病期によって変化する変形性関節症の疼痛要因:関節包由来→+軟骨下骨由来
📖 文献情報 と 抄録和訳
軟骨下骨を支配する神経の活性と感受性の変化が変形性関節症後期の疼痛に寄与していること
Morgan, Michael, et al. "Changes to the activity and sensitivity of nerves innervating subchondral bone contribute to pain in late-stage osteoarthritis." Pain 163.2 (2022): 390-402.
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 変形性関節症の痛みには、膝関節の関節組織を支配する侵害受容器の活性化や感作が関与していることは明らかであるが、その周囲の骨の神経支配の役割についてはほとんど分かっていない。本研究では、雄ラットにモノイオンアセテート(MIA)誘発関節炎を用い、膝関節の関節組織を支配する神経と周囲の骨を支配する神経の寄与の差によって関節炎の痛みが引き起こされるという考えを検証した。
[方法] 疼痛行動の時間経過はadvanced dynamic weight-bearing deviceを用いて評価し、病理組織学はヘマトキシリン・エオジン組織学で検討された。MIAによるOA発症の初期(3日目)と後期(28日目)に、膝関節と骨の求心性神経細胞の細胞外電気生理学的記録を実施した。
✅ 図. モノイオンアセテートによる変形性関節症の主な特徴と、関節包と軟骨下骨を支配する神経からの記録のアプローチを示す膝関節の模式図。
[結果] 組織学的に関節包に炎症が認められるが、関節軟骨や軟骨下骨に損傷がない3日目に、膝関節求心性ニューロンの機能に著しい変化が認められたが、骨求心性ニューロンには認められなかった。骨求心性ニューロンの機能変化は、関節軟骨と軟骨下骨の損傷が組織学的に確認された28日目にのみ観察された。
[結論] この結果は、MIAによるOA初期の痛みには、軟骨下骨ではなく関節包を支配する神経の活性化と感作が関与しており、MIAによるOA後期の痛みには軟骨下骨を支配する神経がさらに動員されていることを示唆している。このように、骨を支配する神経は、後期OAの痛みを治療するためのメカニズムに基づいた治療法を開発するための重要なターゲットであると考えられる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
膝関節・変形性膝関節症の疼痛要因・疼痛閾値に関して、以下のような文献(📕Dye, 1998 >>> doi, 📕Arendt-Nielsen, 2010 >>> ScienceDirect.)を知っていた。
そして、今回の研究はこれらの疼痛閾値マップが経時的に変化していることを明らかにした。以上の図は、健常〜末期OAのTime windowにおけるワンポイントをカットしていた図に過ぎない、らしい。
今回の研究のように、かなり直接的に近い方法で、疼痛要因を把握できることで、治療適応の判断が容易になると思う。
例えば、これはかなり大雑把なのであくまで例としてみていただきたいのだが、
● 関節包性の疼痛(OA初期) → 保存(理学療法)療法が良い適応
● 軟骨下骨性の疼痛(OA末期) → 外科(TKA)治療が良い適応
という感じで。
だが、簡単にはいかないこの世の中だ。
マウスならいざ知らず、人間にはもうひとつ、どでかい要因『心』がある。
だが、それも直接的に疼痛惹起箇所の特定ができるなら、消去法で判断できる。
「膝のどの組織学的にも要因ではない。なら、心因性か」と。
それが可能となれば、変形性関節症における良質な『鍵穴-鍵』療法が可能となるはずだ。
『疼痛』を取り囲む濃霧、少し晴れて、ちょっとだけ輪郭が見えてきた。
もっともっと近づいて、いつかは、こんな言葉を吐いてみたい。
来て見れば聞くより低し富士の山、
釈迦も孔子もかくやあるらん
村田清風
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