![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173114231/rectangle_large_type_2_7ba7df30510a07b350ed9ed31795bf58.jpeg?width=1200)
こんなときでも美味しい
書かずにはいられない。これは書かなくては。書く気持ちが強く暴れ出して、今思うがままに文字を繋げている。
先日、大腸がんの経過観察のため、造影剤を使ったCT検査をした。今日主治医の先生はしっかり私の目を見て言った。
「肺に良くないのが写ってるんだよね」
「前から言ってる子宮筋腫も、もう一度ちゃんと調べよう」
今の状態だったら手術は可能とか、
肺の手術だけだったら、手術後後今回は抗がん剤は必要ないとか、
先生が考えうる「前向きなこと」を話してくれていた。
いっしょにいた夫が明らかに隣でショックを受けているのが分かる。
帰り道、ちょっとむしゃくしゃして、駅ナカのパン屋さんでクロワッサンと生クリームが詰まったブリオッシュを買った。ホームで電車を待つ間、人目を憚らずブリオッシュを頬張った。生クリームが溢れ出して鼻先にも口の周りにも付く。人が見ているのが分かる。どうぞ思う存分見てくださいよ、やけ食いってやつですよ、って思って開き直る。人目を憚らず、生クリームを顔につけたまま無心でパンを頬張る人にはそれなりの理由がある。半分食べて夫に手渡す。夫もかぶりついて一気喰いした。普段なら絶対に彼がやらない行為のひとつだった。みっともない、とか、言うだろうこと。彼にもそれなりの理由があった。
人は必ず死ぬ。わたしも夫も母も姉も妹も。ともだちも。みんな。だから、死ぬのは仕方ない。でも、痛いのが苦しいのが、どれだけ辛いのか知っているから、とてつもなく嫌だ。地べたに寝っ転がって、両手をバタバタさせて泣き喚くくらい嫌だ。
今日、電車内や駅で出会った子どもたちが愚図っていたがそれを総動員しても足りないくらいきっと私の方が喚く自信がある。
帰宅してソファに寝っ転がった。
しばらくして、ぞっとして立ち上がる。横になることは、これから嫌って言うほどできるのでは?楽々と立ち上がり、自分のことを自分でして、好きなところに出かけることは、この先どのくらいまでできるのだろう。
立ち上がってまじまじと足元を見た。
コーデュロイの白いパンツにラベンダーのソックス。上は白黒のチェックシャツ。今日の装い、悪くないなあと、暢気に思った。
なるべく、暢気でいたい。いつ、死ぬか分からないし、苦しみや痛みがくるかもわからない。わたしはわたしの人生を楽しむ気でいる。そのために私に必要なのは、鈍感でいることかもしれない。忘れていいことってきっとある。
ストーマの腸太郎は、私の心にお構いなしに、せっせとしごとをしている。ありがたい。今日はしっかり絶望して不貞腐れる。明日は明日のわたしのしたいようにする。4月からの仕事も、早合点して諦めない。
図太く自分の軸を構えて、さてどうしようかね、と見極めたい。
カッコつけているつもりはないが、ここまで書いて読み返すとなんだか随分強がっているように見える。
ぜーんぜんそんなことない。結構やさぐれモード。触るもの皆傷つけそうな勢いのギッザギザだ。
あーあ。なんてこったい。病気ってほんっとに嫌なやつだ。
とりあえず、ロイズのチョコポテチと柿の種のワサビ味、缶チューハイを飲んで寝る。
こんな時でもお菓子は美味しい。
そして、寝れば明日は来る。
おやすみなさい。