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乾くるみ『リピート』読書感想文

2021年の幕開け。今年も相変わらず読書はしていくわけだけれど、その中でも特に面白かった作品に関してはnoteに感想文として残していこうと思う。

2021年を迎えても状況は変わらない。願っても叶わないものは叶わない。そうであれば、日々を粛々と自分の好きなことに時間を費やしていくしかない。

新年の最初に読了したのは、乾くるみさんの『リピート』だ。2020年には以前から気になっていた乾くるみさんの『イニシエーション・ラブ』を読んだ。とにかく面白かった。話題になるのも頷ける。「最後の二行の衝撃」とのキャッチコピーは伊達じゃない。

ただ、『リピート』も『イニシエーション・ラブ』にまったく引けを取っていない。『リピート』の衝撃も後頭部を鈍器でぶん殴られるくらいの凄まじいものがあった。

あらすじ

もし、現在の記憶を持ったまま十ヵ月前の自分に戻れるとしたら?この夢のような「リピート」に誘われ、疑いつつも人生のやり直しに臨んだ十人の男女。ところが彼らは一人、また一人と不審な死を遂げて...。あの『イニシエーション・ラブ』の鬼才が、『リプレイ』+『そして誰もいなくなった』に挑んだ仰天の傑作。
Google Books

あらすじにある通り本作は、ケン・グリムウッドの『リプレイ』とアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を融合させた作品だ。
僕は『リプレイ』をまだ読んだことはないのだけれど、この作品は43歳で心臓発作により死亡した主人公が18歳の時点に遡って人生をやり直すことになるという作品だ。『そして誰もいなくなった』は孤島に招かれた互いに面識のない10人の男女が1人ずつ殺されていくという推理小説の歴史的傑作だ。

いわゆるタイムリープというSF的世界観と孤島での殺人事件を描くクローズドサークルものは結びつかないように思うかもしれないけれど、本作『リピート』は見事にそれを成し遂げている。

『リピート』は、主人公である大学生の毛利圭介が奇妙な電話を取るところから始まる。電話の主は、1時間後に地震が起きると宣言する。そして、1時間後に予言した時間通りに地震が起きるのだ。半信半疑の主人公に電話の主はこう宣言する。

「私は過去のある時点に遡ることができる。それを私たちはリピートと呼んでいる」

それから電話の主は、主人公を含む面識のない10人の男女をリピートに誘う。それは10カ月前に時間を遡ることのできる時間旅行だった。ここまではSFの世界観だが、時間旅行の末に10カ月前へと遡った10人の男女が1人ずつ不審な死を遂げ、『そして誰もいなくなった』との融合が始まる。

ここからの展開がとにかく面白い。不審な死の謎、主人公とリピート仲間の女性との恋模様、経験済みの過去と食い違っていくリピート後の日々の謎。これらが終盤でツイストに次ぐツイストで一気に展開していく。ラストを読み終えたとき、僕は思わず拍手を送りたくなった。

面白い作品はたくさんある。毎日、無数の新刊が発売される。それでもスタンディングオベーションを送りたくなるような作品に出会うことは少ない。
本作はまさしくそんな作品だった。新年の最初に読むことができて本当に良かった。


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