27「MとRの物語(Aルート)」第二章 4節 右翼と左翼(未完成)

今回は、粗筋だけ。
完璧をめざして動けなくなるより、
少しでも前に進む方がいいという判断。

(目次はこちら)

「MとRの物語(Aルート)」第二章 4節 右翼と左翼(未完成)

今日もRは小説を読み、MはPCでニュースを見ている。
RがMに質問する。
「これって、ネトウヨ?」
「いや、そうじゃないな」Mが答える。

MはRに、「右翼」と「左翼」の定義を語る。

「ちなみに」Mは自分の名前で検索し、その結果をRに見せる。

「Mさん、右翼だったんだね」
「まあ、そう思われてはいるけどね。でも実はそれは誤解だ」
「誤解?」

右翼とは、その国の特権階級であり、自分達の既得権を守ろうとする者。
対する左翼とは、労働者であり自分達の権利および自由を勝ち取ろうとする者。

「俺は確かにこの国における、富裕層だった。
 だが俺がやろうとしていたのは、俺自身の既得権を
 守るための行動ではなかった。
 この国の富裕層を、既得権を持つ者たちを
 守るための行動でもなかった」

「うーん……。難しいよ。どういうことなの?」

「俺のやりたかったのは……」

Mはそう言うと、右手で集中のサインを作って、
その手を開いてRの頭に置いた。
MがMであった頃の記憶が、Rの心に流れ混む。

Mは、美しい日本語を愛していた。
それを守るために、日本が変わっていくのを、
阻止しようとしていたのだった。
それがたまたま、「右翼」の思想と似ていたに過ぎない。
Rの脳裏に、そのようなエピソードが再生される。

「それはそれで、よかったと俺は思ってるよ。
 俺の期待とは違った方向へ、日本は動いたが、
 俺の意志を確実に継いだ者達が、今の日本にはいる。
 彼らに、俺は感謝してる」

Rには、難しくて半分くらいしか理解できなかった。
だがMは知っている。
Rもまた、美しい日本語を守るために動き始めた、
一人の闘士であるということを。
Rは、得体のしれない焦燥、使命感に突き動かされ、
Mの小説を読み続けている。
Rの指は、
「豊穣の海・第二巻 奔馬」の九節、
「新風連(しんぷうれん)史話」のページを開いた。

「何これ……」

目を丸くさせて驚いたRを見て、Mは思う。
その九節こそが、二巻最大の山場。
読み飛ばすことも可能だが、
そこを読んでこそ、理解できることがある。
がんばれR。
腕組みをして、MはRをじっと見つめた。

<つづく>

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