『THE FITST SLAM DUNK』の神懸かりオープニングに沸き立つ鳥肌の正体。
先日、上映が終了した大ヒットアニメ映画「The First SLAM DUNK」
私は当初、劇場で拝見するつもりはありませんでしたが
主題歌がチバユウスケ率いる「The Birthday」である
との情報を知り「なんと!しかしなぜ?」と驚き
ミシェルガンエレファントのファンであった私(解散ライブ行きましてん)は「映画館でチバユウスケの歌声を聴きたい!」と思い、 拝見して参りました。
さて私は「SLAM DUNK」はジャンプ連載時は読んでおらず、連載終了後に
コミックスで読んでおり、それ以来数年おきに読み返しております。
そしてテレビアニメは未見です。
で待望の劇場映画が制作決定し主題歌が「The Birthday」である事が発表されるやいなや、
「なんでテレビアニメのオープニング曲じゃねんだゴラア!」
というファンの怒りがSNSにて散見されました。
私はアニメ未見ですが、このファンの怒りにアグリーウィズやね、 という感じ。
これって「男はつらいよ」であの「♩ピャ〜ピャラララララ」という イントロで
始まるあの主題歌や、「ドラえもん」にて「♩タタタタタタ、タタタタタタ、タタタタタタ、タタタタン」というあのイントロで始まる主題歌を使わないのと同じ事。
「あの主題歌じゃなきゃ、寅さんじゃねえ!」
「ああ、このテーマソングを聞くと『ドラえもん』見てるって感じちゃう!」
という大切な演出です。
子供の頃、熱心に見ていたアニメのオープニングテーマって聞くだけで当時の感動とかが蘇ってグッと来る、ある種の記憶装置。
その曲を流すだけで、パブロフの犬のよだれではなくて、涙を誘発させるものです。
それを捨てるという。
劇場版の為に新たな曲を作るという。
これはある意味、大英断であると思われます。
そうして蓋を開けてみるや「LOVE ROCKETS」の音楽と共に、井上先生が描く湘北の五人が動きだす、というオープニング演出に
「かっこいい!」「鳥肌!」「オープニングだけ何百回と見たい!」
と、ファンが大喝采をあげました。つまり、テレビアニメでの郷愁を
吹き飛ばしたのであります。
テレビアニメ未見だった私もあのオープニングだけでも劇場でお金を払い 拝見する価値はあった!と思うほど、鳥肌ものでございました。
で、なんであのオープニングがあそこまでかっこいいのか?
について考えました。
(ちなみに私はミシェルも好きですが生粋のエレカシファンであったので
この大型タイアップはエレカシに担当してもらいたかった、、、とチラッと
思ったりしたのですが拝見して「これはチバユウスケで大正解!だった」と胸を熱くしております)
では、なぜか。
まず、主題歌を作るにあたり、チバユウスケはこんなコメントを寄せました。
私は上記のコメントをこう意訳して解釈しました。
「ミシェル時代から全然タイアップとかに縁がねえ俺に、なんか知らねえけど、どえらいタイアップ話が舞い込んできた。ユニバーサルの宣伝担当や 制作や事務所も「チバさん、凄いよ!これはね、連ドラ100本分の タイアップに匹敵しますよ!ミュージシャン百人にいたら、 そのうちの一組のミュージシャンに一生に一度、来るか来ないか、 そんな確率の大型タイアップですよ!」って大騒ぎ。
いやでもさ、俺、ぶっちゃけタイアップとかそういうのあんまり興味ない わけ。「歌詞にこのワードを使え」とか指示されたり、作品にあって なかったら作り直すとか面倒じゃん。 そんなの俺が歌いたい歌じゃねえしさ。
だいたい俺「スラムダンク」読んだ事ねえし興味もねえんだよ。
そもそも少年ジャンプの努力と根性の世界観がまず苦手で、俺に合わないし興味ない。だから断ったわけ。そしたらスタッフが「ふざけないで下さい!他のアーティストだったら人を殺してでも欲しいタイアップですよ!天下のスラムダンクの天下の井上先生が『The Birthday』が好きだからって頼んできたんですよ!せめて読んでから判断して下さいよ!大人でしょ!さあさあさあ!」って目血走って唾を飛ばしながら怒るし、5年前に挨拶したきりのユニバーサルの社長がわざわざ顔を出して「チバ君、大人になりなさい。 これは社長命令だよ」なんて言うもんだから、
そういうのに疎い俺も流石にこれは相当おおごとなんだな、なんて思っちゃって。で、読んだよ「スラムダンク」50過ぎにして初めて読んだよ。
でも悪いけど、やっぱり興味ねえんだよなあ。 この作品の中の連中もこの作品を好きだという連中とも 「友達になれねえなあ」と思っちゃったわけ。
でも家族もメンバーもスタッフからも無言の圧力あるし、流石に俺も大人げねえなあと思っちゃった訳。
じゃあ、作るとしたらこの作品のどこが一番、自分が嘘偽りなく興味持てるかな?と思って探したら唯一「疾走感だ」と思った訳。井上先生も自分も 命削って作っている共通のものは「疾走感」だったって事。 で、この曲ができたって訳。 まあ、そこにこだわって音源提出してあとはお任せ。 俺はよくわからねえけど、映画作るのきっと大変だと思うよ。 だって構想10年なんでしょ?それで俺に頼んでくるって中々の勝負師だと 思うよ。見てねえけど絶対に凄い作品になってると思うので劇場で楽しんでくださいな」
つまり、チバユウスケは全く「スラムダンク」という作品に興味がなかった。
読んでみたら素晴らしくて食わず嫌いだった!ではなく、やはり興味なくて好きになれなかった。
しかし主題歌を作るにあたり、嫌いなまま作るのはいかん!嘘はいかん!という侍スピリッツを持つチバユウスケは寄り添える部分を必死に探した。
一つ見つかった。
それは作品の内容ではなく「疾走感」という作品の「状態」であった。
ここで作れば嘘ではない。そして一気に書き上げた(のかは知らないが)のが「LOVE ROCKETS」であった。
それは作品の内容に寄り添ったウェットなものではなく、ある意味突き放したクールな楽曲であった。
50年以上生きてきて全く交わりを持たなかった、そして今後も交わらないであろう二人の侍クリエーター、チバユウスケと井上雅彦。
この二人が「劇場版スラムダンクを成功させる!」という名目の元、一瞬だけ交わった瞬間に放たれた火花のような熱い尊さ。
あの熱い尊さ、「スラムダンク」ファンなら記憶にあるはず。
そう、それは少年漫画史トップ10にあげられる名シーン「湘北と山王戦のラストゴールを決めた花道と流川のハイタッチ」とほぼ同質であった。
スラムダンクという漫画はどういう話か?と問われた場合、私はこう答えます。
「決して交わる事のない真逆の二人の人間(花道と流川)が、たまたまた同じ学校の同じバスケ部で勝利という同じ目標を持った事で交わった一瞬の 尊さを描いた話で、それまでのストーリーは壮大なフリである」
つまり、あの映画のオープニングの尊さは、あのハイタッチで生まれた尊さとほぼ同質なものであった。
その辺りを古参のスラムダンクファンは本能的に感じて、大絶賛したのかと思われます。
これは多分、映画の製作陣の計算ではなく、命を削って作っているとたまにこんな奇跡が呼び寄せられたのでしょう。
最初から最後までスラムダンクに興味のないチバユウスケは、タイアップの効果をあまり感じる暇もなく残念ながら闘病中ですが(今年の夏フェスで演奏したら幅広い客層から大喝采だったろうに)快復後、どこかで演奏した時にスラムダンクを見て興味を持った、今までのファン層ではないファミリー層の観客が訪れ「タイアップってすげえのね…」と驚きつつも顔に出さずに歌う、侍チバユウスケが見たいなあと願ってやみません。
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