見出し画像

学校スポーツの威力:1日1-2時間の参加が最も成績を高める

📖 文献情報 と 抄録和訳

児童・青少年におけるスポーツ参加と学業成績;系統的レビューとメタアナリシス

Owen KB, Foley BC, Wilhite K, Booker B, Lonsdale C, Reece LJ. Sport Participation and Academic Performance in Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-analysis. Med Sci Sports Exerc. 2022 Feb 1;54(2):299-306.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] はじめに身体活動は学力を向上させるが、スポーツ参加と学力の具体的な関連性についてはあまり知られておらず、これらのエビデンスは統合されていない。我々の目的は、小児および青年におけるスポーツ参加と学業成績の関連についてのエビデンスを系統的にレビューし、メタアナリシスによって統合することであった。

[方法] スポーツと学力に関連する用語を用いて、5つの電子データベースを検索した。構造方程式モデリングによるマルチレベルメタ解析を用いて、適格な研究からのエビデンスを組み合わせた。

[結果] バイアスリスクの高い115件の研究(k=87)から、298件の効果量をメタ解析した。全体として、スポーツ参加は学業成績に対して小さな正の効果を有していた(d = 0.26、95%信頼区間 = 0.09, 0.42)。モデレータ分析によると、スポーツ参加は、スポーツをしない場合やスポーツの量が多い場合(3時間以上/週)と比較して、中程度の量(すなわち1~2時間/週)の場合に学業成績に最も有益であった。

[結論] ほとんどが低品質の研究に基づき、スポーツが子どもや青年の学業成績にプラスの影響を与える可能性があることを示すいくつかの証拠を見出した。適度な量の、学校でのスポーツ参加は、学業成績を促進するために利用できるようである。しかし、この分野が政策に反映されるには、学業成績に対するスポーツの量と特性の効果について洞察する質の高い研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

『文武両道』、という。

✅ 文武両道の意味
- 文武両道とは、文事と武事、学芸と武芸、その両道に努め、優れていることを指す語。
- 現代では勉学と運動(スポーツ)の両面に優れた人物に対しても用いられる。

この語は、「全く別々と思われる2つの道を極めし者」という印象を受ける。
神は二物を与えた、に近い印象。
だが、今回の論文から垣間見えたのは、「全く別の2つの道ではなく、1つの道を走るための両輪じゃない?」ということだ。

まず、今回の論文の結果を解釈する上で、非常に重要な注意点がある。
それは、「スポーツ」は、あくまでもエンパワーインターベンション(効果を装飾する介入因子)であり、それ単体が成績を向上させるわけではないだろう、ということ。それは、筋トレせずプロテインだけ飲んでいて、筋力が上がることを期待するようなものだ。
そのため、以下の考察は、勉強なくして成績の向上はなく、スポーツは勉強の威力を強めてくれる、という立場で話す。

スポーツが、成績に寄与する、その仕組みとは何だろう?
「無意識下の最大活用」という仕組みが有力と思っている。
たとえば、勉強だけをしていることは、言い換えれば「意識下というまな板の上にずっと勉強を乗せて料理している状態」である。
見つめる鍋は煮えない、ように記憶や知的活動や創造にとって、一旦意識下の光から外れ、無意識下に潜ることは、成熟を生むために必要なプロセスだ。
天才数学者のポアンカレは、このプロセスを「インキュベーション」と呼んだ。

✅ 「インキュベーション」とは?
- 新しい発想が生まれる条件をポアンカレ自身の経験から抽出したもの
- 生み出したいアイデアについて考え抜いた後、アイデアに関することから離れて別の作業をしたり休息を取ると、アイデアがひらめくこと

どうやら、ヒートアップした血や知がクーリングされるときに、何かが結晶化されるらしい。
日本人だって負けてはいない。
古人曰く、『頭寒足熱』が良い。
『頭寒足熱』は、患者さんから教わった大切な言葉。
頭は冷たくしておき、足は温かくしておけ、という教訓だが、これはインキュベーションの重要性を示唆している、と取れなくもない。
運動は、頭に昇った血を、足に向かわせ『頭寒足熱』にしてくれる。

今回の結果は、武(運動)は文(成績)の威力を高めることを示した。
では、その全く逆はどうだろう?
文(勉強)は武(スポーツの成績)を高めうるだろうか?
エビデンスを探るまでもなく、『Yes』だと思う。
イチローを見たまえ、どんなビジネスマンより合理的・論理的で、経験を昇華させる知を駆使しているではないか。
内村航平を見たまえ、どれほど明確にMECEを用いて体操という全体を紐解いていることか。
すべからく、最難度の舞台で成功を収めるアスリートは、知的だ。

結論、文と武は両道であるべきではない。
文と武は両道ではなく、お互いが相互を高め合う唇歯補車の関係である。
すなわち、『文武一道』だ。
新たな四字熟語が、最新のエビデンスから導かれた。

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

【あり】最後のイラスト

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○

#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス