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3月に観た映画

3月、なんやかんやでめちゃくちゃ忙しかった。
でもそこそこ観られたかなぁ。


「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2002)


「見てみろ、お前を追っている者は誰もいない」
生活が困窮し、両親の離婚でどちらにつくかを迫られ家出した16歳のフランク。パイロットやら医者やらになりすまして小切手を偽造しまくる詐欺師になり、FBIに追われる身に…
FBI捜査官のハンラティは何度もかわされるが、凄まじい執念でフランクを追いかける。ルパンと銭形警部のような「追いかけっこ」の話。まさかの実話ベース(ハンラティは実在ではない)
何度も追い詰められるフランク、そのたびにハラハラさせられる。そのやりとりの中で、ふたりは心を交流させる。
フランクの根底にあるのは、明晰すぎる頭脳と家庭環境からなる孤独。同じスピルバーグ監督の「フェイブルマンズ」に通づるなと思った。(多感な思春期に見たくなかった真実を見てしまう、とかね)
自分を偽り続ける中に、フランクは「安定」を求める。しかし偽れば偽るほど自分が「孤独」であることが表出していく。
そして、ハンラティはそれを見抜いてるんだな。ハンラティも真面目一徹で浮いていて家族はおらず、どこか「孤独」を纏っている感じがするし。いいコンビ。
こないだの「フォレスト・ガンプ」のおかげで、トム・ハンクスの安心感がハンパなかったです。
あと、ディカプリオかっこよすぎる。これより5、6年昔の「ロミオ+ジュリエット」や「タイタニック」のディカプリオは国宝級どころか世界遺産級ですけどもね!このディカプリオもやべーです。これはオチるのしゃーないわ。この年(多分当時30近かったんちゃうかな)で16歳演じられるのはすごすぎる。

OPがアニメーションなんですが、舞台となる60年代のイラストレーション風でとてもおしゃれ。
個人的に「グレートプリテンダー」というアニメのOPを思い出したんですが、この映画のオマージュなのかな?「カーボーイ・ビバップ」のオマージュとも言われていますが、こちらの方が近いかと思いました。どっちも詐欺師の話だしね(ちなみに私はアニメ未視聴です)


「オットーという男」(2022)

アマプラがやたらとオススメしてきたので観たのだが、役どころが役どころなだけにトム・ハンクスだと気付かなかった。(あと吹き替えだったのもあるか…)
そうかトムの映画ばっかり見てたからか…

偏屈で周りから煙たがられるオットーは、最愛の妻に先立たれ仕事も退職し、孤独に生きる老人。早く妻の元へ…といろいろ試みるのだけど、運が良いのか悪いのかいつも邪魔が入る。マリソルとトミー一家が近所に越してきたのをきっかけに、生きる意味を取り戻していく。

オットーは冷たくあしらったりするんだけど、ほんとはものすごく親切。関わりのなかで、どんどんオットー自身も周りも変わっていく様子が楽しい。
死が近づくたびに妻ソーニャとの思い出が走馬灯のように流れる。大切な思い出の中のふたりは本当に幸せそうで、せつない。

マリソルはかなりフランクでよく笑うあかるい性格。オットーとは合わないであろう性格だが、移民であり異国の地で3人の子どもを育て夫を支える彼女の強さをオットーは認めている。そしてマリソルはオットーが「ビッグなハート」の持ち主だと信じている。信頼関係が素晴らしいです。
「ビッグなハート」がオットーの持病とかかってるのはうまい!と思っちゃった。
近所に住んでいるルーベン。昔は仲が良かったが、車の車種でケンカになり疎遠に…なんていう理由は笑いました。めちゃくちゃ些細やけどあるよなぁ。作中、やたらプリウスが出てくる。

ちょっとした場面で出会った人達が、とんでもなくいい変化をもたらしてくれます。人は1人では生きていけない、だれかの支えあってこその人生。

「PERFECT DAYS」(2023)


カンヌ映画祭やアカデミー賞などノミネートで話題の映画、弟にオススメされて映画館で観た。
(ちなみに彼は学生時代、映画鑑賞サークルの代表を勤めていたが、パリピ達にサークルを乗っ取られ追い出されてしまった悲しき過去をもっている。現在は映画館に通い詰めるアニメオタクである)

トイレの清掃員の平山の日常。同じことの繰り返しのように見えるが、その中に彼なりの「幸せ」や「楽しみ」が見える。ストーリーにも主人公平山の感情にも起伏がほとんどない。それが周りの人物によって揺り動かされる。それでも変わらず淡々と生き続ける。

役所広司の演技が素晴らしい。平山は寡黙なのでほとんどセリフがないけれど、表情や振る舞いだけでいろんな気持ちが伝わってくる。
突然現れた姪との会話にて、「あの人(平山)は生きている世界が違う」という平山の妹のことば。それを聞いた平山は、
同じ世界で生きながら、みんなそれぞれ違う世界に生きている、と話す。
それが人生なのかなぁ。

陰踏みのシーン。すごく印象的だった。影は重なると濃くなる。平山の言葉が死を待つあの男性を揺さぶったのではないだろうか。

音楽がめちゃくちゃ良い仕事をしている!GRAPEVINEが好きなので「青い魚」が流れてきてテンションが上がった(もともとは金延幸子さんの曲で、アルバム『Lifetime』でカバーしている)

あと、二日酔いのサラリーマンが看板を蹴っちゃうところや銭湯でお爺さんのお尻に椅子がくっついてポコンと床に落ちるところとかお店の人が話しかけてくれるところとか、細かい描写がよかった。柄本時生が演じるどうしようもないほど情けない同僚も。どの人も人間らしい。

「魔女の宅急便」(1989)

言わずと知れたジブリの名作。何度観たことか…(原作も昔読みました)
久しぶりにテレビでやってるのをみたけど、やっぱり大人になると感じるものが変わってくる。昔は「思春期の子どもの成長」と捉えてたけど、今見ると「お仕事物語」に見えて仕方ない…
思ってた以上に社会の理不尽さとか労働の苦労とか、ガッツリと描かれてるんですよね。
この映画といえば、「ニシンのパイを迷惑がる孫」が最も話題に上がるけど、単なる「失礼な孫」ではなく、「誰かのために働くのは綺麗事ばかりではない」という現実を描いてる。見返りを求めすぎてはいけないんだよなぁ。

空を飛べなくなって塞ぎ込んだキキは画家のウルスラに誘われて森のアトリエに遊びに行きますが、あれなんてまさに「仕事に疲れた人が遠出か帰省でリフレッシュして自分を取り戻す」場面ですよね。
「うまくいかなくなったら、いちど辞めてみる」という会話にはものすごく共感した。

子どものころはトンボが自分の仲間と引き合わせようとするのをひたすら避けるキキに対して、「トンボと仲がいいのを嫉妬してるんかな」と思っていた。けど、彼らがキキを直接いじめたりしてるわけではない。
綺麗に着飾って友達と楽しく過ごす同年代とは違い、社会に出て働いている自分。ほんとは遊びたいよなぁ。けど、自分は彼らとは違うステージに生きてるんだ。そう思わざるを得ない状況なんですよね…健気すぎる…
ジジが話せなくなったのも、猫と話をする子どもの自分から大人に成長したから、みたいな設定を聞きました。
深いなぁ。


「キッズ・リターン」(1996)

「まーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかな」「馬鹿野郎、まだはじまっちゃいねぇよ」

いつも仲良く悪さばかりする不良のまーちゃんとシンジ。カツアゲの仕返しでボクサーにボコされたのをきっかけに学校に来なくなりボクシングの道へ進むまーちゃん、誘われるシンジ。ところがボクシングの筋が良かったのはシンジの方で、ショックを受けたまーちゃんはボクシングをやめて極道の道へ…

北野映画をしっかり観たのは初めて。「アウトレイジ」はちょっと観たことある程度だったけど、暴力的なシーンはかなりマイルド。成功と挫折の話。
主役のまーちゃんとシンジを中心に、同じ高校の同級生たちのその後の人生を並行して描いている。
楽しいこと、うまくいくことばかりではない、人生のシビアさがリアルでしんどい(語彙力が追いつかない)
いつも一緒だったふたりが、ある日突然違う道を歩むようになるせつなさがたまらない。
なんと言っても、自転車を2ケツするシーンが象徴的なんだが、オープニングとラストでかなり印象が違ってくる。そしてなんやかんや離れても、状況が変わっても、2人の友情は変わらない。

付き合う人間が自分の人生を大きく左右する。キーパーソンとの出会いで好転する展開が世の中ではよく見られるが、好転も破滅も描かれている。

中でも、喫茶店の女性に想いを寄せる真面目な同級生が印象的。社会に出て、理不尽な目に遭い、現実を突きつけられて…キツいキツいキツい!!
個人的に、夜の田んぼに刺さったタクシーが引き上げられるシーンは、「ショーシャンクの空に」の「ブルックスここにありき」のシーンと同じくらいとても残酷でしんどかった。
わりとシーンの一つ一つが短いこともあって、このシーンはかなり唐突な印象を受けた。それだけに人生の無常さをひしひしと感じる。

北野監督はラストのふたりの名セリフについて、「もう終わっている」と語ったそうですが、エンディング曲の銃声にも似た音を号砲として、これからやって来る未来を想起させるようにも捉えられる。
(久石譲さんの音楽、めちゃくちゃ素晴らしいです。サントラもめちゃくちゃ聴きごたえある!)

ちなみにわたしは「終わっている」と見ている。
「人生で一番輝ける時期」は終わった、もう取り戻せないものになったんだ、でもまだまだ人生は続いていく…
そう考える方が、美しくみえるのです。


「スワロウテイル」もそうですが、この頃の日本の映画・アニメや漫画、音楽の退廃的な雰囲気がものすごく好きです。
最近「平成レトロ」を謳ったイラストなどを発表している絵師さんをよく見かけますが、正直ほとんどエセだと思ってます。あの空気感はあの時代を一生懸命生きて肌で感じた人にしか表現できないと思うのです。そういうものに尊さを感じます。


この映画を観るきっかけになったのはXで流れてきたとあるポストだった。すごく好きな映画に出会えた。ポス主、ありがとう!!





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