っ暗だ。いつの間に夜に……。左を見ると、灯りのともった交番の中から、お巡りさんがこちらを、きょとんとした目でみつめている。思わずメガネっ子は、ぺこりと頭を下げた。

 あたし、何やってるんだろう……。

見上げると、見覚えのある商店街の、看板。よかった、場所はわかった、帰らなきゃ。メガネっ子は慌てて、自転車を発進させた。Rはすでに、全速力でその場から遠ざかっていた。

<つづく>

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