持ち物はお弁当
心にゆとりがないと、ちょっとのことでムッとする。
「ムッと」は、
マンションで挨拶しても返事がない時、
カフェを一人で利用している際に断りもなしに対面の椅子を持っていかれる時、
混んでいる電車を並んで待っている際に割り込み乗車される時、
そんなちょっとしたことでざわつく胸の奥の苛つき。
これは今日私に起こったこと。
些細なことで、たいしたことのないこと。
普段の私は、
いや、「普段の私」はカッコつけすぎだな!
大抵の私は、
「はいはい」「まあまあ」「あらあら」と流せること。
ちょっと雲行きが怪しくなった仕事の様子に、
気持ちが大きく波打っている。
今日は、新しい職場に行って業務内容の説明を聞いてきた。本来、勤務開始した後で済むことなのだが、職員が二人辞めてしまうことになり人員不足で勤務開始してからでは十分な時間が取れないから、本日時間を作ることになった。
職員二人が辞めてしまうことにより、数人の職員の中で仕事をする予定が、
私ともう一人で仕事を行うことになった。
うーん。どう考えても厳しい。
これは激務の予感しかしない。
業務内容の説明をしてくれた職員さんからも、副施設長からも、焦りを感じた。
私も焦った。
「何か不安なことはありますか」の質問に「正直不安ばかりです」と答えて互いに苦笑い。
数人の職員さんと共にできる範囲でやってみようと思ったのは、甘い考えだったのか。
ガクッときた。
業務説明してくれた職員さんとは今日で会うのは最後。
ご挨拶をして終了。
副施設長が最後に「まあ、最初から色々説明してもね、不安を煽るようであれだからね」と励ましなのか取り繕いなのか、ちょっと気まずそうに言葉を繋いで笑っていた。
初日の持ち物を確認すると
「お弁当!お弁当は忘れないでね!あとはない!」
と真面目な顔でビシッと言ってきた。
ちょっと笑った。
暢気な方だった。
肩の力が抜けた。
帰り道、憂鬱が押し寄せて「ああああああ」と顰めっ面で歩いた。
駅まで徒歩25分の距離を歩いていたら、暑くて暑くて汗だくに。
気づいたら「暑いなあ」しか頭に浮かばなくなっていた。
駅でスタバに駆け込みアイスコーヒーをごくごくと飲んだ。
暑い日は苦手だけど、憂鬱で覆われていた私の頭は「暑さ」でいっぱいになり「憂鬱」は一瞬何処かに飛んで行った。
「暑い」ってこういう良さもあるんだなあ。
まあ、そのあと涼しさを感じる場所で、冒頭に書いた「ムッと」するわけなんだけれども。
小さい人間です。
でも、そんなもんです。
可愛い人間です。
そういうことにしておきましょう。
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昨日はたい焼きを食べた。
人気のたい焼きやさん。雨の日だから空いているかと思いきや、次から次へとおやくさんが。夫は、たい焼きソフト。私はたい焼きのみ。
夕飯前のたい焼き。
あんこが美味しくて「うーん!」と思わず唸ったら若い店員さんに微笑まれた。
写真が全て横向きに。うーん。なぜだろう。
気分が横向きだからか。そうなのか。
今日の出来事を振り返ってみた。
「持ち物は?」
「お弁当!」
というやりとりがいちばん残っている。
副施設長は周囲から評判があんまり良くない。
使えないおじさん、という人が多い。
私が思う印象は、良い感じに暢気な方。
朝ドラ「虎に翼」のお父さん役、岡部たかしさんにちょっと似てる。
初出勤の日、きっとお弁当さえ持っていけばなんとかなる気がした。
そのくらいの気持ちで行こうと思う。