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スクワット時の膝伸展力の舵は、 下腿前傾より“体幹前傾”が握っている

▼ 文献情報 と 抄録和訳

スクワット時の体幹傾斜は脛骨傾斜よりも膝伸展筋モーメントの予測因子となる

Straub, Rachel K., et al. "Trunk Inclination During Squatting is a Better Predictor of the Knee-Extensor Moment Than Shank Inclination." Journal of Sport Rehabilitation 1.aop (2021): 1-6.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] スクワットのメカニクスに関するこれまでの研究の限界は、体幹と下腿傾斜が膝伸筋モーメント(KEM)に与える影響が単独で研究されてきたことである。本研究の目的は、フリースタンディング・バーベル・スクワット時のKEMに対するセグメントの向きの影響を明らかにすることである。

[方法] デザイン→反復測定法によるクロスセクション。参加者は健常者16名(男性8名、女性8名)。各参加者は、下腿傾斜と体幹傾斜を操作した8つのスクワット条件を行った。主なアウトカム指標 3次元運動データは250Hz、運動データは1500Hzで収集した。回帰分析を行い、膝関節屈曲度60°および90°におけるKEMと体幹および脛骨の傾斜との個別の関係を明らかにした。また、KEMの最適な予測因子を特定するために、ステップワイズ回帰を行った。

[結果] 下腿前傾が大きくなると、KEMが増加した(P < 0.001, R2 = 0.21-0.25)。逆に、体幹前傾が大きくなると、KEMが減少した(P < 0.001, R2 = .49-.50)。ステップワイズ回帰では、体幹傾斜が1番目に入り、KEMの最大の分散を説明した(P < 0.001, R2 = .49-.50)。下腿傾斜は2番目に入り(P < 0.010, R2 = 0.53-0.54)、さらに3%から5%の分散を説明した。

[結論] これらの結果から、体幹と下腿の傾きはKEMに対して相反する関係にあることが確認された。下腿前傾を大きくするとKEMが増加し、体幹前傾を大きくするとKEMが減少した。しかし、組み合わせて見ると、体幹はKEMの優れた予測因子であり、下腿前傾によって生じる大腿四頭筋の需要の増加が、体幹の傾斜によって相殺されるという事実が強調された。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

こういう、「理論的に考えればどちらとも影響を及ぼすことは明らかだが、果たしてどちらの影響が大きい?」ということを確かめた研究は、尊いと思う。
それは、いくら頭で考えていても、決着がつきにくい問いだからである。
この著者は、数年かけてこの問いの答えを明らかにした。
われわれは、ものの数十分・下手したら数分で、「OK♪じゃ、明日から膝OA患者の立ち上がりやスクワット指導の時には、体幹前傾への指導重心を大きくしよう!」と恩恵を受けることができる。
なんという、労苦の圧縮!!!
臨床研究と、その共有機構は、偉大である。