昼の湘南新宿ラインは空いていて良い
僕は電車の端の席が好きだ。
あのなんとも言えない密着感。壁に寄り掛ることができるという安心感。
空いた列車に乗る僕は、列車が駅に止まるごとに転々と壁から壁、壁から壁へと席を移した。
その号車の全ての壁席を制覇すると、僕は途端に虚しくなって、今度は列車のドアというドアにもたれかかる。
なんて良い安心感だろう。
しかし、ドアの数にも限りがある。
ドアを制覇した僕は必死に壁を探した。
車内は僕だけで声なんてとっくに出ている。
ああ、壁。ああ、壁。あああ壁壁。 そうだ、床だって壁だ。
そう思ったが瞬間、僕は床を制覇した。
この壁は僕のものだ。僕の壁なんだ。僕は壁だ。
しかしながらまだ壁はある。天井だ。届かない。体はつかない。
僕はただ壁に保たれ掛かりたいだけなのに。
ああ、
ああ、
ああああああああああああああああああああ!!!
僕は浮いた。
僕は天井。
僕は床。
僕は壁、僕は壁なんだ。
ここに壁山塀吾郎のザ・ウォールが誕生した。