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人新世の「資本論」
斎藤幸平 著
地球温暖化対策として、あなたは、なにかしているだろうか。レジ袋削減のために、エコバックを買った?ペットボトル入りの飲料を買わないようにマイボトルを持ち歩いている?車をハイブリッドカーにした?
はっきり言おう。その善意だけなら無意味に終わる。それどころか、その善意は有害でさえある。
なんとも冒頭から、私に突きつけているようである。人間の経済活動が地球を破壊する意味の「人新世」=環境危機の時代。それを阻止するには資本主義の再現なき利潤追求を止めなければならないという。危機の解決策はあるのか?ヒントは晩期のマルクスの思想の中にあった。それは脱成長コミュニズムが世界を救う。目から鱗の一冊です。
心に残った文章を一部紹介します。
気候変動が将来の世代に与える影響の大きさを考えれば、わたしたち現役世代が無関心でいることは許されない、今こそ「大きな変化」をはっきり求め起こしていく必要がある。「大きな変化」それは資本主義システムそのものに挑むことである。
資本主義の搾取対象は人間の労働力であるが、もう一方の本質的側面、それが地球環境である。そのような社会システムが、無限の経済成長を目指せば、地球環境が危機的状況に陥るのは、いわば当然の帰結である。
マルクスによる環境危機の予言。資本による転嫁の試みは最終的には破綻する。資本主義が崩壊するより前に地球が人類が住めない場所になる。
デカップリングとはなにか?
デカップリングとは、日本語で「切り離し」「分離」を意味する。経済成長によって環境負荷は増大する。今まで連動して増大してきたものを、新しい技術によって切り離そうとするものである。
IAE(国際エネルギー機関)によれば。2040年までに電気自動は現在の200万台から、2億8000万台にまで伸びるという。ところがそこで削減される世界の二酸化炭素排出量は、わずか1%と推計されている。そもそも電気自動車に変えたところで二酸化炭素排出量は大して減らない。なぜか?バッテリーの大型化によって、製造工程で発生する二酸化炭素はますます増えていくからである。
グリーン・ニューディールが本当に目指すのは、破局につながる経済成長ではなく、経済のスケールダウンとスローダウンである。
「絶滅への道は、善意で敷き詰められている」
資本主義システムでの脱成長を撃つ。資本主義こそが、気候変動をはじめとする環境危機の原因にほかならない。このまま行けば、資本主義が地球の表面を徹底的に変えてしまい、人類が生き残れなくなってしまう。それが「人新生」という時代の終着点である。私達の手で資本主義をとめて、脱成長型のポスト資本主義に向けて大転換することが必要。
マルクスの復権
「人新世」の環境危機のおいては、資本主義を批判し、ポスト資本主義の未来を構想しなくてはならない。だが、そう入っても、なぜ今さらマルクスなのか。それを新資料を出してマルクス像を紐解いていく。
本書で知ったこと
・進歩史観(歴史は必ず人類の進歩に向かって進んでいるという歴史観です。世界は民主主義や豊かさ、国際秩序、グローバリゼーション、科学技術の発展などに向かっていくという考えが根底にある)
・経済成長しない共同体の安定性が、持続可能で、平等な人間と自然の物質代謝を組織していた。とマルクスは認識していた。
・定常型経済(経済成長を目標とせず、活発な経済活動が繰り広げられているものの、その規模自体は拡大していかない経済を指します。ゼロ成長経済とも呼ばれる。)に依拠した持続可能性と平等が、資本への抵抗になり、将来社会の基礎になるとマルクスは結論づけた。
・マルクスは自分の理論的転換があまりにも大きすぎた為に死期までに「資本論」を完成させることができなくなった。この議論を展開しきれなかった先の地点こそ、現代の私たちが求めている将来社会に向けたヒントが埋められている。そして具体的な行動が示されています。
本書後半でそのことが収められている。
現在に当てはめると(投稿時点2024.12.01)
プラスチックによる環境汚染の防止に向けて、初めてとなる国際条約の案をまとめるため韓国・プサン(釜山)で行われていた政府間交渉委員会は1日予定された最終日を迎えました。
焦点となっているプラスチックの生産量の世界的な削減目標を設けるかどうかなどについて各国の意見の隔たりが埋まらず、1日夜開かれている全体会合で議長が今回の交渉での合意を見送ることを提案し協議が続いています。
各国の利害関係とりわけプラスチックの原料を輸出している中東国から激しい抵抗があった。理由としては自国の経済が立ち行かなくなると。これこそが資本主義が引き起こす問題です。経済を立て直す、経済の成長が止まる。一見万人に寄り添った甘い言葉の響きは、ますます対策の遅れにつながり進まない。こいうシステム、考え方を転換するには時間がかかる。しかしそんな時間があるのだろうか?その前に人類が滅んでしまう。早く気づいて行動することが重要と思いました。本書を読むと問題点が整理されスッキリと理解出来ます。
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