「タニシは語る」
日照りがキツイ真昼間。僕は道路で穴を掘っていた。建設現場の作業員として、責務を全うしていた。
「おい! タニシ! 遅えよ! ちんたらすんな!」
「はい! すみません!」
現場監督に怒られた。ちなみにタニシは僕のあだ名だ。谷 慎吾という本名と僕の動きが鈍いからこういう呼び名がつけられてしまった。
そうこう罵倒されながら、続けてようやく仕事を終えた。疲労でガタガタになった体を引きずりながら、まっすぐ家へと向かう。
ノロノロ。ノロノロ。ずるずる。それこそタニシのように進んでいく。足は遅い。
でも僕にだってやることはある。
自宅であるアパートに着いて、シャワーを済ましてパソコンを開いた。画面には近々、開かれる小説コンテスト。この時だけ僕は本当の自分になれる。
夢を掴むため、僕はキーボードに触れた。