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信頼とマネジメント

職場の信頼感は働く場として不可欠な条件

このBlogでマーケティングのデータやロジックについて話しているためこういう発言をすると意外に思う方もいるかもしれませんが、私が職場において最も重要だと思っているのは「信頼感」です。私は性善説でマネジメントされたいし、自分の組織もそのようにマネジメントしたいので、信頼感がない組織ではどんな条件が良くても働けないと考えています。

では、ビジネスにおいて信頼感を築くためにはどうすればいいのでしょうか?単に「いい人」を演じるだけでは足りないと思います。私は自分が周囲から信頼されているかどうかを客観的には分からないものの、一緒に仕事をしてきた人たちとは良い信頼関係を築けたと感してきました。自分はマイペースで周囲の評価に鈍感な面もあるため、信頼されていないことを感じにくいだけかもしれませんが。一方で、自慢できる話ではありませんが、自分が
「いい人」でないことは自覚しています。頑固で、時間にルーズで、小まめな気配りができず、短気でストレートに意見を言うことが多い人間です。それでも、一定レベル以上の信頼関係を築いてこれたと実感しています。

職場で信頼を得るための3つのポイント

信頼感を築くためには、私が考えるに3つのポイントが重要です。

  1. 任された仕事でパフォーマンスを出す

  2. 上手くいかなかったときに責任を明確に示す

  3. 嘘をつかない・ルールを守る

この3つのポイントは非常にシンプルですが、これを実践し続けることで、職場での信頼関係は基本的に築かれると考えています。

①任された仕事でパフォーマンスを出す

職場での評価の大原則は業務におけるパフォーマンスであり、パーソナリティが優先されることはありません。よく人事考課の場で、「〇〇さんはすごくいい人」という評価をミドルマネジメントから聞くと、パフォーマンスやスキルにあまり褒める部分がないのではと感じることがあります。つまり、職場での人物評価で最も重要なのは業務パフォーマンスとその実現に必要なスキルです。

同時にパフォーマンスを上げることは評価される側にとっても得られる利点もあります。高いパフォーマンスを発揮している人材は、通常、細かい管理や干渉が少なく、自分の仕事を自律的に行えることが多いです。この結果、周囲からの信頼感を感じやすくなります。一方、パフォーマンスが低いと、上司は詳細な管理や監督が必要となり、信頼感を得られていないと感じてしまう可能性があります。

このように、職場での信頼感の前提はパフォーマンスを上げることであり、それを実現するためには、個々の努力とスキルの習得が求められます。また、上司や先輩は部下や後輩を正しく管理・監督し、育成に努めることで、信頼できるパフォーマンスを上げられる人材に育成する役割を果たさなければなりません。

②上手くいかなかったときに明確に責任を示す

職場での基本はパフォーマンスを上げることですが、当然全てがうまくいくわけではありません。むしろ、失敗や予想外の低パフォーマンスは避けられないもので、常に成功する人は、飛び抜けて優秀でない限り、成功しそうな仕事しか選ばないか、請け負わないことが多いと感じます。私は、ビジネスではチャレンジが必要であり、上手くいくことだけを選ぶ人は成長しないと考えています。

この視点からすると、パフォーマンスを上げられる人は失敗や上手くいかないことがセットで発生することが多いです。これまで述べてきたように、デジタルマーケティングでは「小さな失敗を早く、意図を持って行う」ことが基本です。このため、失敗はつきものといっても、失敗の大きさをコントロールし、「大失敗」ではなく「想定通り上手くいかない」程度に留めることは当然じゅうようなのですが。

失敗がある程度発生する前提で、日々のパフォーマンスで築いた信頼感を維持するためには、思った通りに行かない状況でのスタンスが重要です。結論として、「逃げずに責任を明確に示す」ことが求められます。現代の企業では、小さな失敗を評価すべきであり、非難するのは不適切です。失敗したときには、自分の責任であることを明確にし、その理由を客観的に分析することが重要です。

ただ単に謝るだけでなく、なぜ失敗したのかを分析し、次回に向けて改善策を講じることが前提です。これまでの経験上、責任を明確にせず、環境や部下のパフォーマンスに失敗の原因を求める人が一定数いると感じますが、業務を請け負った時点で、環境や部下の状況も考慮してマネジメントするべきです。責任を取らず、想定不足を棚に上げる人は基本的に信頼できないと考えています。

この種の失敗を繰り返す人の多くは、怒られることに対して強い拒否反応や恐怖感を抱いているように感じます。その原因が子供の頃の教育環境や、社会人としての初期経験によるものかは分かりませんが、いずれにしても、こうした恐怖感は失敗を認めず責任を回避する態度を生むことが多いです。

組織内で心理的安心感を醸成し、こうした態度を防ぐためには、上司や先輩が注意すべき点があります。私が考える悪いパターンは二つです。

  1. 必要以上に詰め寄るタイプのコミュニケーション:

    • 最近はパワハラとして問題視されることもありますが、詰め寄って危機感を煽るマネジメントは、部下や後輩が「言い訳」をする原因になります。言い訳は周囲に責任を転嫁するもので、過度に行われると組織全体に責任逃れの文化を生む恐れがあります。私は、謝罪の言葉を2回程度聞いたら、それ以上追及せずに、問題解決に向けた協力的な態度に切り替えるよう心がけています。何度も謝罪させることは、怒っている側の快感や優越感を得るための行為であり、心理的安心感を破壊するだけです。

  2. 陰で不満を漏らすタイプのコミュニケーション:

    • 失敗した際に、その場では不満を表明せず、陰で「アイツは駄目だ」といった発言をするタイプです。こうしたマネジメントは、部下や後輩に対して細かな改善指導をせず、いきなり最後通牒的な指摘をすることが多いです。このようなコミュニケーションは、評価された本人だけでなく、周囲にも悪影響を与え、組織全体の心理的安心感を損ないます。

これらのパターンを避け、適切なマネジメントを行うことで、組織全体の信頼感と心理的安心感を保つことができると考えています。

職場での信頼感は、しばしば信頼感を失った側に原因を求めがちですが、実際には組織のマネジメント方法に問題があることが多いと感じています。私自身がマネジメントしてきた組織においては、過去10年間で無意味な言い訳をするような部下に直面した記憶はほとんどありません。これは、マネジメント側の手法やアプローチが信頼感の形成に重要であることを示唆していると思います。

③嘘をつかない、ルールを守る

嘘をつかないというとあまりに当然すぎる気がすると思いますが、現実にはその基本を守れずに信頼感を失う人が一定数存在します。特に、怒られることへの拒否反応や恐怖感が極度に強い人に多い傾向があります。言い訳が過剰になり、最終的には「嘘」をついてしまうケースなどです。

最も厄介なのは、嘘をつき続けるうちに、その嘘に自分自身が洗脳され、本当のことを言っていると勘違いしてしまう人です。このような状況を防ぐためには、自分の組織をマネジメントする際に、上述したように、部下やチームメンバーを適切にマネジメントする方法を工夫することが重要です。それでも、基本的なルールを守らず、嘘をつくような人間には厳正に対処し、組織が信頼できる人材で構成されるようにする必要があります。

大学時代に理論経済学を専攻していた私が最も馴染めなかったのは、「合理的経済人」という仮説です。これは、人間が自己の利益を最大化するために合理的な判断をするという前提に基づいています。この前提があるため、理論経済学は数式モデルで議論できるのですが、行動経済学の登場によってこの前提が必ずしも正しくないことが明らかになり、私は行動経済学に親近感を抱いています。

人が集まる組織では、合理的とは思えない判断をして信頼感を損ねることが多いと感じています。しかし、そのような判断が合理的に思える環境を作ってしまった側にも問題があると考えています。年齢を重ねた人が既に染み付いた考え方を変えるのは難しいかもしれませんが、できるだけ信頼感に基づいた人間関係が構築されている組織で働きたいと思っています。


【この文章は以下の文章のライトバージョンです。より詳細な議論はこちらでご確認ください】


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