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「泥の檻・改 シーン03・折目しのぶの目覚め」

ChatGPTに書いてもらった原稿が、シーン03からは全く使えないので、私がまるまる執筆。

前話はこちら。

「泥の檻・改 シーン03・折目しのぶの目覚め」

 しのぶは目覚めた。

 目覚まし時計を見ると、いつもより20分ほどオーバーしている。慌てないと学校に遅刻だ。

 それを認識して、ふっとしのぶは微笑んだ。

「いい。それでいい。人間というものは、そうでなくちゃ。時間に追われ、時間にせかされる。だからこそ人間は面白いのだ」

 しのぶはベッドから起き上がり、フリルのついたエッチな感じのパジャマを脱いで、制服に着替えてキッチンに向かった。年頃の女子高生ならば、歯磨きと洗顔、そして朝のシャワーなどは欠かせないはずなのだけれど、時間を操る悪魔、オリウスと契約を交わしているしのぶの身体は、老化もしないし新陳代謝も起こらない。つまりしのぶは、何十年何百年経とうとも、良くも悪くもつるぺたな少女のままなのだ。

 なのでしのぶは、そのまま食事もせず玄関を出て、家の周囲を囲む「結界」に歩み寄った。

 しのぶの住む丘の上の家は、しのぶの所有する隆起した土地に建っており、誰が侵入する恐れもないのだけれど、万が一を考えしのぶはそこに結界を張っていた。それはうすいシャボン玉のような球状の膜だけれども、それに触れた者は時間の流れを停止せしめられ、時間的に凍結させられるのだ。

 そんな膜を、しのぶは何重にも張っていた。常時作動しているのは家の直近の一つだけだけれど、その膜に何者かがひっかっかると、ひとつ外の膜も作動する仕組みだ。そうやってしのぶはこれまでも、侵入者、あるいは邪魔者を排除してきた。

 そして今日もしのぶは、その膜を造作もなく通り抜け、丘のふもとのにぎやかな街へと向かうのだ。

 街は今日も静かだ。この街はいつもこうだ。だから居心地がいい。これまで生きてきた250年の中で、しのぶは数えきれないほど、住みかを変えてきたけれど、こんなに静かで何事も起きそうにない場所は、これまでに無かった。それはいいことなのか、悪いことなのか、さすがのしのぶにも、わからないのだけれども。

 駅について改札を定期で通過し、ホームで電車を待つ。通勤のサラリーマンや通学の男子女子たちが、退屈そうにあらぬ場所を見つめている。

そう、それもいい、としのぶは思う。

 こういう雑然とした雰囲気と、退屈な日常。そしてそんな日常を揺るがす、突然の事故や事件。そういうものが、私たち人間の生活を、飽きさせない興味深いものにさせているのだ。さて、今日は何が起こるのか、それとも起こらないのか。

 結果、何も起こらず電車がホームに滑り込み、停まった。ふっと微笑んで、開いたドアから電車に乗り込むしのぶ。

もう、飽き飽きだ。人生にも、この世界にも。

 しのぶは思う。たかだか250年しか生きていない私が、こんなにも生きるということに、飽きてしまっている。増してや何千年と生きているはずの、時の悪魔オリウスは、どれだけ「人生(?)」に飽き飽きしていることだろう?

「私は不老ではあるけれど、不死ではない。それはとても幸せだったのかも」

 しのぶは、伏せていた目を上げた。そこで気付いた。同じ車両に式マコトとその妹、霧子がいて、楽しそうに話をしていた。ちっと舌打ちをして、しのぶは窓の外に視線を移した。たかだか十数年。そんなひよっこだからこそ、そうやって楽しく、笑っていられるのだ。でももうそれも終いだ。私がお前たちの間を引き裂き、絶望に顔をゆがませ、最後にはオリウスの餌として生贄に捧げてやる。ざまあみろだ。

 250年も生きてしまったことにより、今やしのぶは、老獪な魔女となってしまっていたが、その事にしのぶ自身は気付いていない。

 3つ目の駅への停車をアナウンスが告げ、電車が停まった。しのぶはいら立ちを振り払うかのように、足早にホームに降り、改札へと向かった。

(続く)

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