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41「MとRの物語(Aルート)」第三章 4節 バトル開始

これのどこが純文学なんだよ、と思いながらも、
「純文学」タグを付け続ける私。

(目次はこちら)

「MとRの物語(Aルート)」第三章 4節 バトル開始

校門の近くまで自転車を押して歩いたRは、
そこで足をとめ、冷たい校舎に視線をやった。
その中央、3階建ての校舎の2階に、図書室はあるはずだった。

 大丈夫、きっと今日は、何も起こらないよ。

 うん、そうだな、確率的に言えば、たぶんそうなるだろう。

Rは図書室の窓に、視線をやった。
期待半分、不安半分。だが何かしらの破壊を望むRの気持ちには、
R自身は気づいてはいない。

 よかった。何もいないね。

 ああ……。だが、得体の知れない禍々しい何かが、
 俺達を監視していたのは事実だ。
 図書館の霊じゃないとすれば、それは何なのか……。
 神、という可能性もなくはないが、神はそんな姑息なことはしない。
 アイツなら俺達の前に、直接姿をあらわすはずだ。

 ふうううん……。
 なんだか少しづつ、興味がわいてきたよ。

 いや、今日は止めた方がいいな。
 この感覚の原因が霊であるにしろ、神であるにしろ、
 今日はいろんなことが起こりすぎている。
 R、わかるか? 人が短時間で多くの処理をなすのが不可能なように、
 時間もまた、短時間で多くのことをなすのは不可能なんだ。
 時間には限界がある。俺達は、それを知るべきなんだ。

「時間には限界がある」、というMの言葉を、正直Rは、理解できなかったが、今は従うことにした。

 うん、わかったよ。「時間には限界がある」、という言葉の意味は、
 また今度くわしく。

 ああ……。わかった、ありがとう。

Mは考える。もしこれが、神による仕業なのであるとしたら、俺とRは帰宅するまでに、神から何らかの「サイン」を受け取るだろう。だがそれはあくまで、これまでの「神」の傾向と対策であって、今回もアイツが、その暗黙のルールを守るとは限らない。それが俺とアイツのバトルの厄介な所でもあり、最高に楽しい部分でもあるのだ。さて、今回はどうなのか?

 Mさん?

 うん?

自転車に乗ろうとしてたRが、不安な気持ちをMに伝えた。

 私達の後ろに、誰かいるよ。たぶん図書室の女の子だと思う……。

Mは驚きを隠しながら、背後に監視の目を集中させた。見えた……。背後に白い服につつまれた女の子が立ち、Rを見ていた。うらめしそうな目で。Mは戦慄した。それはRの身を案じてのことだ。

 俺としたことが……。
 こんなに近くに、Rに危険が迫るまで、気がつかないとは……。

RはそんなMの心配をよそに、すばやく振り返った。

<つづく>

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